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3-6 爆走

「チェーンジッ!ドライビングフォームッ」


 エンドが声と共にマナを操作するとマギア・フレームの両腰部の一部が外れて車輪となり、そして分厚いブーツの底からも車輪が現れる。


 エンドは浅い椅子に座ったような、体育座りにも似た格好を取る。そしてマナをこめるとその車輪は回転し、エンド自体が車になったかのように高速で走り出し、そして少し先でターンを決めて元の場所まで戻って来た。


「うん、まぁテストしてるのは何回も見てるから知ってるけど、その掛け声要るの?」

「要る」

「アッハイ・・・いや、アイボーが言いたいなら良いんだけどさ」


「様式美だよ相棒、必要なのだ・・・さぁ、乗ってくれ。」

「たまエー!」


 エンドの腹と膝にあたる部分にシッコが形を変えて座席を形成する。

 リンガは少し恥ずかしげに左右の様子を見ながら跨ると、シートベルトのようにシッコが体を固定した。


「では、出発進行だ!」

「オー!」

「お、おー」


 エンドが有り余るマナで車輪のマギアを動かすと、かなりの速度で道を進んで行く。幾らオーラで身体を強化しても体力的にはずっと走り続けることは難しい。勿論一瞬の加速であれば今のエンドよりも速く動く事は容易だろうが、長距離となると確実にエンドに軍配が上がる。


「エンドはずっとマナで動かしてて疲れない?」


「うむ。ああいや、正確に言えば全く疲れない訳ではないが、歩くよりも尚こちらの方が楽だな。」


 歩くよりも自転車の方が同じ労力でも全然速度が異なる。そしてエンドの体力であれば、疲れると言っても些細なものであり、事実上休憩時間を除けばずっと動かし続けることが出来た。もっとも、これもマナをふんだんに使っており、言い換えれば金を薪のように使っているようなものであって通常は使える代物では無かった。


 とはいえ、このマギア・フレームもここまで完成するにはそれはりの紆余曲折はあった。

 最初はエンドが移動手段として車のようなマギアは無いのかとコニイに訪ねたことから始まった。

 コニイは古い文献の中にはそのようなものもあったと資料をゴソゴソと漁り、三輪の車の絵を見せる。現在では貴重なマナを使えないので廃れてしまっているが、その設計図は残っていると言う。

 エンドがいるためにマナの問題はないが、いざ作ろうとした時、それって凄く目立つのではないかとシッコに突っ込みを入れられて一度頓挫する。

 しかしアイリスがマギアンは仕事によっては手足の付け替えも行っているとマギア・フレームを見ながら言うと、必要な時にだけ変形できるマギア・フレームに改造しようと盛り上がる。変形や改造という単語は、エンドも何故か心躍るものがあった。

 

 プロトタイプが組み上がり、流石に屋内では試さないためコニイも領都の外に出て人通りの少ない場所を探す。心配になったリンガとアイリスもついて来ており全員で出かけるのは初めてだと誰かが言った。


 実際に動かしてみるとブレーキの効きや車輪の位置や数、マギアの強度などが多く問題に上がる。一度はブレーキと車軸が同時に壊れ、身を投げ出したエンドをリンガが全力疾走して受け止めるような場面もあった。

 漸く形になると、コニイが試しに乗りたいと言い出してエンドに跨る。


「作っておいて何だけどね、男性の下腹部の上に跨るというのも、何だか気恥ずかしいものだね・・・おや、身体が持ち上がってきたが?」


「ドク、あまり上で動かれると、性欲を持て余す。」


「な、何だと!こ、これは助手君の・・・ちょっとレバーを触らせてガハッ!、グヘッ」

「アイボーのアイボーになにすんだ!」

「す、すまない・・・ゲホッ、だが蹴ること無いだろう!?あと酷い下ネタ!」


 気を取り直して動いてみたところ、サスペンションの無さや道の凸凹による体勢のブレが問題として浮上する。


「オロロロロロロッ」


 エンドから飛び降りると木陰でコニイが盛大に嘔吐する。車輪がそこまで大きく無く、地面も舗装されていないとダイレクトに揺れを拾ってしまう。

 さてどうするかという所で、シッコが乗りたいと手を上げ、そしてスライムの体のせいか酔う事も無かった。それを見ていたアイリスが緩衝材として有用ではと意見を出す。また、マギア・フレームも調整を行い変形中はある程度関節が固定されるようになった。

 げっそりしたコニイも好奇心のままに再度挑戦し、スライムのクッションで乗り心地が劇的に改善したことを知る。

 

 かくして完成したマギア・フレームは人目につかないようにエンドが気配を読み爆走する。かなりの距離を進めたが、前方に集団の気配を感じとるのであった。


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