ep8.星間を繋ぐ門編 戦闘開始
創夜の視線の先、荒涼とした大地の中央に、その存在は立っていた。
創夜たちが転移してきた衝撃の光と轟音の中でも、その存在だけは絶対的な静寂を保っている。
それは、まさにフィーリアが全知的な存在として解析で見つけた、ヨグ=ソトースの姿だった。
創夜は、その存在の巨大さと異様さに、息を飲んだ。
「あれが……ヨグ=ソトースアル?」
リンの声が震える。目の前の存在は、それまでの魔王の眷属とは次元が違った。
その巨体は、漆黒の金属質の装甲に覆われているが、装甲の表面には、無数の銀河の渦が描かれているように見える。そして何より異様なのは、その体中に、いくつものアーチ型の門が開いていることだ。胸、肩、腰、そして頭部の角の間。一つ一つの門の向こう側には、輝く星々が満ちた宇宙が広がっていた。まさに、時空の通り道そのものを具現化した姿だった。
創夜は、その威圧感に、思わず口から言葉が漏れた。
「……魔王てか、魔人じゃねーか! 何だよ、あの全身のゲートは。宇宙が漏れ出てるぞ!」
セリアは賢者の杖を握りしめ、緊張した声で分析する。
「古文書にあった、玉座なき魔王が各次元へ開いた時空の通り道、ゲートそのものという記述そのままね。あれを破壊しようとすれば、彼の体内の門を通じて、無限の次元の混沌がこの世界に流れ込むわ」
ミリィは完全に圧倒されていた。
「う、うそ……わたしが今まで会った敵なんて、ただの岩みたいだよ……」
ミーナもメイド服の裾を強く握りしめる。
「これが、私たちが封印しなければならない、無限の混沌……」
ヨグ=ソトースは、手に巨大な光の杖を握りしめている。その杖の先端は鋭利なクリスタル状になっており、杖全体が複雑な魔法陣の光を放っていた。その巨体が、創夜たちに向かってわずかに動くだけで、周囲の荒涼とした大地に次元の亀裂が入る。
ヨグ=ソトースの装甲の奥から、無数の星々の響きを合わせたような、深く、冷たい声が響いた。それは、過去、現在、未来のすべての時空の音を内包しているかのようだった。
「――侵入者よ。そして、異物よ」
その視線が、創夜を射抜く。
「お前は、逆光石に触れ、玉座なき魔王の夢を知った。そして、アストラル・ブレイカーを起動させた。時を固定する鍵と、時を断絶する鍵を手に、再び、私をここに封印するつもりか」
創夜は、一歩前に踏み出した。目の前の存在の目的を、自分の目で確かめる。
「それは今から決めると言いたいところだが、お前、異物と言ったよなぁ。今。決めた。お前を封印なんかするかよ、封印なんかしたら、封印を解いてお前がまた出てくるだろ、俺の元の世界も含めて、全ての次元が滅ぶらしいからな。ここで終わりにしようぜ!」
ヨグ=ソトースの体から、微かな冷笑のような波動が発せられた。
「世界の理に抗う無意味な行為だ。私を閉じ込めることは、無意識に広がる根源の夢を止めることにはならぬ。お前たちが封印しようとする場所は、私にとっては一時の停留所に過ぎない」
「封印? 俺たちはお前を倒すすべをもっている」創夜は不敵に笑う。
ヨグ=ソトースは、その巨大な杖をゆっくりと持ち上げた。
「……愚かな。しかし、興味深い。お前の存在が、根源の夢を揺らす異物であることは確かだ。ならば、その夢に辿り着く前に、ここで時を停止させてやろう」
ヨグ=ソトースの全身の門から、無数の銀河の光が噴き出し始めた。
「無知なる者どもよ。ここで、永遠に眠れ」
その言葉を合図に、ヨグ=ソトースの体から、宇宙的な波動が津波のように押し寄せた!
「来るアル!」リンが叫び、創夜は即座に防御の構えを取る。
まさにその瞬間、創夜たち全員が持つ、神々から授けられた武器が一斉に、強烈な光を放ち始めた!
創夜の『夜の剣』が、まばゆい白銀の光を放つ!
リンの『ガントレット』が、禍々しさを打ち消す純粋な暗黒の光を放つ!
セリアの『賢者の杖』が、深遠な翠の光を解き放つ!
ミリィの『瞬速の剣』が、黄金のオーラに包まれる!
ミーナの悪魔の書が、漆黒の光に包まれる!
この光は、ヨグ=ソトースの放つ波動に一瞬たりとも負けることなく、対抗した。
「な、何!?」 フィーリアが驚愕の声を上げる。
マギテック・ゴーレムが急に現れのゴーレムの腕のラインが、クリスタルのように激しく輝き、集束した光を解析し、再構築し始めた。
それに合わせ、創夜達の武器がクリスタルの光を放つ透明な武器に変形する。
「エジスが言っていたその時ってことかな?」
「あいつに反応したみたいだな」
ヨグ=ソトースは、その光景に初めて、驚きとも苛立ちとも取れる感情を滲ませた。
「……未知の神々の干渉か。この次元には存在しない、別なる力……」
創夜は、手に重く、そして強大な力を感じる新しいクリスタル剣を握りしめ、不敵に笑った。
「悪りぃな、ヨグなんとか!俺たちは、お前の知らない手札をもっている。さあ、戦闘開始だ!」




