第9話 トップ会談
今回からは視点をカンニバル帝国側にしていきます。と言っても数話で終わる予定。
――某日某所、ここでカンニバル帝国とヘルメス皇国のトップの密談が行われていた。
カンニバル帝国はラツア王国の北部にあり主要三ヶ国の内もっとも領土面積が少ないが他国を上回る軍事力を持っており近年その領土を拡大していた。もっとも現在の総帥であるカエサル・カンニバルは領土拡大より内政に力を入れているが、周辺諸国からは「人食い帝国がまた俺たちを攻めようとしてるぞ!皆連合軍を作って襲撃だー!」と毎度の如くやって来るので、一度徹底的に蹂躙し圧倒的な戦力を見せつけて抵抗させ無くしようとしたが全くの逆効果だったらしく、最近では相手の勢力もかなり増えているらしい。
ヘルメス皇国はラツア王国の西側、カンニバル帝国の南側に位置する国で、元首は毎回女性がなると言う風習がある。今代の皇女スターシャ・レスカテもその習慣によって王家の中から選ばれた者だ。細かいことを除けば順風満帆のように見えるがそんな彼女にもある悩みがある。国民の人外化である。まだ一部でしか確認されていないが彼らは――時には危険区域にて出現した魔獣が一撃で粉砕された。――また時には海に住む魔獣が村に被害を与えた為、村の住人の内数人が海を走って渡り数分で殲滅したり……。彼らに共通して言える事はスターシャの熱狂的な信仰者である事だ。ただ、普通の時は人間らしいからなお性質が悪い。
そんな二国のトップが密会する訳――東の国の使者によってもたらされた予言が原因だ。
今から四年前、東の国から使者が来た。内容は、
――今より数年後、世界は再び壁から現れしモノに飲まれるであろう。
と言う物である。
最初こそ碌に相手にしなかったが、次第に増える魔物や魔獣に危機感を覚え使者を派遣。両国は秘密裏に協定を結んだ。なお、この予言についてはラツア王国にももたらされたが、重鎮たちはそんな事が有るはず無いと笑い飛ばし、国王であるイディオタ・セルドは意味有り気にニタリと笑っただけであった。
カンニバル帝国とヘルメス皇国が初めに行った事は戦力の補強だった。しかし、ここでカンニバル帝国である問題が発生する。周辺諸国との衝突である。無論、事を荒立てないようにしていたがそれでも周辺諸国は毎回軍を率いてやって来る。これにヘルメス皇国は周辺諸国を非難するも聞かず、自分たちがやりたいようにやった為にこれまで行っていたほぼ無条件で入国できる制度を撤廃し、国境付近に砦を作り侵入者が来ないようにした。流石の周辺諸国も此れには焦ったのか以降襲撃は一旦鳴りを潜めた。
そして丁度その頃、ヘルメス皇国の最南端付近の海からある物が発見される。両国はその後近海を調査した結果、形状や大きさが違うそれらを多数発見した。しかし、殆どの物が損傷が激しく使える状況では無かった為、それらを修復し増産。カンニバル帝国最北端の島で両国の技師達が今でも増産、補強を行っている。
そして、今日集まった理由は簡単な近況報告と今後について話し合うためであった。
それぞれ、現在の兵の練度や武器、食料などの補給について話し終わった後、軽い世間話に花を咲かせ始める。傍に付いている重鎮達もそれぞれ思い思いの事を話し合いそして夜が明けた頃、それぞれの国へ帰って行った。
望むならば何事もなければいいのだが――カエサルは胸の中でそう思いながら馬を進める。
しかし、そんな思いも空しく四日後、暫く無かった周辺諸国の襲撃が起こった。
この大陸は現在の日本とよく似ている。北海道と青森の辺りが繋がっていたり、千葉が孤立した島になっていたり、群馬が『未開の森』になっていたり。
カエサル・カンニバル 性別:男 年齢:24歳 利き手:右利き 種族:人間 髪:赤く少し長め 目:明るい黄色
スターシャ・レスカテ 性別:女 年齢:23歳 利き手:右利き 種族:人間 髪:腰まである雪の様な白髪 目:綺麗な青色