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転生したら無職で追放されたけど、実はチートだったので、とりあえず、魔王というやつをこの目で確めて来ます  作者: @SsRay
バベルの塔編

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ep18.バベルの塔編 エピローグ

 青い空。

 白い雲。

 潮風に混じる草花の匂い。


 飛空艇(アストラル・ブレイカー)は静かに海岸沿いの丘へと降り立った。

 そこは、どこまでも広がる草原と、黄金に光る海が見渡せる場所――

 かつて彼らが旅を始めた、『自分たちの世界』。


 創夜は舵輪から手を離し、しばらく言葉を失った。

 潮の音がやけに懐かしく響く。

「……帰ってきたんだな」


 小さく呟いた声に、仲間たちが顔を向けた。

 ミリィがそっと目を細め、海のきらめきを見つめる。

「空気が……やさしいね」


 セリアが深く息を吸い込み、胸に手を当てた。

「魔力の流れも穏やか。これが『私たちの世界』……」

 リンが腰に手を当て、胸を張る。

「なら、宴会アル! 今夜はお祝いアルよ!」


 その声に、みんなが笑った。

 笑い声が丘の上を渡り、空の青さに溶けていく。

 ――そして数時間後。


 丘の上にはテントが張られ、長い木のテーブルが並んでいた。

 香ばしい肉の匂いが漂い、夕陽の中でグラスが金色に光る。

 ミーナは鼻をひくひく動かして、思わず歓声を上げる。

「うわぁ〜! ごはんの匂いするー! お腹すいたぁ!」


 リンは拳を握って炭火を操り、セリアは浮遊魔法で皿を並べ、

 ミリィは笑顔で盛り付けを整えていく。

 誰もが笑顔で、戦いの緊張も焦りもここにはなかった。


 創夜はマグカップを片手に座り、焚き火の明かりに照らされた仲間たちを見渡す。

「いいな。こういうの……久しぶりだ」


 セリアが微笑み、彼の隣に腰を下ろして自分のグラスにワインを注いだ。

「英雄の帰還には乾杯が必要ね」


 皆、自分の好きな飲み物をグラスに注ぎ、ミーナが嬉しそうにマグを掲げる。

「勝利を祝って!」

「かんぱーい!」

「かんぱーいアル!」

「おめでとう」

「改めて、おめでとうみんな」


 焚き火の火花が夜空に舞い上がる。

 それはまるで、これまでの旅路を祝福する星屑のようだった。


 笑い声とともに、静かな風が吹く。

 それはまるで、神々の世界からの『祝福』のようだった。


 しばらく食事が続いたあと――

 肉の焼ける音、器に注がれるスープの香り、笑い声。

 満天の星の下で、彼らは肩を並べて語り合っていた。


 創夜がふと、夜空を見上げながら呟く。

「そういえば――アポロンの神殿って、『なんでも願いが叶う』場所らしいぞ」

 ミーナが目を丸くする。

「えぇっ!? そんなの先に言ってよ! クッキー食べ放題ってお願いしたのに!」

 リンが肉を頬張りながら笑う。

「わたしは、肉が永遠に焼け続ける世界がいいアル!」

 セリアが呆れたようにため息をつきつつ、ワインを傾ける。

「ふふ、あなたたちらしいわね。私は……知識の書庫を願ったかも」


