2-14 成長速度
「・・・・・」
暫し無言で見つめ合うが、コニイがゆっくりと近づき声をかける。
「おはよう、私は小鬼族のコニイだ。君は破損して動けなかった所を他のマギアンに発見されてここに担ぎ込まれたんだ。」
「・・・状況を把握しました。当機識別名はアイリスです。」
「アイリス君か、よろしく。それで具合はどうかね?」
アイリスと名乗ったマギアンは一拍置いて返答する。
「・・・右腕損傷、右脚一部欠損、左脚に規格外パーツの不明な接続を確認、頭部フレームに亀裂、右眼破損、行動に大きな支障があります。マナ残量56パーセント、コア損傷により現在バックアップモードで起動しています。」
「む、そうか、それでは・・・どうして君が損傷を受けて機能を停止していたか記憶は無いのかな?」
「はい。現在記憶領域へのアクセスが不可能です。機能の修復を現在行っていますが終了時間は未定です。」
「そうかぁ・・・」
意気を消沈させた様子のコニイにリンガが何かあったのかと尋ねる。
「彼女の身体はかなり特殊な、高機能なマギアで作られたパーツで構成されているんだ。普通のマギアンでは見たことの無い程の、ね。それについて話が聞ければと思っていたのだが・・・目を覚ましたのは喜ばしい事ではあるのだがね。」
「記憶が無くて、何か訳アリってことか。なーんかそんなのが近くにもいるよね。」
じとっとした目でエンドを見るが、エンドは「然り」と気にした様子もなくさも当然と頷くためリンガはつまらなさそうに舌打ちする。
「今のアイリス君は産まれたての状態だ。マギアンは生まれた時、造られた時とも言えるかな?最初から基本的な知識はあるし活動も問題無く出来る。ただ、自我と呼べるものが希薄で自発的な行動が難しいんだ。時間をかけて様々な感情や自我を確たるものにしていく・・・だから若いマギアンは単純な労働を行うことが多く、成長するとより複雑な仕事ができるようになる。ふふ、そう考えると他のヒトともそうそう変わらないかな。」
「流石にボク達の種族でも働ける様になるには5年はかかるけどね。」
「はは、それはそうだね。マギアンの様にすぐには話せないねぇ」
エンドは小鬼達が当然のように話す言葉を聞きながら、強烈な違和感を感じて確認する。
「む、早く無いのかね?その、成長速度というものとか。」
小鬼達は一瞬ポカンとしたが、すぐに納得する様に頷く。
「ふむふむ、大柄な種族は長いと10年くらいかかるって聞いたこともあるし、私達小鬼は比較的早熟である事は確かだね。」
「うん、アイボーの種族は結構成熟まで時間がかかるのかもしれないね。」
「・・・うむ、そうかもしれないな。」
10年という期間も十分短いとエンドは強く思ったが、自身のこれまでの常識を疑い堪えて思い直し受け入れる。
「ア、ちなみにスライムも生まれた時から動けるヨ、ま、分裂だからネー。あんまり考える知識とか成長とかないけどネ!・・・で、ところでサ、めっちゃそのコご主人見てるけど、なんかバレるとまずいんじゃ無かったっケ?男がここにいるのってサァ」
「「あ」」
小鬼達が間の抜けた様な声を上げる。それを見ているシッコはニコニコと楽しそうな普段通りの表情を崩さなかったが、内心でコイツらは大丈夫か?と思っていた。
シッコはエンドが無関心に垂れ流すマナを取り込み、見た目には分からないが、核を複製し、すぐに融合する事を繰り返すことで複雑な思考や行動が可能となりつつあった。それはシッコ本人でも気が付いていない自我喪失への恐れに対する新しい分裂の形でもあった。
そして、そんなシッコの内心は、「この群れ、融合しない集合体ーーーは隙があり過ぎる。自身が守護しなければ」とさえ考えていた。
ヒトの思考回路とは少し異なるものの、短時間における驚異的な成長が人知れずここにあった。




