35 襲撃
襲撃されている村に到着した。
盗賊が100人程、村の周りを取り囲んでいる。よく観察すると、服装はバラバラだが武器は揃っているし、盗賊とは思えないくらい統率が取れているように見える。
「間違いなく、どこかの部隊じゃな。ケイスケよ、くれぐれもやり過ぎるなよ」
「は、はい・・・」
グレーテルお嬢様だけでなく、アンヌさんにも同じことを言われた。
俺って、ヤバい奴扱いなのか・・・
アンヌさんが進言する。
「お嬢様、こちらが救援に向かうと同時に奴らは、お嬢様と皇女殿下を襲撃してくるでしょう」
「分かっておる。じゃが、村の被害を考えると、そうも言っておれん。こちらにはケイスケとアンヌを残し、その他の者は全員で盗賊の撃退に迎え」
「はい」
グレーテルお嬢様の指揮を受けたアンヌさんが指示を始める。
討伐部隊の長は、オーベルト男爵が務めるようだ。オーベルト男爵も武人で、かなりの戦闘力がある。それに最近では、サクラさんもかなり強くなっている。
「ショウタ殿、貴殿は指揮官を生け捕りにしてもらいたい」
「分かったよ。ケイスケさん程強くはないけど、こういったことは、俺のほうが得意だからな」
村を包囲している盗賊にオーベルト男爵が警告を発する。
「我はオーベルト男爵である。盗賊ども!!すぐに武器を捨てて投降しろ!!命だけは助けてやる」
しかし、盗賊はこの勧告を受け入れない。
逆にオーベルト男爵に向かって行く。
「おろかな・・・」
戦闘が始まってしばらくして、秘匿配置していた盗賊団の魔導士と弓兵が一斉に攻撃してきた。
「スプーンの楯!!」
俺はグレーテルお嬢様とアイーシャ皇女が乗っている馬車をスプーンの楯で覆いかぶせた。これで、遠距離攻撃の被害はない。アイーシャ皇女の護衛騎士バスラさんが、驚きの声を上げる。
「こんなことができるのか・・・こんなのいくら帝国軍が精強とはいえ、戦争になれば勝てないだろうな・・・」
バスラさんがそう言ったのは、何も俺の能力だけを見てのことではない。
カヨさんを筆頭にしたこちらの戦力にも驚いている。あっという間に盗賊たちを打ち倒していく。
そして、ショウタ君が一人の敵兵を連れて、こちらまで帰って来た。
「指揮官を捕まえたぞ」
「よくやったショウタ!!ケイスケ、勝負を決めろ」
アンヌさんが指示を出す。
「皆の者!!退却だ!!死にたくなければ、死ぬ気で逃げろ!!」
味方の兵士がすべて、退避し終わったのを確認して、俺は空中に巨大な先割れスプーンを出現させた。その後は、いつも通りだ。そこら中から断末魔が聞こえる。
「ケイスケよ、皆殺しにする必要はない。何人かは逃がせ。こちらで逃走した奴らを尾行するからな」
指揮官への尋問と併せて、証拠を掴むつもりのようだ。
終ってみれば、戦闘と呼べるものではなかった。
「やっぱりケイスケさんは凄いですね・・・なんというか・・・」
「もう反則だな・・・」
カヨさんもショウタ君はいつものことながら引いているが、アイーシャ皇女の従者たちは青ざめている。
★★★
戦闘が終わり、戦後処理に入る。
幸いにも村に大きな被害はなく、死体などの後処理は村人がやってくれることになった。
グレーテルお嬢様が村人を前に声を上げる。
「よく聞け!!こちらにおられるティーラム帝国のアイーシャ皇女が、村の窮状を知り、駆けつけたのじゃ。アイーシャ皇女に感謝するように!!」
村人たちから歓声が上がる。
「そ、そんな・・・私は何も・・・」
「いいのじゃ。貴殿が村を救おうとしたことに変わりはない。それにこれで、帝国への心象もよくなるであろう。このことは国王陛下にも報告し、感謝を伝えてもらうことにする」
「で、でも・・・」
グレーテルお嬢様の意図を察したバスラさんが言う。
「殿下、有難く受けましょう。大きな借りになるでしょうが・・・」
俺もグレーテルお嬢様と一緒に行動して長いから、グレーテルお嬢様の思惑は分かる。これを政治的に利用するのだろう。
アイーシャ皇女に恩を売り、更に帝国でのアイーシャ皇女の立場も高める。こちらとしては、帝国を攻め滅ぼす意図はないから、帝国内にも親シェーンブルグ王国の皇族を作ることは利がある。
意を決したアイーシャ皇女は、村人に宣言する。
「我がティーラム帝国は強く、正しくが信条です。いくら他国でも何の罪もない無辜の民が蹂躙されることは許せません。これからもティーラム帝国とシェーンブルグ王国が良い関係が築けるように致しますよ」
それからその村に3日程滞在した。
グレーテルお嬢様が言うには、この期間を利用して、王都で噂を流すようだ。使者として来たアイーシャ皇女は、人格者で危険を顧みず、村人を助けたという美談にするようだ。
そして満を持して、俺たちは王都に到着した。
民衆からは大歓声で迎えられる。それに国王陛下直々に出迎えにも来てくれた。後で聞いた話だが、これも演出だという。
「アイーシャ皇女、我が国民を救ってくれて感謝する。我が国とティーラム帝国とはいい関係が築けるだろう」
「そうですね。私と未来の王妃殿下のように両国は、硬い友情で結ばれることでしょう」
アイーシャ皇女はさり気なく、グレーテルお嬢様を「王妃」という言葉を使って、立ててくれたようだ。
「若いのにしっかりしておるのう。アイーシャ皇女が皇帝になれば、帝国も少しはマシになるじゃろう」
グレーテルお嬢様も十分若いですよ。
とはツッコミを入れなかった。
この後は、王都での会談や晩餐会が予定されている。
ここから俺は、特にすることがない。スプーン曲げ以外は・・・
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