審判
今ここに、最後の審判が始まろうとしていた
「では、問おう汝は人か、魔か?」
裁判所のような場所で
見上げれば十一人がこちらを見渡しており、真っ直ぐ見ればそこに
決闘場のような処刑場があった
「えぇ、私は…」
尋問台に立たされ、そうしっかりと宣言した
時は遡り、三日前
見覚えが無い病室で僕は女の子と話していた
「あっ!みっけぇ~」
巷で流行っている、ウォー○ーを探せ的な絵本で遊ぶ皇女と勇者
「いい大人が何してんだ?」
ふと我に返ってしまった、同時に彼女も我に返ったようで
「ご、ごめんなさいぃ~」
頬を赤らめ、か細く謝罪した
「いいですよマリー様、はしゃいでもここじゃ誰も咎めませんよ」
そう言ったが、やはり彼女の瞳にはやはり、悲しみが写っていた
「いえいえ、ご心配をおかけしました、もう大丈夫です!」
「そうですか、ならまたここにいらしてください、遊び相手になりますよ」
「か、からかわないでください!!」
そう言って勢いよく椅子から立ち上がり病室から足早に出て行ってしまった
最後の少し歪んだ顔をして…
「どうして、どうしてですか?何っで忘れたんですかっっ…」
病室から少し離れ、壁に寄りかかり、声を殺して聞こえぬように
泣いていた、ずっとずっと
「どうかしましたか、マリー様剣なんか持って?」
いつもの病室を出て、少し屋外にいき病院の庭でくつろいでいると
二本、剣を持った彼女がやってきた
「貴方が…いいえ先生!」
剣を投げそれを慌てて掴む
「先生、構えてください」
その目はこれでもかと言うほど、真っ直ぐにこちらを見ていた
「どうしてなんだ?」
目の前の剣を構えてこちらを見てくる少女の意図が読めず、困惑していた
「構えろっ!勇者シュテル!」
静かでのどかだった闘技場に緊張感が生まれた
「忘れたなんて言わせない!先生と過ごした日々を…忘れたで終わらせない!だから思い出させてあげますよ」
鞘から引き抜き、剣先を俺に向けて
「もう一度言いますよ、剣を構えろっ!シュテル!」
……分かってる、こんな事やっても先生の記憶が戻らないのは知っている、でもこうでもしないと駄目なんです
思ってしまった、先生に会いたいと
思ってしまった、先生と話したいと
思ってしまった、先生に触れたいと
だから、ほんの少しでいいからせめて、今の貴方が先生じゃなくても
剣を持ってる間だけ、呼ばせてください『先生』と…
決着はすぐについた、
「やっぱり強いですね、先生」
「いや、マリーも強かったよ、誰に師事されたんだい?」
マリーが凄く、複雑そうな顔をして
「えぇ私の先生は凄い人なんです、きっと今もそこら辺に座ってますよ」
少し泣き顔で、明るく答えた
「打った傷が痛いなら、早く病院に行って来たほうがいい」
「やっぱり覚えてないんですね」
掠れた声で、目の前の青年に訴えるように言い放つ
当然、届いて欲しい相手に届く訳がなく、
「なんか言ったのか?」
この一言に、かき消されてしまった