判断
久しぶりの更新ですよろしくお願いします
帰り道、二人並んで歩いていた。
「そういえば、シュテル様はここに来る前、何をしていたのですか?」
不意に投げかけられた問いに、シュテルは一瞬戸惑った様子を見せた。だが、何かを決意したようにこちらを見据え、静かに口を開いた。
「これから言うことを、誰にも話さないでほしい。……私は、人を殺した、人殺しなんだ。」
彼の口から語られたのは、あまりにも重く、残酷な過去だった。
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――目を覚ますと、そこは見覚えのあるような、ないような場所だった。
「……あっ、ここ牢屋やん。」
ぼやけた視界で周囲を見渡せば、鉄格子に囲まれた空間。どうやら檻の中に閉じ込められているらしい。
体を起こすと、石の床で寝ていたせいか、あちこちが痛む。重たい身体を無理やり動かし、なんとか立ち上がった。
軽く背伸びをしたその時、不意にドアが音を立てて開いた。
「ふん、いくら勇者といえど、ずいぶん無様ね。」
「……何やねんコイツ。」
しまった、過去一レベルの鋭いツッコミが出てしまった。
鎧のきしむ音、そして鉄の匂いが漂ってくる。片方は鎧の騎士、もう一人は歩き方からして高貴な地位の者だと分かった。
(ちなみに言っておくけど、騎士が臭いってわけじゃない。うん、誤解しないように。)
「私のことを知らないなんて……馬鹿な人もいるものね。私は、ハリス・ルイラ。第三皇女よ。」
だが、彼女の言葉よりも隣の人物に目を奪われた。
「お前……なぜここに? マリー様の騎士団じゃなかったのか?」
そこにいたのは、以前マリーの隣にいた騎士団の団長格の男だった。
「いや、私は本来この方――ハリス様の騎士だ。あの時は君が目覚めなかったから、代役として仕えていただけだ。」
「ああ……そうか。それは悪かった。失礼なことを言ったな。で……なあ、なんで俺はここにいるんでしょうか、ハリス皇女。」
茶髪の少女へ問いかけると、彼女は眉をひそめ、険しい目で俺を見つめた。
「黙りなさい、下賤な魔の手先め!」
目の前を剣が閃き、頬をかすめた。
「は、何言ってんですか?」
「お前が……! 私たちの希望を殺したんだろう!? そのせいでどれだけの人が死んだと思ってる! お前がやったことは、国すら揺るがす大犯罪だ!」
「は? ちょっと待て、何が言いたいんだ?」
頭が混乱する。理解が追いつかない。
「貴方はもう用済みなのよ。魔王の討伐に失敗しただけじゃなく、記憶喪失だなんて言い訳までして……他人になりすまそうとしたんでしょ?」
「だったら何で俺はここにいるんだ?」
「貴方には“魔王の関係者”という疑いがかけられました。それにより、死罪と決定されました。」
……は?
「……なんで、殺されなきゃいけねぇんだ?」
そう問い返すと、ハリスはにこりと笑った。
「『疑わしきは罰せよ、』です。」
――ふざけるな。
「俺が何したって言うんですか!? なあっ!」
苛立ちと怒りがこみ上げる。だが、彼女はなおも冷たく言い放った。
「貴方、自覚がないようですね。……なぜなら貴方は――」
まさか。
「貴方が――」
やめてくれ。
「本物の――」
やめろ、やめろ……もう、これ以上は――
「勇者じゃ――」
「やめろって言ってんだろがああああああ!!!!!」
牢屋の中に、怒声が轟いた。
「もう……いい加減にしてくれ……。さっきから、誰の話をしてるんだ……? 俺は、この国のことなんて知らない。誰も、分からない……知ってる奴は、知らねぇ間に死んでた。墓参りすら、ろくに行けてねぇんだ……!」
溜め込んでいた感情が、ついに溢れ出す。
「それなのに、聞かれるのも言われるのも……全部、魔王のことばっかり! 誰か一度でも、俺自身を見たか!? この“記憶がない”ってこと、どれだけ怖いか、お前らには関係ねぇもんな……!」
両手が震え、目元からは涙が流れる。
数日間、ずっと耐えてきた。
知らない世界。死んだ仲間。帰ることもできない現実。そして、今は牢獄の中――
「なぁ……俺が何したってんだよ……俺が……お前らに、何したってんだよっ!!」
――それは、心の底からの叫びだった。
だが、ハリスの表情が変わった。今まで優しさを纏っていた顔は、冷たく、無感情に変わり……
「もっと早くに処分しておくべきだったわ。」
そう言い残して、彼女は牢屋を後にした。
夜空の月は、俺を優しくも、情け深くも、照らすことはなかった。
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