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うちの神様の間違った転移でおおごとに! 女神の使いにされて、僕を頼られても困るのだが……。  作者: とらむらさき


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95話 カーディア新帝国の真実

 朝になると、僕たちは、カーディア新帝国の代表たちを迎えるために、慌ただしく動き回っていた。

 ただ、協議をして終わりというわけにはいかない。

 代表たちが口にするかは分からないが、会食の準備もしなければならないのだ。

 飲み物には炭酸飲料を出したかったが、在庫がないので、レモンを蜂蜜に漬け込んだシロップを、冷水で割って出すことにした。

 食事は軽食でいいだろうと、パンにマヨネーズを塗って、具材を挟んだサンドウィッチを出すことにする。

 マヨネーズを使ったサンドウィッチは、食べたことはないだろう。

 こちらにはこういった物もあるのだと、相手に知らしめる必要があるのだそうだ。

 正直、面倒くさい……。




 カーディア新帝国側に動きが見えたことを、兵士が報せに来た。

 僕たちはバリケードのそばに行き、敵陣を見つめていると、カーディア新帝国の十人ほどの代表たちが、数人の護衛兵を連れた一団なって、こちらへ向かって歩いてくる。

 僕は、こちら側のバリケードをどかすように命じて、彼らが来るのを待つ。


 カーディア新帝国の一団の先頭には、カーディア帝国で見たことのある白髪に白いあごひげで、目つきの鋭い痩せた老人がいた。

 元老院議長の……。元老院議長の……。


 「あの先頭のお爺さんって、元老院議長の誰だっけ?」


 僕は隣で付き添うように立つシャルに、小声で聞く。


 「……ヘルマン・フォン・ベーレンドルフ侯爵です」


 「そうそう、そうだった。そんな感じの名前だった」


 「そんな感じじゃなくて……。ハァー」


 小声で答えた彼女は、僕を見つめると、呆れた表情で溜息を吐いてうなだれる。

 シャルだけに聞こえるように話したつもりなのだが、周りにいるアンさんたちにも聞こえてしまったようで、背後や横の方からも溜息が聞こえてきた。

 何とも言えぬ視線をピリピリと感じるので、誰とも目を合わせないように、ヘルマンさんたちだけを見つめておく。




 ヘルマンさんたちは、僕たちの前まで来ると、ジッと僕たちを注視してから周りの兵士たちにも目を向ける。

 そして、少し困惑した表情を浮かべつつも頭を下げた。


 「この度は、我が国との協議の場を設けていただき、ありがとうございます」


 「いえ、こちらも話し合いで済むのであれば、それに越したことはないので、ありがたい申し出でした」


 僕は、シャルたちに叩き込まれたリハーサル通りの言葉を返して、ホッとする。


 「簡易なものですが、お席をご用意しておりますので、こちらへどうぞ」


 アンさんが一歩前に出て案内役をする。

 彼らは彼女の後ろについて、用意されたテントへと向かう。

 僕らは、その後ろをついて行く。

 すると、彼らの護衛兵が、ヘルマンさんたちの最後尾につき、腰の剣の柄に手を添えて、こちらを警戒していた。


 「そんな警戒は無用だ。我らをやる気なら、アーネット殿が一歩前に出た時点で、我らの首は飛んでいる」


