2-13 ショック
「ああ、そういえば助手君。倒れる所を助けてくれた礼がまだだったね。ありがとう。」
「気にしないでくれ、私が原因の様なものであるし、可愛らしいレディを抱き止められて役得というものだ。」
「か、可愛らしいとか、お世辞も程々にしてくれたまえ。」
「コニイ、アイボーは世辞じゃ無くて本心で言っているぞ。コイツは節操も危機感もないからな。」
「む、節操が無いというのは心外だが、つまらない嘘はつかない事は約束しよう。相棒、もちろん君も可憐だ。」
「あー、やめろっての!ったく、さっさと案内しろよコニイ!」
他愛もない会話を行いながら奥の方に見える大きな作業台やクレーンのような機器が設置された区画へ向かう。
「私は種族の一つであるマギアンの補修や加工も受けたりしている。彼女達は身体のほぼ全てがマギアで出来ているのさ。自然治癒もしないから当たり前だけど損傷した場合は修理が必要になる。大体の場合は彼女達のコミュニティでパーツ毎交換してしまう事が多いけど、余剰在庫が少なかったり、交換し難い部位の修理や特殊な改造については不得手なので私の方で請け負っているんだ。ここがその作業場だね。」
「じゃああれモ、修理中のマギアンなのかナ?」
シッコは触手を伸ばして奥の方を指し、他の3人も目を向ける。
そこには作業台に横たわり、身体の様々な部分に損傷の見える白い髪と肌の少女の様なマギアンが無表情で虚空を見つめていた。
「ああ、ここに担ぎ込まれてね。これでもかなり修理はしてあるんだ。でも結構特殊なマギアンらしくてパーツの規格が合わなくて交換が出来ていないんだ。ここに来るマギアンにも聞いたんだけど知っているヒトもいなくてね・・・マギアンも派閥というか、属する集団が異なっていると仲間意識がかなり希薄のようで仕方なく私の所で預かっている。とはいえ外見はともかく内部の修理は問題ない筈なのだが、マナを流してみても不思議と目覚めないのさ。」
「ふむ・・・では私がマナを流してみようか?流す量や総量で何か変化があるかも知れない。」
エンドの提案に、コニイは少し思案すると頷く。
「そうだね、正直打つ手が無かったしお願いしよう。だが過剰なマナはマギアの回路を損ねる可能性があるから指示には従ってもらいたいな。」
「うむ、了解した。」
「首の後ろ側にコネクタがある。そこからマナをゆっくりと注いでくれたまえ。」
エンドはコニイの指示に従いマナを流し続ける。しかしながら変化は見られなかった。
「このマギアンってもう死んでるのかナ?」
シッコの言葉にコニイは首を振る。
「いや、頭部にコアがあるのだがそこから各部へのマナの供給は継続しているから完全に機能が停止したわけではない筈だ。コアの損傷具合によっては植物人間のような状態になっているかも知れないが・・・」
「じゃあ、いっそガツンと叩いたりすれば治ったりしないかな?マギアとか調子悪い時にそれで動いたりするし。」
「リンガ!マギアは丁寧に扱ってくれたまえ!!・・・いや、しかしそれは可能性としてはあり得るかって、いやリンガ違う!物理的じゃ無くて強くマナを一瞬だけ流すんだよォ!!」
コニイが慌てて拳を上げたリンガの腕に飛びついて抑える。
「ふむ、では一瞬だけ強くマナを流してみよう・・・カッ!」
エンドの気合いと同調する様に、力を失っていたマギアンはビクリとその首を跳ねさせると、ゆっくりと頭を動かしエンド達の方を向いた。




