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転生したら無職で追放されたけど、実はチートだったので、とりあえず、魔王というやつをこの目で確めて来ます  作者: 真柴 零
バベルの塔編

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ep10.バベルの塔 二階 機械の聖都《ゴレム・シティ》

 巨大な歯車の回転音が、低く、地の底から響き上がる。


 空気が震え、床下を流れる光のラインが一斉に点灯した。


「なっ……!?」

 ミリィが反射的に構える。


 天井から金属片が剥がれ落ち、歯車の山々の奥で、無数の赤い光が灯った。

 それはまるで、眠っていた“都市の瞳”が一斉に開いたかのようだった。


「反応あり! 魔力信号……桁外れ!」

 ミーナの端末が悲鳴のように鳴る。


 次の瞬間、床そのものが動いた。

 街全体が、ゆっくりと――まるで生き物のように――立ち上がる。


「まさか……町全体が“ボス”!?」

 セリアが叫ぶ。


 建造物が腕のように変形し、塔の外壁と融合する。無数の機械の柱が巨大な胴体を形成し、歯車の群れが背骨のように連なっていく。

 その中心、金属の山から浮かび上がった巨大な頭部が、低く唸り声を上げた。


静まり返っていた金属の街が、低く唸るように震え始める。

塔の壁一面が赤く脈動し、天井の歯車群が逆回転を始めた。

中心部から、巨大な影がせり上がる。


「塔の第二守護体――機械聖都ゴレモス、起動を確認。」


創夜が身構える。

「……聖都、だと? 塔そのものが、敵ってことか。」


ミーナが焦りながら叫ぶ。

「魔力反応が……ありえない! 都市全体が一体の生命体よ!」


リンが跳躍し、拳を叩き込む。

だが、拳が触れた瞬間、金属の皮膚が波紋のように揺らぎ、衝撃を無効化。

「なっ……効いてないアル!?前と同じ鈍感アルか?」


セリアが雷撃を放つ。

「《雷槍(ライトニング・スピア)》――!」

 しかし、稲妻は吸い込まれるように敵の装甲に消えた。

「魔力が……吸われてる……!」


---アルティメットブレード!

7つの属性魔法剣を創夜が叩き込むが、傷ひとつ付かない。


「魔法攻撃全て無効なのか。門番のように鈍感だとしても、こいつはボール遊びみたいにできないな。ヘビモスのような空中に上げれない敵とは別物だ。町が敵となっており、どれを攻撃すればいいのかもわからない。」


リンの渾身の拳、セリアの雷撃、そして創夜のアルティメットブレード。


全ての攻撃を機械聖都ゴレモス――その巨大な金属の身体は、波紋のように揺らぐ装甲と、不可解な魔力吸収能力で無効化した。


創夜の脳裏に、ゴレモスの構造解析結果が響く。


「『あらゆる概念を模倣して無効化する』……だが、概念そのものを無効化できるわけじゃない。どこかに物理的な構造の隙間、あるいは制御核があるはず!」


「もう一丁行くアル!」


リンが再び跳躍。その全身を龍族の鱗のような光が包み込み、高速回転からの蹴りをゴレモスの左肩部


――巨大な歯車が集中するブロックに叩き込んだ。


ドゴン!


衝撃音は響くが、ゴレモスの巨体は微動だにしない。リンの足が触れた箇所は、瞬時に黒い煤のようなもので覆われ、衝撃が熱エネルギーとして分散吸収されたのだった。


「クソッ、左肩もダメ!」リンが舌打ちする。


創夜の猛攻:魔法剣の雨


「なら、物理的な飽和攻撃で、一時的な構造のオーバーロードを誘発する!」


創夜は瞬時に、両手を天に掲げる。


「皆、下がれ!取って置きのやつ行くぜ!」


無詠唱で、創夜の周囲の空間が歪み始める。青、赤、緑、黄、紫、白、黒……七色の魔力を帯びた無数の剣が、まるで夜空の星々のように出現した。


「《七色の属性剣アルティメット・ブレード――飽和展開サチュレーション・アタック》!」


創夜が指を振り下ろすと同時に、数百本にも及ぶ魔法剣の群れが、一斉にゴレモスの巨体めがけて殺到した。狙いは、特にその巨大な胸部の中央――塔の外壁が融合し、最も強固に見える部分だ。


キン!キン!キン!バチン!バチィン! 


