3-3 小休止
軍の方も小休止を入れる事にしたらしく、暇な様子のエンド達にランファがやって来る。
「今日は、リンガとミスタ・・・いえ、エンドさん。あなた方も参加するのですね。」
「ミス・ランファ、私だけ『さん』をつけるのは淋しいでは無いか。呼び捨てにしてほしいね。」
「わ、わかりました。エンド。私的な時間では私のことも呼び捨てで構いません。」
「うむ。公的な場ではどのように呼べば差し障りないかな?」
「階級をつけて頂ければ幸いです。私は軍から少尉の位を授かっています。」
「分かった、ランファ少尉」
エンドが笑いながら敬礼すると、今は休憩時間ですとランファが返す。
「失礼、ランファ。そうだ、私も少しは自由に使える金が出来た。今度食事でもいかがかな?」
「・・・貴方でしたら、資金はどうとでもなるのでは?」
ランファは暗にエンドがマナを換金すればいくらでも稼げることを匂わす。
「はっはっは、必要であれば躊躇しないが、そうでないのであれば自身で働いた金で上手い食事をしたいものだ。」
ランファは虚をつかれたような顔をしたが、すぐに小さく頭を下げた。
「失礼しました。そうですね、貴方の相棒が許してくれるのであれば是非。」
「むー・・・ランファなら事情も知っているし、仕方ない、か。でも、遅くならないようにね!」
リンガは少し面白くなさそうに返すが、そう言えばと続けて軍人達のグループを指差して問いかける。
「今日の軍のヒトは門番とか巡回とかで見覚えがあるヒトばっかりだね。」
ああ、とランファは首肯する。
「なるべく探索者に近しい者を選んでいる事に間違いは無いですね。正直なところ探索者を下に見るような偏見を持つ者も軍に多いですし、なるべく軋轢を起こさない人材が選ばれています。」
リンガはなるほどと頷く。軍に取ってみれば探索者はある程度力を持った浮民と警戒しても仕方がないし、仕事の下請けとのことで高圧的になる者も多いだろうと思う。
ランファはそういえば、と声を小さくする。
「シッコさんも今いらっしゃるのでしょう、挨拶が遅れてすいませんでした。」
エンドの外套の襟元から小さな触手が伸びると手を形造りオーケーサインを出すと、しゅっと引っ込んだ。
その後も話を続けていると、先程説明をしていた少佐を名乗るリンレイが一団に近づいて来た。
ランファが気がつくと敬礼を行うが、軽く手を掲げてそれを止める。
「よい少尉、休憩時間だ。ところで・・・探索者たちと随分と仲が良いようだが?」
「ええ、門での業務上よく会いますので挨拶をしていました。」
ほう、と言いつつリンレイの目がエンドを鋭く射抜く。リンガが前に出ようとするのを柔らかく止め、エンドは口角を上げて声をかける。
「初めまして少佐。ランファ少尉は非常に真面目で真摯な仕事をしており、我々も感謝しているのさ。それに私が珍しい種族でもあるから気にかけてくれているのだろう。」
「ふっ、そうだな。フラグマンなどと言った種族は私も知らなかった。周囲の気配が分かるとか書いてあったな・・・あと、手から旗が生える手品が出来るとか。」
エンドは自分の種族も調べられた上で確信犯のように声を掛けられている事に軽く肩をすくめておどけて見せる。
「うむ。あそこにどうにも恥ずかしがり屋のレディがいるようだ。」
エンドは会議室で一見誰も居ない場所に手を伸ばすと、旗を生やして指し示す。
「どうにもタネも仕掛けも無いが、楽しんで貰えたならば嬉しいが。」
「・・・ほう、本当に旗が体から生えて来るとはな驚いた。それに中尉に気がつくとはな。」
リンレイは感心したように頷くと、何かのハンドサインを行う。すると、会議室の少し暗い一角の景色が歪み、リンガと同じような薄着の小鬼が面白くそうなさそうに姿を現した。
「小鬼族の中でも中尉の隠形は優れているのだがな・・・くくっ、見破られて機嫌が悪そうだ。ふむ、貴様らは中々使えそうだ、期待している。」
背を向けて去っていく軍人をリンガが訝しげに見る。
「何しに来たのかな、あのヒト。」
「ふむ。さて、色々とくぎを刺して回っているのだろう・・・特に怪しい人物に。うむ、お偉方も大変だ」
エンドはランファとリンガ、そして静かな軍人と騒々しい探索者を眺めた。




