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うちの神様の間違った転移でおおごとに! 女神の使いにされて、僕を頼られても困るのだが……。  作者: とらむらさき


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63話 グレイフォックス

 衛兵たちが会場を行きかう群衆を整理していた。

 彼らだけでは人手が足りなく、応援を頼まれた一般の兵士たも忙しく動き回る。

 そんな中をワゴンを押したメイドさんたちが何かを売っている。

 メイドさんたちが売り子をして、何を売っているのかは分からない。

 シャルに尋ねても、彼女も知らなかった。


 僕は、スマホのカメラの望遠機能で確認できるかを試してみる。

 何とか見えそうだ。

 スマホに映るワゴンには、看板が掲げられ、そこには『コンビニ カプ 移動販売中』と書かれていた。

 そして、サンドウィッチのような物と飲料水を売られていた。

 おそらく、炭酸飲料と僕が教えたファーストフードなどだと思うが、メニューまでは読み取れない。

 それにしても、なんと抜け目のないことだろう。

 しかし、炭酸水の在庫は、そんなにないはずだ。湧水から炭酸水を常に運搬しているのだろうか?

 疑問だけが浮かんでくる。

 ケイトに尋ねようと探すが、何処にもいない。

 どこに行った?


 辺りを見回すと、彼女は壇上にいた。

 そこでマイクを握り、何かタイミングを計っているようだ。

 僕は、彼女に炭酸水のことを尋ねたかったのだが、今は邪魔をせずに、彼女の仕事を見守ろうと思う。


 「皆さーん。これより、ユナハ国空軍が誇る曲技飛行部隊、『グレイフォックス』のアクロバット飛行をお楽しみ下さい!」


 彼女は腕の内側を見る。

 うっ、女性物の腕時計をつけている。

 たぶん、ヒーちゃんのものだろう。


 「それでは、ミュージック、スタート!!!」


 彼女が叫ぶと、スピーカーから曲が響きだす。

 選曲は僕のリクエスト通り、戦闘機の活躍する有名な洋画に使われていた誰もが聞いたことのある曲だ。

 僕はその曲に耳を傾け、満足する。

 異世界でこの曲を聞いていることに、感動してしまう。

 しかし、パソコンにインストールしてある曲を、よくスピーカーで流せたものだ。

 ケイトは司会をしている。ということは、ヒーちゃんが何かしているのだろうと、彼女を探す。

 ヒーちゃんを見つけた。

 そして、僕は驚く。

 パソコンとスピーカーを繋げていたのではなかった。

 パソコンに、日本から持ってきた携帯スピーカーを繋げ、別のマイクに当てていた。

 さらに、雑音が入り込まないよう、布でグルグル巻きにして、固定していた。

 何ともアナログな……。




 「「「「「おぉぉぉー!!!」」」」」


 会場に流される音楽に、皆が大きな歓声を上げた。

 すると、ペスたちが城の上空に現れ、放射状に広がると、スモークの線を描いていく。

 そして、曲と合わせるように技を披露していくと、スモークがペスたちの航跡を描いて模様を作った。

 ジーナさんたちにも曲が聞こえているのだろうか?

 曲と動きがピッタリとあっていた。


 一曲目が終わると、ペスたちは次の演技のために定位置へと向かう。

 二曲目が始まると、再び演技を始め、雲一つない青空に、さらに模様が描かれていった。

 見事だ!

 航空ショーでブルーインパルスの実演を見たことのある僕でさえ、興奮してしまう。


 きっと、好評だろうと、賓客の様子を見ると、感動しているのがわかってホッとする。

 ただ、一部で空を眺め、苦悶というか悔しがっている人たちがいた。

 ルビーさんたちだ。

 アスールさんもそうだが、竜族は空を飛ぶことにプライドを持っている気がする。

 彼女たちの視線がこちらに向く。

 ヤバッ! 目が合ってしまった。

 すぐに視線を逸らすが、ルビーさんとネーヴェさんは、僕に駆け寄って来る。

 面倒くさいことを言われそう……。

 