まるで豪雨のような金属音。光と爆発が次々と炸裂するが、ゴレモスの装甲はびくともしない。剣が当たる度に、その金属の皮膚がまるで水面のように揺らぎ、剣の持つ魔力も運動エネルギーも、全てが霧散していく。


「チッ……やはり、模倣と吸収の範囲が広すぎる。概念を理解しているのか?」創夜は焦燥を隠せない。


ゴレモスの反撃とエジスの防御


ゴレモスが応えるように、背骨のように連なる歯車の群れが、不規則かつ超高速で回転を始めた。

直後、無数の機械の柱の隙間から、圧縮された蒸気と魔力の混合体が一斉に噴射された!


それは太い光線のようであり、同時に広範囲の飽和攻撃でもあった。


「来るぞ!ゴレモスの《聖都の咆哮メトロポリス・ブラスト》!」


「やっば!こんなの、絶対避けられないよ!」ミーナが叫ぶ。

ミリィの未来視が危険を告げる。

「皆!回避できないのが来るわ!」

エジスは合図もなしに準備をする。

「はい!任せて!」


遠く離れていた、仲間全員を創夜が瞬間移動でエジスの後ろに集めた。


「エジス、援護はいるか?俺もバリアくらいならはれるぜ。」


「大丈夫、前は油断しただけで、あんなのへっちゃらだよ。風圧ひとつ通さない。」


後方で待機していたエジスが、両手の聖なる杖を交差させる。


「《絶対防護陣アブソリュート・バリア――堅牢なる聖壁パラス・フォートレス》!」



ドォオオオオン!!



パーティを包むように、純粋な光のドームが一瞬で展開された。ゴレモスの咆哮がバリアに直撃すると、空間そのものが軋むような衝撃が走る。



バリアは激しく閃光を放ち、ひび割れが走るが――かろうじて、光線は防がれた!



「っ……さすがエジスね。でも、これじゃあ攻撃ができないよ!このバリアから外に出たら危険よ!前に出れないわ」ミーナは唇を噛む。


ミリィなら、行けると悟った。創夜はミリィを敵の目の前の攻撃範囲の影に瞬間移動で移動させる。


その間、最前線にいたミリィは、未来視の感を頼りに攻撃の隙を狙うが隙がなく動けないでいた。

それをみた創夜は瞬間移動でミリィを回収するがバリアの範囲から少しずれてしまった。


ミリィはとっさに光のバリアの端、わずか数ミリの隙間を、天使の羽根をかすらせながら軽やかに駆け抜ける。ビキニアーマーに傷一つないまま、回避を成功させた。


「ふぅ……間一髪。でも、今の攻撃で左胸の装甲の動きが一瞬だけ不規則になったわ。熱エネルギーの吸収が追い付いていない、制御系の負荷箇所よ!」


ミーナとセリアの追撃



「今の内に頭部を狙うよ!いくよ、セリア!」ミーナが叫ぶ。


ミーナの目が紫色の光を放ち、その手から悪魔的な紫色の雷が迸った。


「《魔雷まらい――ヘルズ・スパイク》!」


「私も続くわ!《闇吸雷ダークネス・ライトニング》!」


二人の協力攻撃は、ゴレモスの塔の外壁と融合した巨大な頭部めがけて放たれる。この部分は、他の装甲と異なり、無数の監視カメラやセンサーが集中しているように見えた。


ザシュ!ズドォン!


紫と黒の雷が頭部を穿つ。しかし、その瞬間、雷が当たった箇所を中心に、周囲の金属が瞬時に黒いドロドロの液体のようなものに変化し、雷のエネルギーを包み込み、消滅させた。


「ちょっ、マジで効かないんだけど!ウチらの攻撃まで、変形して飲み込むなんて、えげつない!」ミーナが悔しがる。


創夜の再始動と弱点への確信

「頭部も、胸部も、左肩も、全て『模倣』によって無効化される……」


創夜は立ち止まる。


「待てよ。模倣、吸収、分散……そのどれもが、一瞬のタイムラグを伴う。ミリィの言った通りだ。奴は防御行動の優先順位と処理速度が桁外れに高いだけ。模倣不可能な現象、あるいは処理しきれない箇所を同時に叩けば――」