 ヘルマンさんが護衛兵たちに言葉を掛けると、彼の隣を歩く年配の女性が微笑みながら頷いていた。

 この状況で落ち着き払うその貫禄からして、ヘルマンさんの奥さんのようだ。

 護衛兵たちは、柄から手を離し、警戒を解く。


 テントに入ると、長いテーブルに用意された席へとヘルマンさんたちが座ると、アンさんとオルガさんを中心に、メイドさんたちが、彼らのコップに飲み物を注いでいく。

 その間に、僕たちは彼らの向かい側の席へと着いた。


 「あら、美味しい。ほら、皆も飲んでみなさい」


 ヘルマンさんの奥さんが注がれた蜂蜜レモン水を口にして感想を述べると、ヘルマンさんたちにも勧めた。

 彼らも一口飲むと、「これは美味い」と感想が漏れてくる。

 口に合って良かったと、僕は胸をなでおろす。




 ヘルマンさんたちののども潤ったところで、僕は本題に入ろうとしたが、どう切り出すか言葉に詰まっていると、ヘルマンさんが手を挙げる。


 「どうしました?」


 僕は、何を切り出されるのかと、少しドキドキしながら尋ねる。


 「いえ、大したことではないのですが、どうも、その……皆さんのお召しになられている服装が気になりまして……」


 僕は自分の服を見てからシャルたちの服装も見る。

 ヘルゲさんやシリウスたちの軍人組、アンさんたちメイド組、イーロさんたちブラックドラゴン組を除いた僕たちだけが、緑を基調とした迷彩服を着ていたのだ。


 「ああ、この服ですか。これは有事の際の服装でして。ここは、お互いの前線の場所にあたるので、こんな恰好でごめ……」


 「コホン」


 シャルは、咳ばらいをすると、僕を睨みつける。


 「えーと、こんな恰好で申し訳ない」


 「いえ、見たことのない服装で驚いただけでして、こちらこそ申し訳ありません」


 僕とヘルマンさんがお互いに謝ると、会話が終わってしまった。

 どうしよう……。




 変な間が空いていると、シャルの肘が、僕を突いてくる。


 「えーと、お会いしたことはありますが、きちんとした挨拶はしていなかったので、えーと、僕がユナハ国の国王になったフーカ・モリ・ユナハです。よろしくお願いします」


 「私はカーディア新帝国の議長を務めておりますヘルマン・フォン・ベーレンドルフと申します。お見知りおきを」


 「えっ? えーと、議長ということは、ヘルマンさんがカーディア新帝国の皇帝ではないんですか?」


 「はい、我が国は帝国と名乗っておりますが、その実情は、カーディア帝国の元老院議員だった者たちで議会を開いて国政などを決めております。私は、その議会の議長を行い、皆をまとめているので国家元首とされていますが、議員たちの意見をまとめるだけのお飾りのようなものです」


 ヘルマンさんは苦笑する。


 「ということは、うちのフーカ様と同じですね」


 ケイトが余計なことを言い出したせいで、僕まで苦笑することとなった。


 「「……」」


 僕とヘルマンさんは、黙ったまま、お互いに愛想笑いを浮かべ合う。

 また、変な間が生まれてしまった……。




 「コホン。シャルティナ皇女……今は王妃でしたな。コホン。王印を授かったのは、シャルティナ王妃ではなく、フーカ陛下と耳にしたのですが、よろしかったら見せていただけますか?」