 ミリィはスプーンを回しながら微笑む。

「でも、結局のところ……こうしてみんなで笑ってるのが、一番の願いだったのかもね」

 創夜は少し黙って、微笑んだ。

「……ああ。結局、俺も同じだ」


 その瞬間、焚き火がパチリと弾け、

 炎の向こうで、仲間たちの笑顔が温かく揺らめいた。

 創夜がふと、リンの手元に目を向けた。

「リン」

「ん? どうしたアル?」

「そのガントレット、ちょっと貸してみてくれ」

 リンは首をかしげながらも、素直に外して渡した。

 創夜はそれを手に取り、目を閉じる。

 七色の光が一瞬だけ走り、金属がやわらかく形を変えていく。


 セリアが目を丸くする。

「ちょっと、創夜……まさかまた、改造を?」

 創夜はにやりと笑った。

「まあ、ちょっとした『遊び』だよ。俺の変形する夜の剣をちょっと変化させてリンの装備に付けただけだからもとにもどせるぞ」


 光が収まると――

 そこに現れたのは、猫の肉球を模したガントレット。

 ぷにぷにと柔らかそうな素材が輝き、先端だけほんのりピンクに光っている。


「……なにこれ」

 リンが眉をひそめる。

 創夜は真顔で言った。

「似合ってる。使ってみてくれ」

 リンは一瞬沈黙してから、口をとがらせた。

「なんだか……かっこわるネ!」


 その瞬間、全員が吹き出した。

 ミリィが肩を叩いて笑う。

「リン、それ最高だよ!」

 ミーナは地面を転げながら笑っている。

「にゃんこパンチ! にゃんこパンチ!」

 セリアも珍しく腹を抱えて笑った。

「創夜、それ本気で作ったの!?」


 創夜はマグを傾けながら、いたずらっぽく笑った。

「戦いは終わったんだ。たまにはこういうのもいいだろ」

 リンはしぶしぶ手にはめ、軽く拳を振る。

 すると、肉球の先から小さな火花が『ぽんっ』と弾けた。


「……え、これ魔法出るアル!?」

 創夜がうなずく。

「当たり前だ。属性変化もできる。炎も氷も雷も――ただし、かわいい音が鳴る仕様だ」


「にゃっ」


 拳を振るたびに小さく鳴る可愛い音。

 ミーナが転げ回る。

「リンにぴったり〜!」

 リンは顔を真っ赤にして叫んだ。

「もう!創夜のばかーっ!!」

「これが危険人物ね、本当に退屈しないわ、フフフッ」


 しかしその声にも笑いが混じっていた。

 風が丘を吹き抜け、空は茜色に染まる。

 遠くで波の音が優しく響き、空には星が瞬き始める。


 創夜は空を見上げ、静かに呟いた。

「……あの世界でも、この世界でも。結局――仲間と笑える時間が、いちばん大切なんだな」


 セリアが隣で微笑む。

「そうね。あなたの言う『夜』って、光を包むためにあるのかもしれないわ」


 ミリィが杯を掲げた。

「じゃあ――もう一度乾杯しよう。『ここにいる奇跡』に」


 全員の声が重なる。


「――乾杯!」


 夕陽が沈み、夜が訪れる。

 だがその夜は、どこか暖かく、やさしかった。


 そして丘の上には、仲間たちの笑い声がいつまでも響いていた――。

 闇の混沌との戦いが終わり、創夜たちは穏やかな休息の時間を過ごしていた。仲間たちの絆は一層強固になり、誰もが無我の境地に至る絶対的な力を手に入れた今、次の脅威に備える必要があった。


