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転生したら無職で追放されたけど、実はチートだったので、とりあえず、魔王というやつをこの目で確めて来ます  作者: @SsRay
精霊の国編

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ep2.精霊の国編 瓦礫の城と、籠の妖精

 激しい光と強烈な重力に引き裂かれ、意識を失った創夜が次に目覚めたのは、冷たい石床の上だった。

「……っ」

 全身を覆う激痛に顔を歪ませながら、創夜はなんとか立ち上がった。辺りは薄暗く、埃の匂いが鼻をつく。見上げれば、天井のほとんどは崩れ落ち、星の光すらすでに飲み込まれたような闇夜が覗いている。

(どうやら、今度は石造りの建物の中みたいだな)


 足元には、瓦礫や砕けた彫像の破片が散乱している。ここは、かつて栄華を極めたであろう城の、見る影もない廃墟だった。


「セリア! リン! ミーナ! ミリィ!フィーリア!」


 創夜は思わず声を張り上げたが、返ってくるのは虚しい反響だけだ。


 仲間たちがバラバラに転移させられたことは、容易に想像できた。創夜は、状況確認のため、以前から得意としていた広範囲のテレパシーを、即座に発動させた。

『みんな、誰か近くにいるか?応答してくれ!』


 魔法が使えないこの空間で、テレパシーだけは魔法ではない為、発動できる確信があった。

 だが、張り詰めた神経で仲間の意識を探るが、創夜の呼びかけに答える者は一人もいなかった。

(やっぱり、だめか……こんなことなら、どのスキルが魔法なのかしっかりとみておくんだったな、使えるスキルが魔法判定なのか、スキル判定なのか曖昧あいまいなものがある)


 仲間の意識との繋がりが途切れていることが、創夜の胸に重くのしかかる。これほど仲間全員と連絡が取れない状況は初めてで、彼はふと、強い孤独感に襲われた。

「なんだか、寂しいな……」


 創夜はそう呟き、腰にある夜の剣が、ただの鈍色の剣に戻っているのを確認した。

 意を決して、彼はボロボロの城の探索を始めた。床には苔が生え、壁は黒ずんでいる。警戒しながら通路を抜けると、中庭らしき場所に出た。


 その中庭の隅、わずかに光が届く場所に、奇妙なものを見つけた。

 錆びた鉄の鳥籠だ。

 そして、その籠の中には、手のひらサイズの小さな女性が座っていた。背中には薄いはねがあり、銀色の髪が石床に落ちている。


 籠の中にいる彼女の姿を見た創夜は、思わず目を丸くした。

(からかってやるか……)

「……裸?」

 創夜の無遠慮な声に、籠の中の女性——妖精は、ピクリと反応した。彼女は信じられないものを見るかのように、創夜を見上げる。

「ま、まさか、人間に私の姿が見えるなんて……!」


 妖精は途端に顔を真っ赤にして、籠の中で大声を上げた。

「といいますか! 服、着てます! ちゃんと、ちゃんと着てますよーだ!」


 怒り心頭の妖精は、小さな両手を腰に当ててぷいと横を向いた。よく見ると、彼女の体には、ピンクとシルバーホワイトの光るレオタードがしっかりと着せられていた。ピンクとシルバーホワイトのカラーで、勘違いしたらしい。

「ああ、失礼。見間違いだった」

 創夜は慌てて謝罪する。


 妖精は少し落ち着きを取り戻し、ため息をついた。

「驚かせないでよ。私はこの世界に飛ばされて、ずっと閉じ込められていたの! それにね、私はただの妖精じゃないのよ」

 彼女は誇らしげに胸を張った。

「私は、かつて世界を救った勇者パーティの一人だったのよ! ……と言っても、今はただの籠の中の囚われの身だけど!」


 創夜は目を見開いた。

「勇者パーティの……」

「そうよ! だからね、もしあなたが私をこの錆びた籠から出してくれたら、この世界のことを何でも教えてあげるわ」


 創夜は二つ返事で頷き、鍵穴を捻るが、錆びついてビクともしない。彼は夜の剣を鍵に変形させ、籠の扉を開けた。

 籠から解放された妖精は、勢いよく飛び出し、創夜の肩にとまった。

「ありがとう! 私の名前はリリィよ」


「創夜だ。早速だけど、仲間をさがしているんだ。飛空艇でこの国にとんできたんだが、狭い空間で魔力で飛んでいた飛空艇の動力が安定せず魔法が使えない場所に移動したせいで墜落したんだが、いきなりこのボロボロの城に転移させられ、他の仲間も同じように姿を消した」


 リリィは悲しげに首を振った。

「あなたたちが飛ばされた空間……ここは、次元が非常に不安定な場所なの。その場所は昔行ったことがある場所だと思うわ、あなたの仲間たちはおそらく別の次元空間に飛ばされてしまったんだわ」


「別の空間……!」

「ええ。この世界で仲間と再会するのは、簡単なことじゃないわ」


 リリィはため息をついた後、再び城を見渡した。

「それにしても、この城は懐かしいわ。ここは、かつて私のパーティの男の勇者が拠点としていた城よ。今はもう、こんなにボロボロだけど」


 勇者パーティの城。創夜は、この城が過去に繋がりがあることを知り、改めて探索の必要性を感じた。

「なあ、リリィ。この世界で魔法が使えないのは何故だ? そもそも、俺のは魔法じゃないんだが、魔法自体が使えないのはなぜだ?」


 創夜の問いに、リリィの表情が、一瞬で深刻なものに変わった。

「それはね、創夜。この世界を覆う闇の力があまりにも強大で、精霊たちが、闇に堕ちてしまったからよ」


「精霊が……闇に?」

「そう。私たちや、あなたが使っていたような魔法の力の源は、世界の根源たる精霊が司っているの。その精霊が闇の領域に囚われた結果、精霊の加護がなくなった呪文は、全て発動できなくなった。だから、神々の力を持つ武器や、杖だけがわずかに力を維持できているのよ」


 創夜はハッとした。

(なるほど……。魔法が使えないんじゃなく、精霊が闇に堕ちたせいで、精霊が司る呪文の体系そのものが崩壊しているのか……!)


 絶望的な状況であることには変わりないが、創夜は初めて、この世界の法則と、魔法が使えない理由を正確に理解した。


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