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アヒルとその他、そして巨大柴犬

 学校から帰ってきたらペットの動物が増えている経験は、誰にでもあるだろう。


 うちは父が止めどなくやらかすタイプだったので、常に何かが増えていた。


 ある日、帰宅したら車庫の横に馬がいた。競馬で活躍できずに引退したサラブレッドだった。


「食肉処分されそうだったから、野菜と物々交換してきちゃった!」


 まるでお得な買い物でもしたように、父はウキウキと柵を作り始めた。


 小学校から戻ると庭に烏骨鶏《うこっけい》と矮鶏《チャボ》が大量にうろついていた。棄て鶏だ。


 父はいそいそと鶏小屋に詰め込んでいく。


 棄てられた鶏なのだ。

 卵など生むはずがない。


 エサ代が掛かるだけなのは予想できた。


 だが、通報して保健所に連れていっても、引き取り手が現れないと処分されてしまう。そのすんでのところで、父はまた彼らを引き取りに行くのだ。


 そのお人好しの父の噂を聞いた人が、また何かを棄てにくる。この繰り返しだった。


 鶏小屋にはそれ以前に、後先を考えない弟が買ってきた鶏がいた。


 自分専用ヒヨコが欲しくて特売の卵を温めては失敗する私のために、父が手作りの孵卵器を製作して孵化させた別のヒヨコたちもいた。


 烏骨鶏と矮鶏のあと、大量の棄てアヒルが加わった。ある日庭にいたのだから仕方ない。


 やたらと筋肉質で大きい柴犬も住み着いてしまった。もちろん保健所に通報しているが、飼い主が見つかったことなど一度もない。


 鶏たちは毎日ふかしたジャガイモやコーンを貰って卵を産むようになった。


 犬は鶏小屋の番をして役に立っている。


 ビニールプールで一列に並び水浴びの順番待ちするアヒル。泳いだら交代し最後尾につく。


 彼らの前世は日本人で間違いないだろう。


 アヒルは役には立たないがオイルタイマーのような癒しがある。


 いや。本当は卵を産んでくれることもあったのだが、彼らの卵は、色合いは鮮やかだったが、ゴムゴムしてあまり美味しくはなかった。


 父は順調に里親を見つけてきた。


 アヒルや烏骨鶏たちは小学校などに引き取られ、サラブレッドは愛好家に貰われて行った。


 大胸筋と上腕筋がやたらと発達した、巨大でマッシブな柴犬が残った。


 この頃、山の麓の畑にはエゾヒグマが出没し、父の作ったスイカを食い散らかしていた。


 父はゴン太という名前をつけたその犬を熊避けのガードドッグとして育てた。


 高速トラクターの砂煙のなか、目をやられて泣きながら追いかけ続ける犬。


 だが父の経営を脅かしたのは、ヒグマではなく山師の地上げだった。


 大きな洋犬を連れてきて札束を見せつける山師。断っても執拗にやってきた。


 ある日、山師は飼い犬をノーリードで連れてきた。父は命の危機を感じたが、このときはガード犬ゴン太も帯同していた。


 ゴン太が森の中に走り去り、大きな洋犬が追いかけるのをみて、父は飼い犬を心配した。


 ほどなくしてゴン太だけが戻り、山師の犬はとうとう戻らなかった。


 このとき森で何が起こったのかわからない。


 あとになって判明したのは、ゴン太が大きな柴犬ではなくヒグマ猟犬に使われる北海道犬らしい、ということだけだった。

 

 数年後、実家の畑のヒグマ被害に悩んだ私は、ブログ読者の紹介で奇しくもゴン太と同じ北海道犬を飼うことになるのだった。


 

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