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訳アリ食堂店員、勇者になってしまう〜学園の嫌われ者がイケメン英雄になるまで〜  作者: はえたたき


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31.合体魔法

「……なるほど」


 レンヤが満足げに息を吐く。


「挨拶回りに来て正解でした」


 血を拭いながら穏やかに微笑む。


「他の幹部達も、そのうち挨拶に来るでしょう」


 視線はユラへ。


「あなたの実力を――もっと知るために」

「……」


 誰も動けない。


「ちなみに」


 ふっと肩をすくめる。


「もちろん私はまだ全然本気を出していません」


 静かな現実をわからせられる。

 まだ実力差はとても顕著で、背筋が凍る。


「せいぜい……盛って半分、といったところでしょうか」

「……っ」

「その気になれば、いつだって殺せますから」


 淡々と告げる。事実として。

 だからこそ、重くて、全員の表情が強張る。


「ですが――」


 ふふっと笑う。


「強くなりなさい」

「……え?」

「弱いあなた方を殺しても、何の意味もありませんから。ただの時間の無駄にするのは惜しい」


 あくまで余裕だった。


「また会いましょう」


 一歩、下がる。


「勇者様一行の皆様」


 次元の裂け目ができる。

 サキと同じように、次元の中へ飛んで消えた。

 訪れた静寂にしんとする。


「……っ」


 誰もすぐには動けなかった。

 だが、啜り泣く声に我にかえる。


「じいちゃん先生……!」


 ダイゴローの声。

 神父様が床に倒れたまま。


「……っ」


 急いで駆け寄るも、息が浅い。

 今にも、途切れそうなほどに衰弱している。


「ダイゴロー……」


 かすれる声。もう手遅れなほど弱々しい。


「いやだ……いやだよぉ……!」


 必死に体を揺する。


「じいちゃん先生!しっかりしてよおっ!」

「……っ」


 誰も、何もできない。

 妖精たちも、ただ周囲を飛び回るだけ。

 瀕死の体は回復魔法を受け付けないのだ。


『むりだ……』

『だめだこれ……』

『なおせねぇ……』

『むりだ……』

『もう、消えかけてる』

「なんでだよ!!」


 ダイゴローが泣きながら叫ぶ。


「精霊様っ!お願いだよぉ!!」


 返事は、ない。


「いやだ……いやだぁ……!」


 涙がぽろぽろと落ちる。


「……」


 その光景を見て、胸の奥が強く締めつけられた。

 助けたい。なんとかしたい。ただ、それだけ。

 気づけば、意識がさっきみたいな視界が変わる感覚が宿り、体が自然と動いていた。



「……サクラコさん」

「えっ」


 俺がそばに寄る。


「力を、貸してください」

「え、あの……?」

「あなたの自律神経魔法と、俺の回復を合わせる」

「え、それは……どういう……」

「はやく」


 声が、静かに強くなる。


「神父様が手遅れになる前に」

「……っ」


 一瞬迷い、そして――――頷いた。


「わかりました。どうすれば」

「神父様に、自律神経魔法を。いつも通りでいい」

「……はい」


 サクラコさんは目を閉じる。

 集中し、呼吸を整える。

 そっと神父様に手をかざす。


 俺も手を向けた。

 意識を重ね、流れが繋がる。

 サクラコさんの整える力と、勇者の救う光。

 それが――――ひとつに重なった。


「――合体魔法……」


 光が、溢れる。

 二つの力が重なる。

 溶けるように、拒まれずに、優しく、包み込むように。

 それでいて、確かな力を。


天上の復活セレスティアル・リヴァイブ


 静かに声が重なる。

 二人同時の回復の光が、神父様の体全体を満たす。

 止まりかけていた命の流れが、ゆっくりと戻っていく。

 呼吸が深くなり、指先に力が戻る。

 顔色もどんどん赤みが戻っていく。


「……うぅっ」


 そして、閉じていた瞼がゆっくりと開いた。


「……ダイ……ゴロー……」


 かすれた声。


「……っ!!」


 一瞬、時間が止まった。


「じいちゃん先生……?」


 震える声。


「ほんとに……?」


 神父がわずかに微笑む。


「心配……かけましたね……」


「――っ!!」


 ダイゴローが、崩れるように抱きついた。


「うわああああん!!」


 大粒の涙がぼろぼろこぼれる。


「よかったぁ……!!よかったよぉ……!!」


 声を上げて、泣く。

 さっきまでの強さなんてどこにもない。

 ただの子供の泣き方だった。


「もう……いやだよぉ……!!」

「うん、うん……すみませんね」


 弱々しくも、優しく頭を撫でる。


「まだ、死ねません……キミや子供達を残して」

「……っ、うん……っ」


 必死に頷く。

 他の子供達もわあっと神父様に一斉に駆け寄った。

 その光景に、胸の奥がじんわりと熱くなる。

 よかった。ほんとうに。

 


「……あれ」


 足元がぐらりとして、視界が揺れた。

 力が抜けていく。

 目の前が薄暗くなっていく。

 あまりの消耗に立っていられない。


「ユラ?」


 ヤマトの声が遠い。


「……っ」


 体が、傾く。

 支えようとするけど、うまく力が入らない。

 あ……やばい。

 そのまま、倒れ――――


「――おい」


 腕に、引き寄せられた。

 落ちるはずだった体が止まる。

 しっかりと、抱き止められていた。


「……無茶しすぎだ」


 低い声。

 でも、どこか焦っている。


「だい……じょうぶ……」


 うまく声が出ない。


「大丈夫じゃない」


 即答された。


「……っ」


 視界がさらに薄暗くなって、意識が落ちていく。


「おい、しっかりしろ」


 ヤマトの声がさらに遠くなっていく。


 でも――温かいな。

 ヤマトっていい匂いがして、腕の中がたくましくて、安心するね。

 このままでも、いいかも――なんて。

 そんな乙女みたいな事を思いながら、意識が途切れた。


 *


「ユラ!?」


 ハヤミの声。


「ちょっと、何してんの兄貴!!」

「見りゃわかるだろ」

「なんかずるい……じゃなくて!!」


 焦った様子で駆け寄ってくる。


「はやく!ベット!二人ともベッドに運ぶよ!!」


 短く頷く。

 ユラを抱き上げる腕に、力が入る。

 いつもより、ほんの少しだけ強く。


面白い、続きが気になると思っていただけましたら、

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