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訳アリ食堂店員、勇者になってしまう〜学園の嫌われ者がイケメン英雄になるまで〜  作者: はえたたき


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22.迷いの森

 近所の孤児院へ行く途中、ダイゴローが隣を歩く。

 少しだけ距離が近くて、時々ちらちらこちらを見上げてくる様子が可愛らしい。

 友達の妖精以外はずっとひとりぼっちだったのかな。


『のろま。はやくこいデブ』

『はらへったくそが』

『だりー帰ってクソして寝たい』

「うるさいなぁ」


 その周囲を我が物顔で飛び回る三匹。

 口の悪い妖精だが、慣れると意外に可愛らしく思えてくる。

 見た目は可愛いし小さいので。でもやっぱり口は悪い。SAN値削られる。

 王都の平民街の向こうには教会が立っている。

 孤児院だ。


 扉を開けると木の匂い。

 古いけど、温かい空間。


「じいちゃん先生!」


 ダイゴローがとことこ駆け寄る。


「おやおや」


 振り向いたのは、穏やかな老神父だった。


「ダイゴロー、お友達かい?」

「えっとね!」


 振り向いて元気よく指をさす。


「妖精が見えるデブと!」

「え」

「鬼みたいなお姉ちゃんと!」

「は?」

「こわいイケメンな兄ちゃん!」

「…………」


 妖精が見えるデブって直球すぎる説明だよ。


「鬼ってなによぉ」


 ハヤミはキレ気味。


「……」


 ヤマトは静かにダイゴローを見る。


「子供は正直だ。さっきのユラをバカにしたクソガキよりはマシだろ」


 もう堂々とクソガキ呼ばわりなヤマトはこれが通常運転だと思う事にした。



「ふむ……なるほど」


 事情を説明すると、神父はこちらをじっと見つめる。

 何かを感じているみたいで首を傾げていたら、


「あなた方は……」


 一拍置いて。


「精霊様が待ち望んでいた方々ですね」

「え……精霊様?」


 この世界の神の使いみたいな存在だっけ。

 学校の神話の授業でやってた。

 銀髪の勇者と精霊がこの地を協力して救いました的な。

 日本に住んでいた俺としては、よくある中二病みたいなお話だなって思った。


「わたしはね」


 神父は静かに微笑む。


「神の声を聞くことができるのですよ。これでも神父という肩書きですからね」


 精霊はこの世界の神の眷属的存在だ。授業で神の次にお偉い存在だと散々習った。


「そして分かります」


 ゆっくりと、俺を射貫くように見る。


「あなたが勇者様である事も」

「っ……!」


 肩がわずかに揺れる。

 いきなり言われると緊張してしまう。


「妖精が見えるのは、精霊の加護を持つ者か勇者様だけ」


 静かな確信だった。

 俺やダイゴロー以外だれも見えない理由がわかった。


「つまり、ダイゴローも……」


 ちらりと小さな存在を見る。


「ぼくは特別なんだよ。精霊の加護っていうのあるんだって」


 ダイゴローは胸を張った。

 そうか。この子はそういう特殊なものを持っているのか。


「妖精達からもう聞いていると思いますが、明日は迷いの森へ向かいなさい。そこで、精霊様のお告げを聞くのです」

「迷いの森……」


 妖精たちがやたら行きたがる森はそこの事だ。


『明日行くんだぞくそが』

『ちゃんとおぼえとけよデブ』

『ねぼうしたらぶっころすぞてめえ』

「あー……はいはい」

「精霊様が、そこへ導いておられるようです」


 そこへ行けば、精霊様に会えるのだという。

 そこで何をしてくれるかは精霊様次第だって。


「ただ、その森は入口程度なら誰でも入れるのですが、奥へ行けば行くほど幻覚を見せてくるのです。あなた方が本当に魔王に対抗できる者達なのかを見定めるために」

「魔王に……か」


 勇者のネックレスが少し熱を帯びた。魔王の言葉に反応するように。


「魔王に対抗できる者って、そこにあたしらも入ってるって事?やだーなんか楽しそう」

「楽しくはないだろ、脳筋」


 ハヤミとヤマトは軽いノリだ。この二人なら確かにどんな事が来ても乗り越えていけそうな強さがある。

 そんな俺は不安だった。

 なんとなく、嫌な予感がしていた。 


「幻覚はとても厄介です。自分の今の精神に打ち勝つことができた者のみ、先へ進む事ができます。どうか心を強く持って、奥にいる精霊様に辿り着けますように」


 神父様は祭壇で祈りながら送り出してくれた。



 翌朝の早い時間、迷いの森に出発。

 早朝に起きて出発しないと夜までに帰ってこれないからだ。

 ダイゴローを案内役として同行させ、なぜかサクラコさんや親父も一緒。


「私もぜひ行きたいと願い出て同行させていただきました。ユラさんにはどこまでもついて行きますわ」

「サクラコさん……なんか照れるなぁ。さすが女神様です」

「……へえ」

「ほぉ……」


 ハヤミとヤマトはなんか黒い笑みを浮かべていた。

 なんかあったでしょうか。


「ここはいい素材が取れるからな」


 親父が腕を組む。


「ついでの飯の材料調達だ」

「完全にピクニック気分じゃん……」


 迷いの森の入口付近は、たくさんのきのこや山菜が採れる場所として有名だ。

 王都に住む商いをしている者が素材集めに来たり、家族でピクニックへ来る定番の場所としても優れている。

 ただ、奥へ進まなければが前提。



「俺はここで素材を採取しながら待ってる。がんばってこい」


 親父は素材集めのため入口で離脱。

 手を振って見送られて、旅人や家族連れが楽しくしている横を通り過ぎる。

 この先絶対入るな危険という看板が不安を煽った。


 木々が生い茂る。

 どんどん薄暗くなっていく。鬱蒼とした森に変わった。

 しばらくすると霧が濃くなってきて、自分達を包んでいた。


「みんな!」


 ハッとしたら、一人取り残された。はぐれてしまった。

 どうしよう。大丈夫かな。いや、自分が一番動揺してる。


 向こうに何かが見える。光が。

 でもこれは――――自分?





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