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転生したら無職で追放されたけど、実はチートだったので、とりあえず、魔王というやつをこの目で確めて来ます  作者: 真柴 零
バベルの塔編

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ep.23 バベルの塔 八階 機械の試練「鋼鉄巨人タロス」

転移陣が光を放ち、創夜たちは重力の感覚が消える中、次の空間へと吸い込まれた。

目を開けた瞬間、そこは――鉄と雷鳴の世界だった。


天井も地面も存在しない。

代わりに無数の浮遊する金属の島が、雷を伝いながら互いに衝突と離反を繰り返している。

空気は焦げた鉄の匂いに満ち、常に雷の音が響いていた。


エジスが手首の装置を操作し、即座に分析結果を伝える。

「ここは“鉄と雷の空洞”。エネルギー密度は通常の二十倍以上。

 この層の守護者は――《タロス》。機械仕掛けの巨神です。」


次の瞬間、空洞全体が低く唸った。

まるで空そのものが金属を擦り合わせたような重音。


雷が落ちる――。


その中心から、鋼の巨人が立ち上がった。

全高五十メートルを超える、神話級の機械兵。

身体は古代文明の呪術金属で構成され、目の奥では青い光が脈動していた。


エジスが息を呑む。

「……私たちの科学でも、あんな構造は不可能です。

 これは、命を模した“無機の進化”。」


創夜が前に出る。

「なら、俺たちは“生きてる意味”を見せるだけだ。」


タロスが腕を振り上げる。

音速を超えた衝撃波が走り、浮島が粉砕される。

リンが飛び出し、渦巻く雷気を纏って拳を突き出した。


「壊すなら、壊してみるアル!」


金属と龍気がぶつかり合い、爆音が轟く。

だが、タロスの装甲はびくともしない。

逆に反射した衝撃でリンが吹き飛び、鉄の島を三つ貫通して止まった。


「なっ、固すぎる……!」


セリアが詠唱を開始し、炎の柱を放つ。

「《メガ・フレア・スパイラル》!」


しかし、炎はタロスの体表に吸収され、変換エネルギーとして再構築される。

熱が雷に変わり、タロスの掌から放射状に放たれた。


「うわっ!? 魔力を……“利用”してるの!?」


ミーナが空間を滑るように回避しながら、呪符を展開する。

「じゃあ、精神干渉で――!」


だが、タロスには“心”が存在しない。

その干渉波は、何も引っかからず虚空に消えた。


創夜が歯を噛みしめ、雷剣を握る。

「こいつ……本当に“命”がないのか?」


――タロスが応じるように、胸部が開く。


中には、青く輝くコア。

その内部には無数の機械の心臓が脈打ち、同時に無数の声が響いていた。


《命とは、効率。感情は誤差。支配なき秩序こそ、完全。》


「……そうか。

 お前は“心”を否定してるんだな。」


雷が爆ぜる。

創夜の瞳が蒼白に光り、雷の気が全身に走る。


「じゃあ――人の“非効率”ってやつ、見せてやるよ!」


瞬間、雷の翼が創夜の背中から広がった。

地を蹴ると同時に、一瞬で巨人の顔面へ突進。


タロスの拳が迫る――が、創夜は消えた。

上空に現れ、稲妻を纏った剣を連撃で叩き込む。


「《ヴォルト・ドライブ・テンブレード》!」


雷の斬撃が連鎖的に炸裂し、巨人の装甲を削っていく。

だが、そのたびにタロスは自己修復を行い、亀裂を再構築していく。


リンが追撃に加わり、空中から回し蹴り。

「壊れても直るアル!? だったら全部粉砕するネ!」


セリアとミリィも魔法で支援。

火と風、氷と雷――七属性が交錯し、

まるで世界そのものが爆発しているかのような光景が広がる。


しかし、タロスは止まらない。

金属の巨体が腕を広げ、電磁衝撃を放つ。

その威力は、空洞の島をいくつも崩壊させるほど。


エジスが咄嗟にバリアを張る。

「下がって! このままじゃ、全滅する!」


創夜は一歩も引かない。

「――いや、まだだ。」


雷が創夜の剣を伝い、形を変える。

それは炎と氷を併せ持つ“七色の刃”。


「命ってのは、壊れても、何度でも立ち上がることだろ。

 それが、機械にできるか!」


空間が震えた。

雷と炎が交錯し、天へと突き上がる。


創夜が叫ぶ。

「《アルティメットブレード・カスケード》――!」


星のような刃が無数に生成され、上空を覆い尽くす。

その数、千を超える光の剣。


「これが、“生きてる意志”の数だ!!」


一斉に落ちる光。

雷鳴が空洞を満たし、タロスの装甲を貫き、内部から光が溢れ出す。


巨体がひび割れ、青いコアが砕けた。


最後の瞬間、タロスの声がかすかに響く。

《……誤差……に、意味が……あった……か。》


崩壊した巨人の残骸が、静かに金属の雨となって消えていった。


エジスが静かに呟く。

「命とは、“不完全”を恐れないこと……。

 それが、この階層の答えですね。」


創夜は剣を下ろし、深く息を吐いた。

「そうだな。機械にだって、きっと心はある。

 けど、それを選べるのは――生きてる奴だけだ。」


雷の空洞が静まり、足元に転移陣が現れる。

新たな光が、彼らを次の試練へと導いていった。


――第八階層《タロス:機械の試練》、突破。

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