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人生こんなところで終わらせてたまるか!第28話

 あたし佐伯美保子は28歳、アラサーまっただ中。某都市銀行の地方支店で働くOLで、身長180センチ、元レスリング部、よく街で男の子に間違われる残念系。

 5年越しのお付き合いの末、婚約者の齋藤丈治に別れを告げ、婚活を始めたあたし。出会い系サイトで誤って出会ってしまったゲイのおっさん権藤さんからなんと偶然、あたしの初恋の人である星夜くんに再会し、相思相愛に!

 と思ったら、銀行ではお局様、清井さんが誘拐される事件発生! 事件は元刑事の探偵であるゲイのおっさん権藤さんや星夜くんも巻き込んで次第に深刻さを増していく! そこに宗教団体から追われて逃げてきた元フィアンセ丈治が加わり、なんていうか、修羅場!?

 ひょんなことから事件解決の糸口が見えたと思ったら、あたしら襲撃に遭い、拉致された先には清井さんが! 早くここから逃げ出さなきゃ! え?爆発??


 どうなるあたしの恋路!?


 ドキドキ婚活ストーリー!

「爆発?」

 あたしと清井さんは、同時に叫んだ。どう考えても、さっきのは爆発音だった。ガス爆発とかその類に感じた。

 あたしと清井さんはしばらくその場にじっとした。爆発音の後から、地鳴りのような振動が続いている。やがて、きな臭い異臭を感じた。

「火事かしら……?」

 清井さんはおびえるようにして、ゆっくりとあたしの方に近づいてきた。

「この臭いは、普通の火事ではなさそうですね……」

 昔、あたしの実家の近所で火災が発生したことがあった。普通の民家での火災だった。原因はよく覚えていないが、タバコの不始末だったか、何かだったはず。その時、野次馬に混じって見物に言ったことがあったが、その時の臭いがしばらく鼻についてとれなかったことがある。あの時の臭いとは全く違う。

 やがて、どこからともなく、煙が立ちこめてきた。あたしは、本能的に危険を感じた。

 その時。

 入り口の扉から、カーン、カーンという小さな金属音が鳴り始めた。あたしと清井さんは三度お互いに見合ってから、急いで扉にとりついて、小窓を開けた。すると、そこには、さっきの少女が立っていて、扉に向かって必死に何かを打ち付けているようだった。さっき後ろに立っていた男の姿はなかった。

「鍵……?」

 清井さんは、そう呟いた。どうやら、少女は扉に付いている鍵を壊そうと、何かで叩いているようだった。

「あたし達を助けようと……?」

 どうやらあたしの勘は正しいようだ。

「大丈夫? 何で叩いているの? ちょっと、貸してみて。内側から開けられるかも」

 あたしはそう言って、小窓から少女に手を差し出した。少女は少し戸惑うようにしてから、しゃがんであたしの方を見た。差し出したのは、小さなペンチだった。

「これじゃ、無理じゃないかな……。ねえ、金槌とか、そういうものないの?」

 あたしは、ペンチを受け取ってみたが、さすがにこれだと、どんな小さな鍵も壊せそうになかった。あたしの質問に、少女は首を振って答えた。

「そう。じゃあ、何か金属の固い物。大きな物とか、棒の物とかない?」

 少女は少し首を傾げてみせたが、すぐに立ち上がり、廊下を走っていった。白いワンピースが踊った。

「何があったのかしら? いつもの男がいないわ」

「何かあったんでしょうね。早くここから出ないと」

 あたしは、少女から受け取ったペンチを使って、小窓を曲げて見たが、この小さな金属でさえ曲げるには用を足さなかった。さっきより煙が濃くなってきたため、しゃがんでいるのがきつくなってきた。

 あたしは、再度立ち上がり、

「清井さん、下がっててください」

 と、清井さんを下がらせてから、今度は金属扉に体当たりをかました。

 ガーン。ガーン。ガーン。

 その度に、壁がミシミシと音を立てるのだけれど、しかし扉そのものは、びくともしなかった。あたしは段々と焦りを感じてきた。足下から天井にかけて煙が充満し始める。

「くっそ……」

 何度も何度も、体当たりをする。肩に痛みを感じてきた。

「清井さん、水、あります? あと、タオルかハンカチ」

「ええ、あるわよ、タオル」

「じゃあ、タオルを濡らしてください。それから、それを口に当てて」

 確か火事の時には、濡れタオルが役に立つと聞いたことがあった。清井さんは言われた通りに奥からタオルと水を持ってきて、二組の濡れタオルを用意した。

 ゴン。ゴン。

 また、扉の外から打撃音が聞こえた。今度は大きめの何かを持ってこられたのだろうか。あたしは、濡れタオルを口に巻いてから、またしゃがんで小窓から外を見た。あの少女が消化器を持ってドアを叩いていた。少女の力では持ち上げられない様子で、転がすようにして、扉を叩いていた。転がすというより、転がされているようにも見える。

「ありがとう。消化器なら、少しはマシかも。それ、ちょうだい」

 あたしは、小窓から手を差し出した。けれど、消化器の方が大きくて小窓から入れることはできなかった。少女は、小窓から入れるのを諦めて、また自分で扉を叩き始めた。

「もう……なんとかならないかしら……」

 その頃には、部屋にも廊下にも煙が充満し始め、立っているのも辛くなってきた。煙のせいで、だんだんと少女の姿もかすんできた。

「もういいわ、ありがとう。あなたは先に逃げて。あたしたちは自分でなんとかするから」

 このままだと、少女も危ない。あたしは、また立ち上がって、扉に必死に体当たりした。手応えはあるのだが、いっこうに扉が開く様子はない。肩の感覚がだんだんとなくなってきていた。煙で喉が痛い。

「ごほ、ごほ……」

 清井さんも、しゃがんだまま咳き込んでいる。

 そして、いつの間にか、外からの音が消えていた。小窓から覗くと、彼女は小さくうずくまって、ひどく激しい咳をしていた。

「逃げて!」

 あたしは叫んだ。そして、また体当たりを続けた。

 息が苦しい。

 こんなとこで……。

「あたしの人生こんなところで終わらせてたまるか!」

 あたしは、最後の力を振り絞って、扉にアタックした。

 が、やはり先ほどと何も変わらない。

「う……」

 もう気力が失われてきた。

 もうここまでかぁ……。

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