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転生したら無職で追放されたけど、実はチートだったので、とりあえず、魔王というやつをこの目で確めて来ます  作者: 真柴 零
無職転生

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ep6.魔法使いのお姉さんセリア

 金属の匂いが風に乗って流れてくる。

 山の向こうに見えるのは、煙突が林立する町――メカニカ・シティ。


 創夜たちはギルドの依頼で、そこを訪れていた。


「機械の町?」

 リンが眉をひそめる。


「人より機械の方が多いって(うわさ)だよ。ギルド文書には“暴走機械の調査”とあるけど……」


 ミリィは不安げに頷いた。

「でも、この町を作ったのは王国直属の技術師団。……また、王が関わってるのかな。」


 創夜は視線を遠くに投げた。

 前回の戦いで知った陰謀の影――それが、この町にも伸びている気がしてならなかった。


 町に入ると、そこはまるで別世界だった。


 通りを走る無人の鉄馬。

 空を飛ぶ金属の鳥。

 人々の代わりに、無表情なオートマタが客引きをしている。


「まるで……生きてるみたい」

 ミリィが呟く。


「…ただの道具さ」

 創夜の声には、冷たい響きがあった。


 そのときだった。

 通りの先で、青白い閃光が走る。次の瞬間、悲鳴が響いた。


 暴走した鉄馬が人々をなぎ倒し、突進してくる。

 創夜が身を翻すが、鉄馬の動きは早い。


 その瞬間――甘く響く女の声が風を裂いた。


「――《フリーズ・アーク》。」


 銀の杖が光を放ち、鉄馬は一瞬で凍りついた。

 氷の中に閉じ込められた機械が、微かな音を立てて沈黙する。


 通りの向こうに、赤い外套(がいとう)(ひるがえ)す女性が立っていた。


 陽光を受けて輝く紅の髪。

 タイトな黒のミニスカートに、脚を包む編み上げブーツ。

 唇には薄く笑みを浮かべ、どこか人を試すような目をしている。


「おやおや。ギルドの子たちかしら?」

 柔らかな声が響く。


「……強い」

 リンが呟いた。

 創夜は無言で女を見据える。

 ただ者ではない、その雰囲気。


「名乗っておこうかしら。私はセリア・ヴァルクレア。この町でちょっとした研究をしてる、魔法使いよ」


 杖を軽く肩に乗せるその仕草に、余裕とどこか寂しさが滲んでいた。


 ギルド支部で再び顔を合わせた。

 セリアは依頼書を手にしていた。


「暴走機械の調査」――まったく同じ依頼だ。


「あなたたちも、この件を追ってるのね?」


「そうだ。」創夜が答える。

「だが、ただの暴走じゃない気がするな。兵器級の動きだ。」


 セリアは目を細めた。

「……察しがいいのね。そう、あれは“兵器”よ。」


 彼女は小さく溜息をつき、机に設計図を広げた。

 そこには、巨大な鎧武者のような影が描かれている。


「“ガーディアン・ゼロ”。この町を守るために王国が開発した自律型戦闘兵器。

 でも今は、命令を無視して動き出しているの。」


「そんなのが暴走したら……町が滅びる」

 ミリィが息を呑む。


「ええ。だから止めなきゃならない。でも、私一人じゃ届かない場所があるの。私の魔法は暴走しやすいの、協力者がいれば私も安心して戦えるわ、あなたたち、手を貸してくれる?」