 「フーカ殿、何だあれは! ズルい! あれくらい、私たちにだってできる!」


 ルビーさんが張り合うような言葉を放つと、ネーヴェさんも強く頷く。


 「そ、それは分かっているけど、これはうちの空軍のお披露目なので……」


 僕は困ったように返事をする。


 「うぬー。ネーヴェ、今度から、わが国でもあれをやるぞ! フーカ殿、ドラゴン用のあの煙の装置を作ってくれ!」


 ルビーさんはお願いといったポーズをとると、ネーヴェさんまで同じポーズをとる。

 

 「わ、分かりました。ケイトに頼んでみます」


 「おぉー。ありがとう!」


 彼女は僕の手を握ると、ブンブンと振り、喜ぶ。

 ネーヴェさんも嬉しそうな表情を浮かべていた。

 二人がこの様子では、アスールさんも落ち込んでいそうだ。

 彼女を探すと、四つん這いで打ちひしがれている姿を見つけた。

 や、やっぱり……。

 そんな彼女を、マイさんとエルさんが優しく肩を叩き、慰めていた。

 アスールさんの機嫌を取るためにも、彼女専用の装備を考えて、ケイトに作ってもらおう。




 空を見上げると、ペスたちの演技もクライマックスに突入していた。

 グレイフォックスは、一斉に上空に向かって急上昇し、別れていく。

 そして、ペスが中心を突き抜け、上昇すると、大きな羽が描かれた。

 会場からは、凄まじい歓声が上がる。

 さらに、二頭のワイバーンがハートマークを作る。

 しかし、白ではない。

 スモークを切り替えて、ピンク色のスモークを噴射していた。

 最後に、そのピンク色のハートマークの中心をペスが突っ切り、白い矢を刺す。

 再び、会場から凄まじい歓声が上がった。

 大成功だ。


 曲がバラード調に切り替わると、演技を終えたグレイフォックスがゆっくりと下降してきた。

 速度を落とし、地上に風を巻き起こさないように注意しながら旋回すると、ジーナさんたち隊員が、会場にいる人たちに大きく手振る。

 それに応えるように、会場の人たちも手を振り、歓声を上げ、彼女たちを褒めたたえた。


 グレイフォックスは、会場の上を数回旋回した後、飛び去って行く。


 パチパチパチパチ――。


 全ての人は、拍手と歓声でグレイフォックスを見送った。


 「皆さーん! 楽しんでいただけましたでしょうか。グレイフォックスの皆さんによるアクロバット飛行でした。これから、大きな式典では、彼女たちの雄姿を見られることになります。是非、応援してあげて下さい! では、ここで、とっておきの情報をお教えします。グレイフォックスに関する商品が、なんと、城の城壁に造られたお店、コンビニ『カプ』で販売されることが決定しました! 皆さん、是非、お買い求め下さい!」


 ケイトは頭を下げると、壇上から降りた。

 彼女の商魂たくましさを思いしらされる。

 しかし、どんな商品を用意したのだろうか? とても気になる。




 イーリスさんがケイトと入れ違いに壇上へ立つ。


 「ユナハ国建国式典は、これにて閉会いたします。ですが、今日から毎年、七月一日は建国記念日として、国民の祝日とし、毎年、祭典を行います。式典は終わりましたが、この後、夜には花火大会も行われます。皆さん、是非、お楽しみ下さい!」