 ある日の午後、創夜は神々から授かった『夜の剣』を握りしめ、仲間たちに声をかけた。


「ちょっと、海の方まで行ってくる。すぐに戻るよ」


 ミーナが心配そうに尋ねる。

「どうしたの、創夜?何か探しにいくの?」


 創夜はニヤリと笑う。

「いや、ただの試し切りだよ。なんにでも変形できるこの剣を、もっと遊んでみようと思ってな」


 セリアは優雅に椅子に座りながら、創夜の黒い服を見つめて言った。


「まぁ、最強になったあなたでも、たまにはお一人様の時間が必要ってことね。ただし、海を壊さないようにね、創夜、男の子は本当に、ねっ」


「怪しい動きを検知したわ、こっそりついていこうかしら」フィーリアはアストラルブレイカーの外から見えない装置を擬装した布をかぶりこっそり創夜をつけた。


 そうして、創夜は誰もいない静かな海岸へとやってきた。目の前には、どこまでも広がる青い海が波打っている。


「さて、遊んでみるか。最強の俺にふさわしい、最強の武器はなんだ?」


 創夜は夜の剣を構え、意識を集中した。夜の剣は漆黒の粒子となり、その形を変えていく。

 最初に試したのは、遠距離攻撃だ。


 ――夜の剣・変形アロー


 剣は巨大な漆黒の複合弓へと変化した。創夜が弦を引くと、闇を凝縮した矢が生成される。彼は無我の境地の一端を使って弓を引き絞り、海に向かって放った。


「アロー・ストーム!」

 弓を天に打ち上げると、空中に魔力で形成された無数の矢が生成され、広範囲にわたって雨のように降り注ぎ、敵の集団を制圧する技だ。


 漆黒の矢は音もなく海面を貫き、遥か水平線の彼方で水柱を上げた。


「ふむ、威力は十分だが、発射までのタイムラグが気になるな。一瞬で全てを終わらせる俺のスタイルには合わない」


 ――夜の剣・変形ランス


 創夜は一気に加速し、地を這うように疾走しながら突きを放つ。


「呪槍・赤雷なる貫穿(ゲイ・ボルグ)!」

 渾身の力を込めて槍を天高く投擲する。槍は赤い雷光を纏い、目標を追尾するかのように上空から降り注ぐ。

 槍は時空を切り裂きながら進み、海面に巨大な渦を作り出す。


「あ、投げちまった!」

 創夜は急いで渦の中心のヤリを回収し、元の位置に戻る。


 創夜はさらに試行錯誤する。

 ――夜の剣・変形キャノン


 夜の剣は、肩に担ぐ巨大な漆黒のレールガンへと変化した。海に向かって放たれた一撃は、光と闇の混ざったビームとなり、遥か彼方の空を切り裂いた。


「破壊力はすごいが、打つまで時間かかるな。バスケでいうと、パス貰って投げるくらい効率が悪い。高速移動からの抜刀術の方が早い」


 ――夜の剣・変形(二丁拳銃)!

 そして、創夜が最後に試したのは、二丁拳銃だった。


 両手に収まった二丁の拳銃から、漆黒の弾丸が連続で海に向かって放たれる。連射は、弾丸の雨となって海を打ちつけた。


「フン、スピードはいいが、一点集中の威力が足りない。いくらチートと言っても、攻撃範囲が限定されすぎる」


 創夜はさらに試行錯誤する。

 ――夜の剣・変形サイズ


 夜の剣は、巨大な漆黒の大鎌デスサイズへと変化した。創夜はそれを低く構えると、眼前の空間を切り裂くように一気に振り抜く。


虚空断裂ヴォイド・スライサー!」


 鎌が通った軌道上には、一瞬、夜の闇を切り取ったかのような深淵の黒い亀裂が走った。それは物理的な斬撃ではなく、空間そのものを断ち切る一撃。亀裂の先にあった波打ち際の岩礁は、鎌が触れる前に、まるで消しゴムで消されたかのように無音で消滅した。


「空間ごと断ち切る威力は凄まじい。防御を持つ強敵には切り札になるが、そもそも、俺が釜を降るのはきつい、この曲がった釜を使いこなすやつはどんなやつだよ! 剣でも出せそうな技だよな」


 創夜は考えられる全ての武器を試した後、深い溜息をついた。

 夜の剣は再び、漆黒の夜の剣の姿に戻った。


「やっぱり、俺は剣だな……」


 創夜は剣を鞘に収め、ガントレットへと変形させる。


「剣と、拳にガントレットだな。遠距離系はそもそも、離れたところからわざわざ時間かけて攻撃する前に相手の懐に入ってしまうからなぁ」


 創夜は、遠距離攻撃を試す過程で、改めて自分の『抜刀術』と『殴る』スタイルが、一対一の極限接近戦において最も輝くことを再認識した。


「よし、帰るか。次は仲間たちと合同で訓練だな」


「フフフッ、あれは使えそうな技ね、マギテック・ゴーレムの強化に使えそうだわ」

 創夜は静かに砂浜を後にした。

 この日の海が荒れたことは、当人は何もしらない。



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