 ヘルマンさんから話しを切り出してくれた。助かった。


 「分かりました」


 「んべー」


 僕は、見えやすいようにと、つりそうになるギリギリまで舌を出してみせた。

 その行為に、ヘルマンさんたちはギョッとしている。


 「奇異な行為に驚いたかもしれませんが、王印は、フーカさんの舌に浮き出てしまったのです」


 シャルがフォローを淹れてくれた。

 ヘルマンさんたちは、僕の舌にある王印を確かめるように見つめる。


 「これは……。はっきりとした奇麗な王印ですな」


 彼はそう言うと、椅子から立ち上がり(ひざまず)くと、それに倣うように、カーディア新帝国の他の人たちも跪く。

 舌を出した状態で跪かれていると、恥ずかしい……。


 確認を終えたヘルマンさんは、立ち上がって、横に並ぶ仲間たちを見る。

 すると、彼らはヘルマンさんに、黙って頷いていた。


 「ありがとうございました。我々の意思も固まりました」


 彼はそう言って、席に座る。


 一番端の席にいた彼の奥さんが、ニコリとしている。

 その視線の先は、僕ではなく、マイさんとイツキさんだった。

 三人で、何やらアイコンタクトをしているようにも見える。

 とても怪しく感じ、不安が襲ってくる。




 「そろそろ本題に入りましょう」


 僕の不安をよそに、ヘルゲさんの言葉で協議が始まってしまった。

 僕は、少しモヤモヤする感覚を抑えて、ヘルマンさんたちとの協議に集中する。


 「我々、カーディア新帝国はユナハ国に敵対するつもりはありません。それは、フーカ陛下が聖王であることで、さらに確実となりました」


 ヘルマンさんが最初に切り出した。


 「あなた方はボイテルロック領へ侵攻し、占領しているのに、そんなことを言い出すのですか?」


 シャルが彼らを非難する。


 「それは、ボイテルロック領がシュミット王国につくことを決め、ハウゼリア連邦にも加盟することを知ったため、やむなくとった行動なのです。どうかご理解下さい」


 彼は、シャルに頭を下げる。

 シャルは頭を下げられたことで戸惑ったのか、言葉を切り出せないでいる。


 二人は少しの間、視線を合わせたまま、沈黙を続ける。

 僕は、二人の間に口をはさむかを悩んでいた。


 「では、我々が占領したボイテルロック領の領土を、ユナハ国へ返還いたします。それでよろしいでしょうか?」


 「えっ!? せっかく占領したのに帰すって、もったいないよ!」


 僕は、ヘルマンさんの言葉に驚き、思ったことをそのままストレートに口に出してしまった。

 ヤバい……。

 恐る恐る隣に座るシャルの顔色をうかがうと、彼女は頬をピクピクさせながら、こちらを睨んでいた。

 こ、怖い。

 僕は静かに前へ向きなおり、姿勢を正す。

 他の者からも刺さるような視線をビシビシと感じる。

 やってしまった……。

 そんな中、「グフフ」と押し殺したような笑い声が聞こえてくる。

 我慢が出来ずに、笑い声のするほうを見ると、マイさんが両手で口を押えながら、笑いを堪えて苦しそうに悶えていた。

 そして、彼女は僕と目が合うと、「ブフッ」と吹き出す。

 悔しい……。




 「コホン。あなた方が、占領した領土を返還してまで、私どもと敵対したくない理由を聞いてもよろしいですか?」


 ミリヤさんが、話しを戻してくれた。

 ヘルマンさんは、横に並んで座っている仲間たちを見ると、彼らは黙って頷く。


 「すべてをお話しします。もともと元老院は、カーディア帝国が皇族と貴族の二極化で国が暴走しないため、権力を分散する目的でカーディア聖王国時代のカーディア貴族の集団で結成されたものです。そして、カーディア新帝国を建国したのは、ボイテルロック宰相の力が強くなりすぎたことで、このままではカーディア帝国が奴らに簒奪(さんだつ)されると危惧し、シャルティナ皇女殿下方が取り込まれてしまう前に、我々で逃げ込める先を用意することが目的でした」


 僕は、ヘルマンさんたちが逃亡先、いや、亡命先と言うべきか、それをシャルたちに用意していた事実に驚いた。


 「しかし、……しかし、それなら何故、私たちの味方をしてくれなかったのですか?」


 シャルが苦渋の表情で、ヘルマンさんに問いかける。


 「政治面などでは、異なる意見を出すことも大切なことです。それは、お分かりでしょう。そして、皇族派閥の対立派閥として存在することで、新教貴族派閥からの詮索をかわすことが出来ます。我々が皇族派閥と手を取り合ってしまったら、いざという時に共倒れになってしまいます。誤算だったことは、皇族派閥と元老院派閥の水面下での関係性が、先々代の皇帝陛下、シャルティナ王妃の父上に引き継がれていなかったことでした。そのせいで、我々も表立って味方することができず、申し訳ないと思っております」


 ヘルマンさんは立ち上がり、シャルに向かって頭を下げると、他の人たちも立ち上がり、頭を下げた。

 シャルは黙ったまま、彼らを見つめている。

 その表情は、戸惑っているようだった。

 衝撃的な事実に、彼女の思考が追いついていないのかもしれない。


 正直、僕も真実を聞かされて困惑している。

 シャルのそばにいたミリヤさんやアンさんは、知っていたのだろうか?

 僕は二人に目を向けると、彼女たちはこちらに気付き、黙ったまま小さく首を横に振る。

 では、ヘルゲさんやシリウスは?