 創夜は一瞬だけ迷ったが、すぐにうなずいた。

「王の兵器なら、放っておけないな。」


 セリアの(ひとみ)に、わずかに安堵が浮かんだ。

「ふふっ、頼もしいのね。じゃあ契約成立――共に行きましょう、勇敢な剣士さん。」


 夜。町の外れにある廃工場。

 そこが、暴走の発生源だとセリアは言った。


 無数の歯車が動く音が遠くから響き、赤い警告灯が闇を染める。

 創夜たちは足音を殺して中へ入った。


 中央の広間に、黒鉄の巨体があった。

 鎧をまとったような機械。三メートルはある。

 その両腕には巨大な刃がついている。


「……もう、動いている」

 セリアが息を呑んだ。


 金属の唸りが、床を震わせた。


「創夜、下がって!」

 リンの声が響いた瞬間、巨体が動いた。


 腕の刃が振り下ろされ、床を抉る。

 衝撃で埃が舞い上がり、視界が白く染まる。

 ミリィが悲鳴を上げた。


 創夜はすぐに剣を抜くが、金属の装甲には刃が通らない。


「《フロスト・レイヤー》!」

 セリアが詠唱し、青い光が走る。

 巨体の脚が一瞬凍りつくが、すぐに粉砕された。


「ダメ、あれは魔法耐性がある……!」


「なら――俺がやる。」

 創夜は剣を地面に突き立て、掌を地にかざした。


 紫の魔法陣が展開し、空気がうねる。

 リンが驚いたように振り返る。

「創夜、それは……!」


「――《グラビティ・ギア:召喚》。来い、鎧武者アーマード・ガーディアン!」


 地面が裂け、重力が収束する。

 紫の粒子が集まり、金属の装甲を纏った巨人が現れた。


 三メートルの鎧武者が、創夜の背後に立つ。

 その背中が光り、構造が変形していく――

 装甲が重なり、車輪が現れ、姿は黒の車両へと変わった。


「まさか……あなた、重力召喚士なの?」

 セリアが目を見開く。


「まぁな。」創夜は口元を吊り上げた。

「こいつは俺の相棒だ。」

  創夜はとりあえず口を合わせた。


 ロボットの町メカニカの中心部が、赤い閃光に染まった。

 地を震わせる轟音とともに、暴走した巨大ガーディアンが制御塔を叩き壊す。


「これが……王国の“実験兵器”……っ!」

 セリアが蒼い杖を構え、唇を噛む。


「リン、ミリィ! 住民の避難を頼む!」

「任せるネ!」

「創夜、あたしが足止めする!」


 “グラビティ”の力を使えば早い。

 だが、崩壊した瓦礫の下には生きた人間がいる。

 だから彼は――素手で、鉄骨を持ち上げた。


「俺が……全部助けるんだ!」


 その間に、セリアが空へと舞い上がる。

 ミニスカートの裾が風に舞い、太ももが閃光に照らされる。

「やれやれ、まったく……男ってのは無茶ばかりね♡」


 だが瞳は真剣そのもの。

 杖の宝玉が紫に輝き、数百の魔法陣が浮かんだ。


「《アーク・ルミナス・ランス》――貫けぇっ!」


 無数の光の槍が暴走ガーディアンに突き刺さる。

 金属が悲鳴を上げ、黒煙を噴き出した。


 だが、反撃は容赦なかった。

 巨大なアームが伸び、セリアを叩き落とす。

 魔力が暴走し、空気がねじれ、紫の稲妻が奔る。


「セリアさん、危ないっ!」

「近寄らないでッ!!」


 周囲の機械が次々と爆発する。

 髪が浮き上がり、瞳が紅に染まった。


「父は……この町を守るために兵器を造った。

 でも、王国はそれを奪って……人を実験材料にしたのよ!」


 セリアの体を包む魔力が限界を超え、空へと竜巻のように立ち上る。

「暴走する前に……止めなきゃ!」

 セリアは暴走した魔力を抑えようと必死にこらえている。


 創夜が立ち上がる。

「セリア! お前を傷つけるわけにはいかねぇ!俺が行く。その間にその魔力の暴走をどうにかしてくれ俺には魔力の暴走(そっち)の方はどうしようもない。」


 背後で、グラビティ・ギアが召喚される。

 黒の車体が地を焦がすように走り出した。


「行くぞ、ギア! 暴走ガーディアンを押さえ込む!」


 重力を操る力で、巨大兵器を地面に縫い付ける。

 赤いセンサーが光を放ち、金属が悲鳴を上げた。


 創夜の叫びが、暴走する魔力の中で響く。


 彼の重力フィールドがガーディアンを押し潰し、

 金属の巨体は悲鳴とともに地面へ沈んでいった。


 やがて風が止み、静寂が訪れる。

 瓦礫の上で、創夜が息を吐いた。


 セリアは倒れていた。だが、確かに生きている。

 リンとミリィが駆け寄り、彼女を支える。


「創夜……この町を……救ってくれて、ありがとう」

 セリアが弱く微笑む。


 創夜は苦笑して、ギアを撫でた。

「礼ならこいつに言ってやってくれ。全部押し留めたのは、こいつだ。今回復する。」


 ――ヒール

 創夜はボロボロのセリアに回復魔法をかける。しかし、服は復元できない。


 ギアは静かに車へと変形し、

 まるで町を見守る騎士のように佇む。


 夕陽が差し込み、セリアの頬を照らした。


「ねぇ、創夜……私も、あなたたちと一緒に行っていい?」


「来るか?、ただし、魔力の暴走はもうナシだ。」


「ふふっ、約束は……できないかも♡」


 挑発的に微笑むセリア。

 新たな仲間を迎え、創夜たちはギアに乗って――

 拠点の冒険者ギルドへと帰路を進んでいった。

あとがき:

キャラクターイメージ:セリア

セリアは、夜明けと夕闇が交錯する幻想的な古代都市を、高台から見下ろしていた。彼女の存在そのものが、この光景を支配する唯一の魔力であった。


長く豊かな紫紺の髪は、まるで夜の帳を凝縮した銀河のように背中に流れ落ち、風にたゆたうたび、星屑の輝きを撒き散らす。その下に覗く翡翠色の瞳は、遥か彼方の深遠な秘密を湛え、瞬き一つで世界を変えてしまいそうな力強い光を放っていた。


彼女の身体を包む衣装は、深い紺色と黒のレースが織りなす極めてセクシーな魔女の装束。胸元は大胆に開き、豊穣の女神の祝福を受けたかのような生命力が溢れている。肩から羽織るケープは夜空を切り取った布地そのもので、内側には微かな輝きが散りばめられ、その裾が翻るたびに、まるで流星の尾が夜空を走るかのようにドラマチックな軌跡を描き出す。


ウエストから下の装いは、さらに見る者を惑わせる。レースのフリルがあしらわれた極めて短いミニスカートは、彼女の自信と魅力を最大限に引き立てる。そこから伸びるしなやかな脚線美には、セクシーなガーター付きのレースのストッキングが絡みつき、それは神話の彫像の如き完璧な造形美を誇っていた。足元を固めるのは、闇夜の漆黒をまとったハイヒールブーツ。それは、戦場を優雅に踏みしだく獰猛な狩人の足跡を連想させる。


右手に握られた魔法の杖の先端では、紫色の脈動する宝玉が煌めき、その鼓動は、太古の龍の心臓が打ち鳴らす音のように力強い。彼女の内に秘めた圧倒的な魔力を象徴している。セリアが立つ円形の台座には、古代の魔法陣が青く発光し、彼女こそがこの場所、この世界を統べる危険な美しさを纏った魔女であることを静かに宣言していた。彼女の全身から放たれるオーラは、夜空を支配する紫の龍の如き、有無を言わせぬ威厳に満ちていた。

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