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不死の勇者の悲劇録  作者: 工藤
第一章 呪われし英雄の決断
4/7

判断

久しぶりの更新ですよろしくお願いします

帰り道、二人並んで歩いていた。


「そういえば、シュテル様はここに来る前、何をしていたのですか?」


不意に投げかけられた問いに、シュテルは一瞬戸惑った様子を見せた。だが、何かを決意したようにこちらを見据え、静かに口を開いた。


「これから言うことを、誰にも話さないでほしい。……私は、人を殺した、人殺しなんだ。」


彼の口から語られたのは、あまりにも重く、残酷な過去だった。


⸻


――目を覚ますと、そこは見覚えのあるような、ないような場所だった。


「……あっ、ここ牢屋やん。」


ぼやけた視界で周囲を見渡せば、鉄格子に囲まれた空間。どうやら檻の中に閉じ込められているらしい。


体を起こすと、石の床で寝ていたせいか、あちこちが痛む。重たい身体を無理やり動かし、なんとか立ち上がった。


軽く背伸びをしたその時、不意にドアが音を立てて開いた。


「ふん、いくら勇者といえど、ずいぶん無様ね。」


「……何やねんコイツ。」


しまった、過去一レベルの鋭いツッコミが出てしまった。


鎧のきしむ音、そして鉄の匂いが漂ってくる。片方は鎧の騎士、もう一人は歩き方からして高貴な地位の者だと分かった。


(ちなみに言っておくけど、騎士が臭いってわけじゃない。うん、誤解しないように。)


「私のことを知らないなんて……馬鹿な人もいるものね。私は、ハリス・ルイラ。第三皇女よ。」


だが、彼女の言葉よりも隣の人物に目を奪われた。


「お前……なぜここに? マリー様の騎士団じゃなかったのか?」


そこにいたのは、以前マリーの隣にいた騎士団の団長格の男だった。


「いや、私は本来この方――ハリス様の騎士だ。あの時は君が目覚めなかったから、代役として仕えていただけだ。」


「ああ……そうか。それは悪かった。失礼なことを言ったな。で……なあ、なんで俺はここにいるんでしょうか、ハリス皇女。」


茶髪の少女へ問いかけると、彼女は眉をひそめ、険しい目で俺を見つめた。


「黙りなさい、下賤な魔の手先め!」


目の前を剣が閃き、頬をかすめた。


「は、何言ってんですか?」


「お前が……! 私たちの希望を殺したんだろう!? そのせいでどれだけの人が死んだと思ってる! お前がやったことは、国すら揺るがす大犯罪だ!」


「は? ちょっと待て、何が言いたいんだ?」


頭が混乱する。理解が追いつかない。


「貴方はもう用済みなのよ。魔王の討伐に失敗しただけじゃなく、記憶喪失だなんて言い訳までして……他人になりすまそうとしたんでしょ?」


「だったら何で俺はここにいるんだ?」


「貴方には“魔王の関係者”という疑いがかけられました。それにより、死罪と決定されました。」


……は?


「……なんで、殺されなきゃいけねぇんだ?」


そう問い返すと、ハリスはにこりと笑った。


「『疑わしきは罰せよ、』です。」


――ふざけるな。


「俺が何したって言うんですか!? なあっ!」


苛立ちと怒りがこみ上げる。だが、彼女はなおも冷たく言い放った。


「貴方、自覚がないようですね。……なぜなら貴方は――」


まさか。


「貴方が――」


やめてくれ。


「本物の――」


やめろ、やめろ……もう、これ以上は――


「勇者じゃ――」


「やめろって言ってんだろがああああああ!!!!!」


牢屋の中に、怒声が轟いた。


「もう……いい加減にしてくれ……。さっきから、誰の話をしてるんだ……? 俺は、この国のことなんて知らない。誰も、分からない……知ってる奴は、知らねぇ間に死んでた。墓参りすら、ろくに行けてねぇんだ……!」


溜め込んでいた感情が、ついに溢れ出す。


「それなのに、聞かれるのも言われるのも……全部、魔王のことばっかり! 誰か一度でも、俺自身を見たか!? この“記憶がない”ってこと、どれだけ怖いか、お前らには関係ねぇもんな……!」


両手が震え、目元からは涙が流れる。


数日間、ずっと耐えてきた。


知らない世界。死んだ仲間。帰ることもできない現実。そして、今は牢獄の中――


「なぁ……俺が何したってんだよ……俺が……お前らに、何したってんだよっ!!」


――それは、心の底からの叫びだった。


だが、ハリスの表情が変わった。今まで優しさを纏っていた顔は、冷たく、無感情に変わり……


「もっと早くに処分しておくべきだったわ。」


そう言い残して、彼女は牢屋を後にした。



夜空の月は、俺を優しくも、情け深くも、照らすことはなかった。

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