夕暮れの公園で
「なあ、みよちゃん。」
近所の公園でひとりベンチに座っている私に話しかけてきたのは、隣の家のなみちゃん。
彼女の後ろに夕日がすっぽりと隠れている。
逆光で顔が見えない。
「どうしたの?」
いつもなら彼女は家に帰っている時間だ。
なんでこんな時間に外にいるんだろう。
私が首をかしげると、なみちゃんが苦しそうに笑ったような気がした。
彼女は私の隣に腰掛ける。
「あたしな、さっき告白されたねん。」
「そうなんだ。」
だからなんだというのだろう。
私には、関わりのないことなのに。
口の中を少し噛む。
鉄の味が口の中に広がった。
「でも、断った。」
「…なんで?」
隣の彼女をじっと見つめる。
ふたりの目があうと、なみちゃんは慌てて肩を丸めて目をそらした。
「みよちゃんを裏切るようなことできへんから。」
彼女はそっと私の膝の上に手を置いた。
「あたしが呼び出されたことみよちゃんが知らんはずないもん。だから、きっとここで待っててくれると思ってた。」
「なみちゃんは、なんでもお見通しなのね。」
なみちゃんはかんらかんらと笑う。
つられて私もふふふと笑った。
この笑い声を聞いているのは私たちふたりだけ。
それが何より心地よかった。
「私がなみちゃんの行動を知らないはずないからね。」
「さすが自称ストーカー。」
自称じゃなくて本当にストーカーなんだけど。
でも、こぼれるような笑顔の彼女を見ていたら、そんなことは言えなくなってしまった。
公園に設置してある大きな時計を見ると、もう午後6時だった。
「ほら、早く帰らないとお母さんが心配するよ。」
「わかった!じゃあまたね、みよちゃん。」
私に向かって手をぶんぶんとふると、彼女は自分の家へと帰っていった。
私も帰ってなみちゃんの声盗聴しなきゃ。
小学生の君と、25歳の私。
私の愛が君に伝わる日は来るのかな。