第39話:エイミーの体で「高額依頼」
「――これで、トドメだ!」
大介(エイミー体)が放った『ギガ・ドリル』の最後の一撃が、ブラッド・オーガの胸中央にある核を粉々に粉砕した。
赤黒い結晶の巨体が、重低音を響かせてダンジョンの石床に沈む。静寂が戻った第十四層の最奥に、大介の荒い吐息だけが白く残った。
「ふぅ……。やっぱりこの身体、魔力は化け物じみてるけど、踏ん張りが効かねえな。エイミー、もう少し筋トレしとけよ……」
大介は銀髪を雑にかき上げ、手近な岩にどっしりと腰を下ろした。可憐な美少女が、ガサツな中年男の仕草で胡坐をかく。
その様子に、遠巻きに見ていた負傷パーティーの冒険者たちは、恐怖を通り越して呆然と立ち尽くしていた。
「あ……あの、嬢ちゃん。あんた、一体……」
「嬢ちゃんじゃない、エイミーだ。覚えておきなさい」
大介は「暴君の杖」を軽く振るい、リディアの初歩的な治癒魔法を、無理やり高出力に設定して放った。
温かな光が戦士たちの傷を塞いでいく。だが、あまりの魔圧の強さに、治療を受けている側は「体が沸騰するかと思った」と震え上がる始末だった。
「お礼はいい。それより、このオーガの素材、お前らが持って帰っていいぞ」
「えっ、いいのか!? クエストの報酬とは別に、この結晶は二、三十万にはなるはずだぞ!」
「ああ。俺の目的は『実績』と『現金』だ。重い荷物を運ぶのは、この華奢な体ではキツイのよ」
大介は不敵に笑うと、杖を肩に担いで颯爽と歩き出した。
冒険者たちが「エイミー」という名を畏怖と尊敬を込めて呟くのを背中で聞きながら、大介の中の魂が悦びに震える。
(これで新宿ギルドでの評価も跳ね上がる。エイミー、見てろよ。『成り上がる』ための資金と舞台を用意してやる)
大介は鼻歌混じりに階段を上り始めた。
それは、後に新宿ダンジョンで伝説となる「銀髪の暴君」の快進撃、その最初の一歩に過ぎなかった。




