第81話:魔道具メーカー「限界性能テスト」編:前編
【ギルドに届いた挑戦状と、北川の皮算用】
新宿ギルドのロビー。大介(中身:エイミー)は、十六層の報告書を提出した直後、北川さやかに手招きされました。その表情は、まるでお宝の山を見つけた時のように輝いています。
「エイミー様、耳寄りな……いえ、最高に『実入りの良い』お話がございますの!」
「実入り? 私を動かすには、それ相応の対価が必要なこと、分かっていて?」 大介は銀髪を指先で弄りながら、お嬢様らしい不遜な態度で答えます。内心では(おっ、金の話か? 歓迎だぜ!)と期待に胸を膨らませていました。
「もちろんですわ! 大手魔道具メーカー『アーク・マジック』社からの指名依頼です。開発中の最新モデルの『耐久テスト』をお願いしたいとのことなんです。彼ら、自社の技術に絶対の自信を持っておりましてね。『わが社の杖を壊せる魔導師など存在しない』と豪語しているんですのよ」
「ほう、随分と大きく出たものですわね」
「報酬は一本のテストにつき一千万円。そして、もしも……万が一にも壊した場合は、追加で二千万円お支払いするそうですわ。最大五本まで。全て壊せば合計で一億五千万円です!」
「(一億五千万……! 棒を五本振るだけで、一軒家が建つんじゃねえか!?)」 大介は本来の彼らしい素の声を必死に抑え込み、優雅に鼻で笑いました。 「……フン。私の魔力を受け止める器など、この世に存在しないことを教えてあげる必要がありますわね」
【アーク・マジック社、戦慄のテスト会場】
数日後。大介(中身:エイミー)は、アーク・マジック社の広大な魔力テストドームにいました。 そこには、白衣を着た研究者たちがズラリと並び、不敵な笑みを浮かべています。中央には、見るからに重厚で装飾の凝った新型杖が五本、台座に据えられていました。
「エイミー様、本日はありがとうございます。私が開発主任のセシルです。……先に申し上げておきますが、我々の新型杖は特殊な合金と高密度の魔導結晶を使用しておりましてね。並の魔導師が全力で放ったところで、ヒビ一つ入りませんよ」
セシルは自信満々に眼鏡を押し上げました。彼らにとって、この依頼は「エイミーという強力な個体であっても、わが社の杖は壊れなかった」という宣伝データが欲しいだけの、いわば『出来レース』のつもりだったのです。
「ヒビ一つ入らない、ね……。後で泣いて謝っても許してあげないから、覚悟しなさい」 大介(中身:エイミー)は、一本目の杖を手に取りました。
「(よっしゃ……耐久テストってことは、遠慮なしにぶち込んでいいってことだよな? エイミーの魔力を蛇口全開にして……一億五千万、一気に稼がせてもらうぜ!)」
大介は、エイミーの体に眠る無限に近い魔力の奔流を、その細い腕に引き込みました。研究者たちの余裕の表情が、次の瞬間にどう変わるのか――それを想像するだけで、大介は笑いが止まりませんでした。