創夜は再び、無数の七色の剣を召喚する。しかし、今回は攻撃ではない。


「エジス!再びバリアを張れ!今から、全エネルギーを胸部に叩き込む!リン、左肩!セリア、ミーナは『頭部と思しき部分の、一番左端のセンサー群』を狙え!一点集中だ!」


「まだ、ゴレモスの装甲を破れない!しかし、弱点は必ずある!」


創夜のフルオーラ状態でも動けないほどの衝撃波、ゴレモスには何一つ効果がない。


「いいか、皆!一斉攻撃で、奴の処理能力をオーバーロードさせる!そして、その一瞬の隙に、模倣できない概念を叩き込む!」


創夜の言葉に、リンの闘気が一層高まる。セリアとミーナも紫と黒の魔力を収束させた。


「リン、行くぞ!」


《《龍王乱舞ドラゴン・キング・ラッシュ》!


リンが地面を蹴り、ゴレモスの左肩の歯車群めがけて超高速で肉薄する。全身から放たれる闘気が巨大な龍の形をとり、ゴレモスの装甲を削ろうと巻き付いた。


ドゴンッ!ズォォン!



龍王の突進が命中。ゴレモスの左肩は、今度こそ大きく軋む。熱吸収の煤が拡散する前に、リンは次々と連続攻撃を繰り出した。



「ヌルいアル!これが龍族の力アルよ!《百連破龍拳ひゃくれんは・りゅうけん》!」



拳の一発一発が音速を超え、衝撃波がゴレモスの巨体に連続して炸裂する。しかし、装甲の揺らぎは大きくなれども、深紅の傷はつかない。



創夜は、その間に胸部への飽和攻撃の準備を整える。


「エジス、バリア継続!セリア、ミーナ、全力で左のセンサー群へ!」



「了解!この娘、ムカつくから、ぶっ壊してやる!」ミーナが笑う。



「《魔雷ヘルズ・スパイク》、最大出力!」


「《闇吸雷ダークネス・ライトニング》、圧縮!」


紫と黒の螺旋状の雷が、ゴレモスの頭部左端の、特に監視カメラが集中する一点に収束し、叩き込まれる。


「創夜!まだわ、センサー群がドロドロの液体に変わって、吸収を始めている!」セリアが叫ぶ。


「間に合うか!」


創夜は素早く片手で契約のジェスチャーをとる。


「《グラビティ・ギア:飽和召喚》――来い、鎧武者アーマード・ガーディアンズ!」


創夜の背後、空間が裂け、重装甲に身を包んだ無数の『鎧武者アーマード・ガーディアン』が出現する。その数は一気に数十体。


「全機、胸部中央一点へ!《特攻デモリッション――無概念の突撃ノン・コンセプト・アタック》!」


鎧武者たちは、武器も持たず、ただその堅固な体をゴレモスの胸部めがけて突撃した。彼らの攻撃には、魔力も闘気も込められていない。純粋な『物理的な質量と速度』だけだ。


キン!キン!ゴリッ!


剣の雨とは違い、無数の物体が一点に集中する物理的な衝撃は、ゴレモスの防御システムに一瞬の『戸惑い』を生じさせた。


「創夜!一瞬、胸部中央の装甲の波紋が乱れた!」ミリィが未来視で叫ぶ。


「今だ!《属性融合剣アルティメット・フュージョン・ブレード――光と闇の二元論デュアルティ・アタック》!」


創夜の右手に、黒い炎のような闇の魔力と、純粋な光の魔力が螺旋状に絡み合った、一本の巨大な魔剣が出現する。これは、最も模倣が難しい『相反する概念の共存』を具現化した魔法剣だ。


ゴレモスの胸部、鎧武者の突撃で防御波紋が乱れた一点へ、創夜は全てを乗せて叩き込んだ。


ゴキンッ!


初めて、甲高い金属の衝突音が響いた。

光と闇の二元論が、吸収されることなくゴレモスの装甲に数センチ食い込む!