 彼らに視線を向けると、彼らも首を横に振る。

 誰も知らなかったんだ。

 僕はあごに手をやると、ふと、マイさんの方を見る。

 彼女と目が合うと、彼女は親指を立ててニコッとする。


 ガンッ。


 僕はテーブルに頭を打ちつけた。

 知っていて、黙っていた人がいました……。

 マイさんはどれだけのことを知っていて、いつまで黙っているつもりだったのだろうか? とても気になる。

 僕は額を押さえながら顔を上げると、皆が驚いた表情でこちらを見ていた。


 「フーカ様にとっては退屈な話しでも、客人の前での居眠りはダメですよ」


 「断じて違う! 寝てないから!」


 レイリアから誤解を招くような注意をされ、思わず怒鳴ってしまった。

 皆が、僕とレイリアを苦笑して見つめる。

 本当に寝てないのに……。勘弁してくれ……。




 僕は気を取り直して、ヘルマンさんの話したことを思い返す。

 すると、どうしても腑に落ちない疑問が湧いてくる。


 「ヘルマンさん、一ついいですか?」


 「はい」


 「どうして、僕たちが帝国を逃げ出す前に、逃げ道を作ってくれていたことを教えてくれなかったんですか?」


 彼は、困ったようにも見える難しい顔をした。


 「フーカ陛下が現れたことで、王印の儀式は失敗し、その後もフーカ陛下が関わったために、あれよあれよという間に状況が加速してしまい、我々のシャルティナ王妃を迎える画策は水泡に帰し、今に至っています」


 彼は僕を一度見ると、場の悪そうな表情を浮かべる。

 そして、皆から僕がジト目で見つめられる時間が続く。

 僕が悪いの……?


 「もしかして、フーカ様が現れなかったなら、ここまでおおごとにならなかったということでしょうか?」


 ミリヤさんがグサッと心に突き刺さる言葉を放ってくるが、誰も返事をしない。

 まさか、彼女からそんな言葉が出るとは思ってもみなかった僕は、動揺する。

 僕だって間違って転移されたから被害者なのに……。と思いつつ、皆から送られる視線に、変な汗が出てきて止まらない。


 「過ぎたことは仕方がないよ!」


 僕は汗を拭いながら、皆と視線を合わせないように、ヘルマンさんだけを見つめて開き直った。


 「あっ、開き直った!」


 「ヘルマンさん、カーディア新帝国は、今後、どうしていくつもりなんですか?」


 ケイトからツッコミを入れられたが、僕はスルーしてヘルマンさんに質問を投げかける。


 「なっ! 無視して、話しを逸らした!」


 「「「「「……」」」」」


 皆は、僕とケイトを交互に見て呆れる。

 少し黙っていて欲しい……。


 「コホン。我々、カーディア新帝国は、ユナハ国の傘下、もしくは属国になっても構わないと思っています」


 ヘルマンさんは、咳ばらいをすると、とんでもないことを言い出した。


 「「「「「……」」」」」


 僕たちは彼の言葉に驚き、言葉を詰まらせると、横やりを入れていたケイトですら衝撃を受けていた。




 しばらくの間、誰も言葉を発することなく時間だけを費やす。

 すると、皆の視線が僕に集まりだした。

 えっ? 僕が決断するの?

 カーディア新帝国を吸収できるのは嬉しいけど、世界征服をしたいわけではないし、すでに治世がとれている国を無理に引き込むのは、歪みが出来て良くない気がする。

 それに、何故か、日本が世界大戦の時、急激に国土を広げすぎていた歴史が頭に浮かんで離れない。

 何故だか、嫌な予感のようなものを感じてならない。


 僕は直感に従って、考えをまとめた。


 「カーディア新帝国は、ユナハ国の友好国、または同盟国として付き合ってもらえると嬉しいです」


 僕がヘルマンさんに向かって意思を伝えると、彼だけでなく、皆からも唖然とした表情を向けられる。

 ヘルマンさんはともかく、皆のその表情は何? 僕に決断を任せておいて、それはズルい……。


 「フーカさん、何か思うところがあるんですよね?」


 シャルに問われ、何となくな勘とは言えない。

 何か論理的な言葉を見つけないと……。

 焦った僕は、皆の納得しそうな言葉を急いで考える。


 「えーと、説明が難しいんだけど、ユナハ国は世界征服をしたいわけじゃないし、カーディア帝国を倒して急激に領土が広がってしまっているから……。えーと、ユナハ国の国内の治世が追いついていない……というか、行き届いていない段階で、さらに領土が広がるのは危険な気がするんだよね」


 少したどたどしくなってしまったが、皆を納得させる言葉としては、こんなところだろう。


 「気がする?」


 シャルに聞き返されて焦った僕は、急いで捕捉するような言葉を考える。


 「えーと、ほら、味方になってくれる国を吸収するのは、味方を減らすことになるわけだし、これからカーディア正統帝国やシュミット王国とも戦うことになるだろうから、その時に味方をしてくれる隣国が減っているのは、戦略的に良くないと思うんだよね」


