戦火
お願いします
昔からあの人が苦手だった、最初の頃は優しい人だと思ったけど今は、あの人が苦手なんだ…
この手の震えはいつになったら止まるのだろう…
元々あの人は、私ハリス・ルイラは勇者シュテルが怖い。
あの人を見てると、どうしてもあの日の事を思い出してしまう。そのせいでいまだにあの人の前に立つと恐怖を感じてしまう、あの火を見ると怖いと感じてしまう、あの轟々と燃え盛る腕の、傷口の炎にーーー
「…どうすんだよこの状況。」
今、檻の中に入れられ遠回しに処刑宣告を受けてしまった。
結構困った状況だ、まずタダで死ぬってのは論外、最悪それでも良いかもだけど…
その時、いきなり牢屋のドアが開いた。
「何の様ですかね、ハリス様?」
「驚かないのね、…意外だわ。」
手をひらひらと振って、
「そんなんで驚いてたら戦えませんよ。」
「あぁそうだったわね、貴方はそう言う人でした」
呆れた感じで言い放つ
「んで、俺に何の様かな?震えてるお嬢様?」
彼女の顔から、少し焦りが出てきた。
「…やっぱり根っこは変わらないものですね。」
「まずさ、なんで俺の事そんなに嫌ってるわけ?」
彼女からの違和感は最初から気付いてた、不自然に俺と関わろうとしない、関わって来るのは俺が動けない時だけ。正直言うと、彼女とはこの数日間何回か会っているものの、露骨に避けられていた。
「言いたく、ありません…貴方には関係ありませんから。それと、処刑の日マリーは来れませんよ、私が行かせないようにしましたから。」
少し震えている肩と、腕を押さえて少しだけ気丈に振舞っていた。
「記憶が無いなんて、嘘を言わないで下さい。心底反吐が出る。」
そう言った後、後ろを振り向き立ち去ろうとする。
ーー出来れば一刻も早くこの人から距離を取りたい。
足早に出ようとしたその時、
「ごめんなっ…」
その声で足が止まってしまった、何かの謝罪なのかわからなかったが。
「多分、お前が俺を嫌う理由は分かる、だから明日はお前も来なくて良い、嫌なものを無理して見る必要はないんじゃ無いか、そして俺には記憶が無い、だから多分明日お前のトラウマの原因を使うかもしれないから、な?」
この人が分からない、怖い時もあるのにいきなり優しい時もある、妹には優しく振る舞うのに私に対してはすごくよそよそしくて、嫌ってた筈なのに…
「…つっ、」
声が出なかった、これ以上何か話そうと思ったら泣きそうになったから…
無言で私は部屋を出た…
だだっ広い会場で、断頭台も無く手錠一つしていない、まるで闘技場のような施設に連行されてしまった。
さらにおかしいのが、何故だか知らないが短剣が二本、支給されていた。
「何だよこれ?随分と死刑囚にお優しいこった」
その時、観客席の上にある所から音が聞こえた。
ーー開廷の合図であった
「これより、勇者シュテルの死刑裁判を始める。最初に、汝は魔か?それとも人か?」
上には十一人の審判員、十一の玉座に座す者たちは、魂の奥を見透かす者たち。誰も偽ることはできない。嘘を吐けば、心臓が焼かれる――だからこそ前を向くそこには、決闘の台のような場所
「私は……いや、俺は!人間だ!」
尋問台に立たされ、そう声高々に宣言した。
不気味な笑みを浮かべて…
あの日と同じように、
ありがとうございます!