「効いた!…が、浅い!」創夜は歯を食いしばる。

食い込んだ部分から、黒い煤が瞬時に発生し、魔力の吸収と模倣による反発力が創夜を吹き飛ばす。


その瞬間、ゴレモスの背骨の歯車群が、再び恐ろしい唸りを上げて逆回転する。


「しまった、反撃が来る!しかも、今度は広範囲よ!」ミリィが叫ぶ。


ゴレモスはその巨体を揺らし、無数の機械の柱から、今度は蒸気ではなく、圧縮された純粋な重力場を一斉に噴射した。


「《聖都の圧殺メトロポリス・クラッシュ》!」


空間がグニャリと歪み、地表にいるパーティ全員に、巨大な星が落ちてきたかのような重圧が襲いかかる。


「うそ、重力が…!体が動かない!」ミーナが叫ぶ。


「くっ……《超重力耐性スーパー・グラビティ・レジスト》!」創夜が呻きながら、全員に解除魔法をかける。

しかし、フルオーラ状態で創夜の重力魔法解除があっても、動きが鈍くなっていた。


創夜は、重圧の中でリンの前に立つ。


「俺が行く。リン、お前は動けるな?そのまま左肩を叩き続けろ。エジス、バリアの維持は頼む。俺とリンはあまり気にしなくていい、他の皆の援護を頼む。」


「ガッ……!この程度の重さ、龍族には関係ないアル!」リンは地面を足で踏みつけ、重力場に抗って再び飛び上がった。


創夜は、全身から金色のオーラを噴出させ、重圧を跳ね返す。


「《グラビティ・ギア:高速召喚》!特攻用、超大型召喚獣!」


創夜の頭上に、巨大な空間の裂け目が出現する。


「来い!《星砕きの剛猿スター・クラッシャー・ゴリラ》!」


裂け目から、巨大な毛むくじゃらの腕が出現。その体はゴレモスに匹敵するほどの大きさだ。重力場をものともせず、剛猿はゴレモスの巨体めがけて、胸を叩きながら突進した。


「全エネルギーを、純粋な衝突に変換!奴の『模倣』の範囲外を、質量と暴力で突破する!」


剛猿の咆哮が、機械の街に響き渡る。

ゴレモスと剛猿の、巨大な生物と機械の衝突は、避けられない。


ゴレモスの重力場が地面を押し潰す中、創夜が召喚した《星砕きの剛猿スター・クラッシャー・ゴリラ》が、その巨大な質量と純粋な膂力をもって突進した。


「ウオオオオオオッ!」


剛猿の全身を覆う毛皮が重力場に逆らい逆立ち、その一撃はまさに『星を砕く』という名に恥じない、概念を超えた『暴力』そのもの。


ドガアアアアアン!!!


衝撃音は、これまでの全ての戦闘音を飲み込み、街全体を襲う巨大な津波のようだった。

剛猿の分厚い拳がゴレモスの胸部中央

――創夜の『属性融合剣』がわずかに食い込んだ箇所を直撃する。


ゴレモスの巨体が、初めて後退した。


その距離、わずか数十メートル。しかし、町が丸ごと動いたほどの衝撃だ。


「やった!ゴレモスが動いたアル!」リンが歓喜の声を上げる。彼女も重力場の中で左肩を叩き続けていた。


しかし、剛猿の拳が触れた瞬間、ゴレモスの装甲はまるで磁石のように剛猿の拳を吸着。瞬時に黒い煤が巨大な拳を覆い、エネルギーの吸収と、模倣による反発力を生み出した。


「グアアアア!」剛猿が苦悶の声を上げ、拳を離す。


その拳の表面は、高熱で溶けたかのようにドロドロになり、召喚体である剛猿の魔力構造が急速に崩壊していく。


「チッ、やはり、純粋な質量も、時間差で模倣・吸収するのか!」創夜は舌打ちする。


剛猿は、役目を終えたとばかりに、光の粒子となって消滅した。


ゴレモスは、剛猿の攻撃でわずかにバランスを崩したが、その瞳――無数の赤い光――はすぐに敵意に満ちた輝きを取り戻す。


そして、全身の歯車、塔の外壁、機械の柱…構成する全ての部品が、同時に極限まで魔力をチャージし始めた。


「まずい!奴は全身のエネルギーを飽和させている!剛猿の攻撃が、奴の防御を一時停止させた代わりに、最大出力の反撃を誘発した!」ミリィの未来視が絶望的な光景を映し出す。


