第1話 呪いの黒猫を召喚
呪いの黒猫は実在した
弟がスーパーでバイトをしていた時のこと。
「先輩の家でシャム猫の子供が生まれたんだって。里親探してるから貰ってきてもいい?」
うちの家族はみんな大の動物好き。
勿論、両手をあげて大賛成である。
シャム猫は白いシャープな体に耳、鼻、足先と尻尾が焦げ茶色。青い眼が印象的な猫だ。
お迎え当日。弟が休日に子猫の入った飲料用段ボールを持って帰宅。
中から可愛い子猫の鳴き声が聞こえる!
箱を開けつつ期待値が高まる。
出てきた!
漆黒のグレムリンぽい生物が二体!!
うん!?
混乱した。何から確認すればいいんだ!?
まず黒い。
痩せた小さな顔は、頬がげっそりと細い。
眼は金糸で集中線を描いたようなザラついた金色。
ヒジキみたいな黒い瞳孔が魔物感を補強している。
死神の化身。使い魔。
不吉なワードしか浮かんでこない。
子猫の可愛らしさを極限まで削ぎ落とした造形だ。
ゴクリと唾を飲んだ。
……これはシャム猫……?
……なのか?
いや、何より。
「なんで二匹?」
弟は。
「いまなら二匹でお得だよって言われたから」
また騙されやがったー!!
弟は綺麗なお姉さんに騙されてスイスの何十万だかの腕時計を買ったり、使いもしない商品に延々とローン支払いをさせられたりする男。
しかも本人は気に入っていて、騙されたことすら気づかない。指摘したら、
「俺の金で買ったんだから誰にも文句は言わせない!」
と逆切れする面倒臭いところがある。
「いや、さすがに餌代二倍はちょっとね」
契約不履行を理由に返品をお願いしようと考えていた矢先、使い魔その一と目が合った。
「……ニャハハハハーン」
小さな声で不思議なフレーズを吐いた。
耳の下は剃り込みが入ったような薄毛で肌色が丸見え。細い尻尾の毛はパヤパヤで、こっちも肌色の肉が丸見えだ。
なんて不気味な生き物だろう。
これ返品して貰い手が見つかる可能性ある?
いや、無いだろうな。
結局どちらも私が引き取り、面倒をみることになった。
ちょうど同じ時期、ある日帰宅すると車庫の横にサラブレッドAがいた。
「レースで戦績出せなくて馬肉にされそうだから貰ってきちゃった」
と父が言った。
この親にしてこの子ありというやつだ。
父は後になって、彼女の餌代が15万もかかると嘆いてお小遣いを節約していた。
裕福な人の趣味では決してない。
うちは経済的にギリギリな方だ。
でも、家族は父のやらかしをしょっちゅう見ていたので、魔物の餌代くらいは些細なものだと胸を撫で下ろした。
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