第28話 決戦兵器、その名は
「これより、『アニメジア連邦奪還作戦』についての説明を行う!」
広い講堂のような所に大勢の冒険者が集っていた。本来ならばこの様な事はまず起こらないであろう。では何故今起こっているのか? それは『アニメジア連邦奪還作戦』の概要を伝えるためだ。
無論、この講堂以外にも冒険者は集っている。
そんな場所にリリスは一人座っていた。周りを見渡すとパーティーを組んでいる冒険者やソロの冒険者などが居るので一人のリリスはそれ程目立たない。
そんなリリスの元へ一人の男が歩み寄る。
「よぉ、リリス」
「……お前も来たのか」
リリスは声のした方へ振り向く。そこにはソウルが立っていた。
「まぁな。それにしても倞の奴は何処にいるんだ?」
ソウルの言葉にリリスは視線を少し下げる。その仕草を見てソウルはまさか、と声を漏らす。
「……怪我は完治しているが目が覚めないんだ」
「……そうか」
ソウルはそう呟くと拳を握りしめる。リリスはそんなソウルの様子を見てやるせない気持ちになった。
*
大久保の言葉と共に扉が開かれる。その瞬間周りの空気が変わった気がした。
「失礼します」
女子特有の高く、透き通るような声と共に一人の女子が教室に入ってくる。
――腰まである鮮やかな金髪
――背は女子の中では平均的な大きさ
――少々吊り上っている瞳は綺麗な翡翠色
どれをとっても完璧と言えるその女子は教卓の横に立つとお辞儀をする。
「じゃあ、リリスさん。自己紹介を」
大久保が黒板に女子の名前を書いていく。
「リリスだ。家庭の事情でこの地へやってきた。これからよろしく頼む」
リリスと名乗ったの少女はもう一度礼すると、大久保が、
「質問とかは席替えの後にしろよ。時間は取って置いてあるから」
と言う。さっそく新しい席順の紙を見に皆が黒板に群がる。
「クソッ!一番前とか無いだろ!」
「お、壁際だ。ラッキー」
「リリスさんと席が遠い……」
など、各々の感想を述べていく。それと同時に見終わった者が倞に、よかったなと茶化すように言ってくる。
まさか……と思い自ら確かめに行く。間に割って入りながら黒板に近づくと、席順の紙がようやく見えた。そして言葉を失う。
「なん……だと……」
*
「えー、隣の席になった高橋倞です。よろしく」
――最悪だ……
倞はそう感じずにはいられなかった。原因は倞の隣に居るリリスだ。
「あぁ、よろしく」
リリスは倞の言葉に返事をする。ただ、それだけの事なのに周りの男子――とは言っても数人だが――からの嫉妬の篭った視線がなんとも煩わしい。
そんな倞の気持ちを知ってか知らずか大久保が、
「じゃあ残り時間は質問タイムと言う事で」
と言い残し教室から出て行ってしまう。
その瞬間リリスの元へクラスの大半が集まろうとして――
「――言い忘れてたが、他のクラスは授業中だ。そこを理解しとけよ?」
――静まった。大久保はそんなクラスの雰囲気を見て頷くと今度こそ教室から出て行った。
暫く互いに視線を交わしそれぞれが頷く。そして怒涛の質問攻めが開始された。
――南無。
倞はリリスに対し心の中で手を合わせると腕を組み、そのまま意識を落とした。
*
「――次に使用する兵器についての説明を行う!」
その言葉に会場の空気が変わった。リリス達も気を引き締め続きを聞く。
「今回使用するのは鉄の船だ!それにより敵船を攻撃、撃破しながら進む!尚、この船は数に限りがある為、他の者は後方で輸送船に乗ってもらう!」
「鉄の船が海に浮くわけねーだろ!」
「そうだ!ふざけるのも大概にしろ!」
会場中から怒りの声が上がる。
「……ソウル、お前はどう思う?」
そんな会場の様子を眺めながらリリスはソウルに問う。
「……何とも言えんな。ただ、この場で言ったとなるとある程度信憑性はあるが」
「同感だ」
ソウルの答えにそう答えると、丁度説明役の軍人が言葉を発した。
「静粛に!――今回使用する兵器は超大型の『太古の魔装具』を解析し復元に成功した物だ。それに乗組員は既に訓練を開始しており、後は実戦のみと言う所だ」
そこで一呼吸する。先程までの喧騒が嘘のように静まり返っていた。
「そして、諸君らには後方で輸送船に乗って移動してもらう!」
「――こりゃたまげたな」
「確かに、俺も此処までとは想像してなかったぞ」
「海戦は向こうに任せて私達は上陸に成功し次第制圧開始か……上手く行けばの話だが」
リリスは腕を組み軍人の方を見る。それから暫く、軍人は『アニメジア連邦奪還作戦』の詳細な作戦内容を説明した。
*
次の日の早朝、リリス達は港の前に集合していた。時間が速いためか霧がかかっており、15メートル先までしか見えない。
暫く待機しているとボ―――ッ、ボ―――ッと腹に響くような重い音が聞こえた。港に居た冒険者たちは余りに音が大きかった為一瞬硬直するもすぐさま臨戦態勢をとった。
少しの間音が無くなるが、徐々に波を割って何かが進んで来る音が聞こえる。そして霧の向こうに黒く巨大な影が出現する。何人かが反射的に魔法を放とうとした時、突如霧が晴れた。其処に有ったのは――
「――これが……軍艦大和……」
――かつて地球で史上最大の戦艦としてその名を轟かせた帝国の黒鋼の守護神の姿だった。
前回投稿してから約2か月……難産でした。
そして第二次世界大戦を友達と『少し』改変するつもりが気が付いたら日本が善戦し過ぎで思わず笑ってしまいました。流石にやりすぎたかと思い現在も第二次世界大戦時の出来事を練り直してます。その為次回の更新は恐らく8月頃かと……。一応ゴールは見えてるので完結まで持って行くのでどうか見捨てないでください(涙目)
ちょっとした小話
・この世界の大和は天一号作戦で沈没しておらず、それ以前にレイテ沖海戦にて反転せず前進する事で輸送艦を撃沈(尤も、既に輸送艦は空だったが)、その後レイテ湾に突入。航空母艦3、戦艦7、重巡5を撃沈している他、多数の軍艦を撃沈している。最終的には空爆を恐れ、北海道に極秘に作られた軍港にて7月15日に燃料を抜かれた状態での戦闘の末、正規空母2、軽空母4を撃沈せしめ、その護衛の戦艦2、巡洋艦3、駆逐艦6を大破又は撃沈し、北海道への空襲及び艦砲射撃を未然に防ぎ、北の守り神と呼ばれたが自らも大破。
終戦直後、米軍の手に渡らないよう乗組員により自沈される。