「来るぞ!これは、さっきの《聖都の咆哮メトロポリス・ブラスト》の比じゃない!完全に空間を消し飛ばすレベルだ!」セリアが血相を変えて叫ぶ。


ゴレモスの巨大な頭部、胸部、肩部…無数の砲口めいた穴から、白く輝く純粋な魔力エネルギーが収束していく。


「《聖都の滅光メトロポリス・カタストロフ》!!」


白い魔力光線が、広大な範囲を一瞬で焼き尽くすため、放たれる。


「エジス!頼む!」創夜が叫ぶ。


「はい!」


その直後、創夜は重力場をものともせず『瞬間移動テレポート』を連発し、地面に這いつくばっていたミリィ、ミーナ、セリア、そして最前線で戦っていたリン、さらにバリアを張っていたエジスまでも、光線が届く直前に、エジスの定位置だった後方空間へと一斉に集めた。


「ふう……危なかった!」ミーナが息を呑む。


創夜は、その全員をエジスの後ろへテレポートさせた後、自身だけが、ゴレモスの目前、光線の直撃コースに立つ。


「俺は、お前を倒すために来た!」


創夜の全身から、金色のオーラが噴出。それはまるで、太陽が爆発したかのような光量だ。


「模倣、吸収、全てやってみろ!模倣しきれないほどの概念の飽和で、お前のシステムを焼き切る!」


創夜は、両手を広げ、天に、そして大地に、魔力を解き放つ。


「《七色の属性剣アルティメット・ブレード――究極の飽和アポカリプス・サチュレーション》!」


青(水)、赤(炎)、緑(風)、黄(土)、紫(雷)、白(光)、黒(闇)の七色の魔力が、創夜の周囲の空間を砕き、次元を跨いで呼び出された無数の剣が、ゴレモスの全身を取り囲む。


その数、数億本!


ゴレモスの《聖都の滅光》が放たれ、白い絶望的な光が空間を飲み込む直前、創夜は叫んだ。


「全方位・全概念・同時貫通(オールディメンション・オールコンセプト・サイマルテイニアス・アタック)!!」


刹那、数億本の七色の魔法剣が、ゴレモスの巨体を、ありとあらゆる角度から、同時に突き刺した!


キンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!



それは金属音ではない。あまりにも多すぎる剣が装甲を打ち、魔力が炸裂し、吸収と分散の処理が限界を超えた時に発する、処理系の悲鳴だった。


白い《聖都の滅光》の直撃と、数億本の七色剣の飽和攻撃。


二つの超絶的なエネルギーの衝突が、ゴレモスの巨体を光の柱で包み込んだ。


ゴレモスの装甲は、防御の波紋すら描くことができず、ただ剣に貫かれ、魔力を吸収する前に次の剣に貫かれ、防御概念が完全に崩壊。


ドシュ!ドシュ!ドシュ!



無数の剣が、ついにゴレモスの機体にあたっているがやはり、効果はない。


光が収束し、煙が晴れる。


ゴレモスの巨大な金属の身体は、数十億の剣の穂先で覆われた、まるでハリネズミのような異様な姿に変貌していた。


全ての赤い瞳の光が消え、全身を構成していた歯車の回転が停止する。


巨大な機械の聖都は、わずかな煙を上げながら、ゆっくりと沈黙していった。


「…………」


後方で防御体制を崩さずにいたリンが、息を呑んで呟く。


「……終わったアルか?」


創夜は警戒を解かず、ゴレモスから放たれた『聖都の滅光』を相殺しきった疲労の色を浮かべながらも、前を見据える。


「予想通りなら、魔力を吸収して吐き出していたからな。吐き出してるときに高出力で叩き込めばオーバーヒートするはずだ。」


創夜は、その停止した巨体が崩れ落ちないことに違和感を覚える。


「終わったはずだが、消えないってのは終わってないのか!?」


緊張が走る中、パーティの最後尾で聖なる杖を握りしめていたエジスが、創夜たちに聞こえないほどの小さな声で、そっと息を吐いた。


「(ふふ……本来、機械聖都ゴレモスの制御核は、その構造解析によって『模倣の概念そのもの』を無効化する力で破壊する必要があったのに……)」


エジスは、数億本の剣が突き刺さったゴレモスの姿を見上げ、静かに微笑む。


「(あんな、物理的な飽和攻撃と概念の同時多発テロで、処理能力を単にパンクさせるなんて……)」

彼女は少しだけ目を細め、目の前で緊張を続ける仲間たち――特に創夜の背中を見つめた。


「(本当にお兄さんたちって、ルールに囚われなくて、おもしろいなぁ)」


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