3-7 神輿
道の先に複数の気配を感じたエンドが変形を解除すると、リンガが小鬼の種族特性を発揮して先行し周囲の景色に溶け込みながら偵察を行う。
少しすると戻って来たリンガは特に問題は無いと言い、エンドも道を進む。
見えてきたのは小鬼の集団、会議でギリギリに滑り込んできた者達であった。
20人近いその集団は2人一組となり駕籠を担ぎながらゆっくりと進んでいた。
「おーい!」
敵意が無いことを示すべくリンガが手を振って声を上げ先頭を進むと、集団の目線が一瞬鋭く集まる。しかし会議にもいた同じ仕事を受けた探索者と気がつき柔らかなものとなった。
「やあ、大分早く出発したんだね。」
リンガが集団のリーダーに声を掛けると、その小鬼は頷きながら返す。
「協会で何度か見た顔だ、たしかガ族の者か。そちらも随分と早い。我々ラ族のクランは人数も荷物もまた多く時間がかかる。今後は組合長にどやされないよう早めに出発したのだ。」
「そうなんだ。ま、ボクたちは特に理由は無いけど、想定より速く進んだだけだね。」
「ふむ、遅れるよりはいいな。さて、この先はマナが少ない場所が続く。集合の期日までに余裕があるからそちらは迂回して進むといい。小鬼はともかく、そちらの大きい者には応えるだろう。」
リーダーの小鬼はエンドの方を向いて言う。
「いや、心配は無用だ。こう見えて私の腕っ節はからっきしだよ。ただ、マナが少ないところでも問題無く動けるし、体力には自信がある。」
エンドの言葉を聞いて、退屈そうにしていた集団の一人、赤みがかった髪をツインテールにした小鬼が笑いながら指を刺す。
「えー!そんなデカいナリをしてるのに情けなーい!ざーこざーこ、変な種族プゲラッ!」
リーダーの小鬼が凄まじい速さで駆け寄りエンドを指さしていた小鬼の顔面を殴り飛ばすと、ナイフを抜き倒れた顔の横の地面に突き立てる。
「種族の特徴を笑うのは探索者では御法度だ!貴様は我々の種族の名に泥を塗る気か!・・・済まないな、まだコイツはガキなのだ、よく言い聞かせておく。」
「謝罪は受け取ろう。相棒もそんな顔をしないでくれ。」
エンドは無表情で大鉈を握るリンガの頭を軽くポンと叩く。リンガも表情を取り戻すと、鉈をホルスターに戻す。
ふとエンドが周囲を見渡すと、小鬼達が担ぐ駕籠の中でも大きくて綺麗なものに目線を向ける。そこ駕籠には御簾のような部分があり、そこからの目線と交差した気がした。
「ふむ・・・あそこにいるのが噂の男性探索者か。」
小鬼達が途端に殺気づき、エンド達を遮るように展開する。しかし、エンドは物怖じせずに手のひらを向けて話す。
「なに、集団で活動していて男性を補助として連れているという噂話を聞いていただけだ。特に何かしようとは考えてない。」
リーダーの小鬼はエンドの言葉を聞いて暫し考えたが、武器を下ろした。
「・・・人の噂に戸は立てられんか。彼は我々ラ族の至玉、会わせるわけにはいかない。先程の詫びに、私からでよければマナは融通するが?」
エンドは笑いながら首を振った。
「不要だ、我々も別にマナに困っているわけでは無い。こちらこそ安易に触れて悪かった。」
「アイボー、男性の事はみんな敏感なんだからな!さ、行こうか。」
「うむ。」
意外そうな表情のリーダーの小鬼の脇を通りエンド達が小鬼達の集団より先に進もうとしたとき、小さく、しかしよく通る声が響いた。
「ま、待ってください!」




