表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

120/151

第111話:扉の向こうの、たった一人の「城」へ


夜の街を駆け抜け、エイミーは交差ダンジョンのゲートを飛び越えました。


息を切らしながらアパートの扉を開けると、そこには数日前から連絡が途絶え、彼女の姿を探し続けていた男が、険しい表情で立ち尽くしていました。


「……エイミー! お前、今までどこに行ってたんだ!」


大介の怒鳴り声に近い叫びが、狭い部屋に響きました。


その手には、彼女の身に何かあった時のためにと用意されていたのであろう、使い古された装備が握られています。


「急にいなくなるから、おまえの実家で何かあったのか心配で仕方なかった……。最悪の事態ばっかり頭をよぎったんだぞ。無事なら、なんで一言連絡しなかった!」


大介の肩は激しく上下しており、その瞳には怒りよりも、彼女を失うことへの切実な恐怖が滲んでいました。


その「デリカシーのない大きな体」が、どれほど自分を想って震えていたか。それを目の当たりにした瞬間、エイミーの胸に、セレナの言葉が熱くこみ上げてきました。


「……ごめんなさい。本当に、ごめんなさい。大介さん」


エイミーは立ち尽くしたまま、ただ深々と頭を下げました。


いつもなら「心配しすぎです」と笑い飛ばすところですが、今の彼女にはそんな余裕はありません。


「お前……泣いてるのか?」


大介の声から、ふっと棘が抜けました。彼は持っていた装備を床に置き、戸惑いながらもエイミーに歩み寄ります。


「何があった。誰かに何かされたのか? 俺にできることなら、何だってしてやるから……」


「……誰のせいでもないんです。私、怖かったんです。大介さんに会うのが……会って、自分がどうなってしまうのかを考えるのが」


エイミーは顔を上げ、涙で滲んだ瞳で大介を見つめました。


彼女の視線の先には、自分を心配して、真っ直ぐに自分だけを案じてくれる、不器用で温かい大介がいます。


「私……お話ししたいことがあるんです。ずっと、一人で考えていたことです」


彼女は震える指先で自分の腕を抱きしめました。


今ここで言葉にしてしまえば、もう「ただの相棒」には戻れない。


それでも、セレナに背中を押されて辿り着いたこの「城」で、これ以上自分の心に嘘をつき続けることはできませんでした。


「……おう。話せよ。お前が納得いくまで、いくらでも聞いてやる」


大介は、彼女の心の揺れを敏感に感じ取ったのか、それ以上は詮索せず、静かにパイプ椅子を引き寄せました。


狭い部屋の中に、二人の吐息だけが重なるような、痛いほどの静寂が流れます。


銀髪の魔法使いは、唇を噛み締め、覚悟を決めたようにその口を開きました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