 彼女が頭を下げると、歓声が沸く。

 今までに、こういった行事は無かったのだろうか、民衆は興奮して喜んでいた。

 僕に、国民が楽しめるイベントや行事を、多く取り入れていきたいと思わせるには、十分な光景だった。


 賓客には、一度、客室に戻ってもらう。

 この後は、サロンで晩餐会(ばんさんかい)が行われる予定だ。

 サロンからは、花火が見れるように計算もしてある。


 そして、僕たちもテラス席から離れる。

 離れる際に、群衆から感謝や期待を寄せた声を投げかけられ、僕は少しジーンと感激してしまう。

 今回は王都になったユナハ市がメインだったが、今度は各市町村の人たちも楽しめるように、各地でもイベントをしたいと思う。




 執務室に戻ると、シャルたち皆も一緒だった。


 「フーカ様、こちらへ」


 アンさんが別室の扉を開ける。

 その開け放たれた扉を見て、僕は顔を青くした。


 「ヤダ! その部屋に入ったらお説教が……」


 「ち、違います。その服で晩餐会にも参加されるんですか? それこそお説教になりますよ」


 彼女が苦笑すると、シャルたちはクスクスと笑いだす。

 僕は恐る恐るアンさんに近付く。


 「そんなに警戒しないで下さい。色々な意味で心をえぐられます」


 彼女はシュンとする。


 「ア、アンさん、ごめん!」


 僕は彼女にしがみつき、一緒に別室へと入った。


 「男女が二人で部屋を抜け出すなんて。なんか、こう、いやらしいというか、卑猥な感じがしますね」


 「ケイト、聞こえてるよ!」


 「ケイト。あなたとは、二人っきりでじっくりと話す必要がありますね」


 「ヒィッ! ごめんなさい! っていうか、とっとと済まして下さい」


 「ケイト、言い方!」


 本当に僕とアンさんが、しけこんでいるたいじゃないか!

 アンさんも、頬に手を当てて、顔を赤らめないで欲しい。



 ◇◇◇◇◇



 着替え終えた僕は、お茶を飲んで少し休む。

 そうだ、ケイトに頼まないと。

 僕は、ルビーさんから頼まれていたドラゴン用のスモーク発生装置を、彼女に作って欲しいとお願いする。

 そして、アスールさん専用の装備も考えて欲しいと頼む。

 ルビーさんたちの件は了承してくれたが、アスールさんの件を面倒くさがる彼女に、僕はアスールさんを指差した。

 アスールさんは、あれから、どこかしょんぼりとしているのだ。

 その姿を見たケイトは苦笑し、仕方がないと了承してくれた。


 ケイトには、そのままいくつかの質問を投げかけた。


 「ワゴンで売っていたドリンクって炭酸水を使ったジュースだよね?」


 「はい、そうですよ」


 彼女は、それがどうしたと言わんばかりに答える。


 「そんなに多くの炭酸水を運んできたの?」


 「違いますよ。草を発酵させたんです。日本のヨモギやレモングラスといった植物と同じものを見つけたので、ヒサメ様と一緒に酵母を発酵させた炭酸水を作ったんです」


 「そ、そうなんだ」


 レモングラスは日本原産の植物じゃないけどね。


 「いやー、ビックリしましたよ。こっちでは雑草扱いされていた植物で炭酸水を作れるんですよ。それに、料理にも使えるんですよ。大発見です!」


 彼女は興奮気味に語った。

 何でだろう、別の製造方法が出来て嬉しいはずなのに、ないがしろにされている気分で悲しい。

 ちょっと、ヒーちゃんに嫉妬する僕もいる……。


 「もう、湧水の炭酸水は使ってないの?」


 「いえ、使ってますよ。植物から作った炭酸水は香りがついているので、その香りが邪魔になるドリンクには使えないんですよ。ただ、大型の荷馬車を開発して一度に大量輸送が出来るまで、湧水の炭酸水を使ったドリンクは、輸送代の都合で割高になるんですよ……」