 「思う?」


 再び、シャルに聞き返されて、さらに焦る。


 「えーと、カーディア正統帝国やシュミット王国のような、僕たちには受け入れられないことを考えている国と戦って勝った場合は、どうしても、その国の領土は占領して、その国民の考え方を改めさせる必要がでてくる。その時に、領土を広げすぎていると、手が回らなくなる可能性があるんだよ」


 「……」


 シャルは、あごに手をあて、少し考えこんでいる。


 「本音は?」


 「広すぎる領土は面倒くさ……」


 ケイトからの横やりに、思わず答えそうになり、途中で言葉を止める。

 余計なことを……。

 僕が彼女を睨むと、いたずらっ子のように楽し気な表情を浮かべて、こっちを見ていた。

 そして、ケイトのせいで、シャルだけでなく、皆からも疑惑の目を向けられてしまっている。

 何か、弁解しないと……。


 「違う違う! うちの国は出来たばかりで国力も人材も不足しているんだから、国土を広げすぎて統治しきれないと足元をすくわれて危険なんだよ」


 シャルは、不信そうな視線で僕をジッと見つめる。


 「少し引っかかりますが……分かりました」


 何とか、納得してもらえた。

 皆も不信がりながらも納得してくれたようだ。


 しかし、僕の中で一つだけ気がかりなことがある。

 それは、カーディア新帝国という国名だ。


 「ヘルマンさん、一つお願いがあるんだけど、いいですか?」


 「はい。どうぞ、おっしゃって下さい」


 「カーディア新帝国という国名を改名してもらえますか? 僕たちがカーディア新帝国という名を認めてしまうと、ユナハ国民を裏切る気がして……」


 「確かに、反感を抱く者が出てくるやもしれませんし、国名は改名しましょう。しかし、カーディアの名だけは名乗らせて欲しいのですが、よろしいですか?」


 「それはかまいません。新帝国という名称が問題ですから」


 僕たちは、ヘルマンさんたちと一緒に、カーディア新帝国の新しい国名を考える。

 カーディア新帝国の政治体制は、帝国主義ではなく、ヘルマンさんが議長として代表を務め、議会で物事を決めている。

 そもそも、帝国を名乗る必要はなかったと思う。


 「うーん。カーディア議会国?」


 「おー。その名はいいですな!」


 僕が何気なくつぶやいた国名に、ヘルマンさんが飛びついた。

 そして、他の人たちも満足そうに頷く。

 あれ? カーディア議会国で決まってしまった……。




 その後、ヘルマンさんたちと協議し、今いる前線の境界線を、カーディア議会国とユナハ国との国境とした。

 そして、国交においては、ヘルマンさんたちの強い要望で同盟国となった。

 ユナハ国にとっても、カーディア議会国にとっても、隣国にカーディア正統帝国とハウゼリア新教国がいる以上、妥当な提案なのだと思う。


 ヘルマンさんたちは、テントの端で僕たちの協議を見守っていたルビーさんたちのもとへと行く。

 彼らはグリュード竜王国とも同盟を結びたいらしく、カーディア議会国の上空をドラゴンが自由に航行することと、多少の審査は受けてもらうがカーディア議会国に立ち寄ることも認めると、ルビーさんたちは快く、同盟を結んだ。




 ユナハ国とカーディア議会国との協議は終わった。

 僕とヘルマンさんが握手をすると、拍手が沸き起こる。

 そして、彼はルビーさんとも握手をすると、再び拍手が沸き起こった。


 「カーディア正統帝国とも、こんな感じで上手くいかないかな?」


 「「「「「それは無理です!」」」」」


 僕がポツリとつぶやくと、ヘルマンさんたちから否定された。


 「あの国は、新教貴族派閥のもとでは利権をむさぼれないと、派閥を見限った貴族たちの集まりですから、こちらの理想や考えは通じないでしょう」


 ヘルマンさんが、僕の出鼻をくじくような発言を自慢げにする。

 そんな自慢げに断言されても……。


 彼の言葉で、カーディア正統帝国と話し合いでは済ませられないことが確定され、気が重くなるのだった。

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