 ケイトは渋い表情をした。


 「生産工場と湯治場の建設は始まってるの?」


 「ええ、始まってますよ。規模がでかいので完成には、まだ時間がかかると思います」


 完成しても、行き来するには、馬車かワイバーンがメインになりそうだ。


 「トラックと汽車の開発は進んでるの?」


 「課題が多くて難航してます」


 彼女は難しい顔をする。


 「パソコンで見せた物を作ろうとしてないよね?」


 「へっ?」


 彼女は驚いた表情を見せる。


 「基礎技術がないんだから、劣化版に感じる様なものから作らないと無理だよ」 


 「あっ! そうですよね……。計画を見直します。フーカ様、ナイスです!」


 彼女は僕に向けて親指を立てた。

 そして、ポケットから紙切れを取り出すと、机に置かれているつけペンを使ってメモを取る。

 その様子を見て、質のいい紙と鉛筆を早く作った方がいいと思った。


 「それと、グレイフォックスの関連商品って、何を作ったの?」


 「よくぞ聞いてくれました! ちょっと待ってて下さい。今、持ってきますね!」


 ケイトは、はしゃぐように部屋を出ていく。

 しばらくして、彼女は布をかぶせたワゴンを押して、戻って来た。


 「これです!」


 彼女はドヤ顔で、ワゴンの布をとる。

 現れたのは、ワイバーンの姿をかたどったクッキーで、ワイバーンと鳥の羽の紋章が焼き印されていた。

 旗とワッペンもあり、そこにも紋章が入っている。

 他にも、ワイバーンに飛竜兵が乗った形をしている飴や、木造のフィギュアなどもあった。

 グレイフォックスの部隊章はカッコよくていいなと思う。


 「お店では、スモークを連想させる綿菓子も販売します。きっと、グレイフォックスは稼ぎ頭になってくれます」


 彼女は再びドヤ顔を見せる。

 彼女の最後の言葉に、僕だけでなく、シャルたちも彼女をジト目で見つめた。


 「そんな目で見ないで下さいよ! 売れれば、ちゃんと肖像権や印税の代金は、グレイフォックス隊の予算として入るんですから!」


 彼女は必死になって弁解する。

 ここは、彼女の言葉を信じよう。


 グレイフォックスは、金儲けのために結成したんじゃないんだけど、僕の想定とは違う方向へと向かいそうで怖い。

 ちょっとは金儲けのことも考えたけど、それはケイトの弁解と同じく、部隊の維持費と軍事費の足しにするためだ。

 僕も、自分に都合のいい解釈をあてはめて納得する。


 「えーと、これからのことを考えると、飛竜部隊にも新しい装備が必要になると思うんだ」


 いい機会だからと、僕は頭の端に引っかかっていたことを口にした。


 「それは?」


 シャルが僕の言葉に興味を持つ。


 「今は、ワイバーンに乗って白兵戦のように戦うだけでしょ。でも、偵察や支援攻撃に切り替えたほうが、生還率は高いし、地上で戦う兵士も敵の動きを常に教えてもらったり、上空から援護してもらえれば、戦闘も有利になると思うんだ」


 僕の意見に、シリウスたち軍属が感心してくれる。


 「前線で戦う兵士には、どうしても死傷者は出てしまう。でも、援護が充実していれば無駄死にはしなくて済む。一人でも多くの兵士を帰還させることを忘れちゃいけないと思うんだ」


 「我が軍は恵まれていますな。兵士たちに、フーカ様の今の言葉を聞かせたやりたい。きっと、涙を流して喜びます」


 ヘルゲさんはそう言って、目頭を押さえた。


 「それで、具体的にどうするんですか?」


 シャルが尋ねてくる。

 僕は、アスールさん専用にと思いついていた装備を、皆に告げることにする。

 無線機付きヘルメット、手元で操作できる機銃のついた戦闘服や、爆撃の装備などを提案した。

 そして、アスールさんたちのために、ドラゴンの姿でもかぶれる無線機付きヘルメットも提案する。


 「飛竜兵には、ヘルメットでもいいですが、重量や強度を考えると、アスール様たちには仮面のほうがいいかもしれませんね」


 ケイトが技術的な面から意見を述べた。

 その横から、目をキラキラさせたアスールさんが顔を覗かせる。

 よほど嬉しいらしい。


 「ケイト、今の提案で企画してみて、何か資料が欲しければ、僕のパソコンも使っていいから。ヒーちゃんと僕の持つ二台を使えば、調べるのもはかどるでしょ」


 「ありがとうございます!」


 ケイトはホクホクな表情を浮かべる。

 あげる気はないんだけど、大丈夫かな……。


 「そろそろ、晩餐会の時間です」


 アンさんの言葉で、僕たちは、サロンへと向かうことにした。

いつもお読みいただきありがとうございます。

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