ごみばこ
「わ、ああ!来るなあ!」
ぼくは声のする方に恐る恐る向かうと、そこには、ぼくと同じくらいの金髪の男の子が、魔物に襲われそうになっていた。
「もう、魔力が……!くそ、なんで魔物が……!こんなとこ、来るんじゃなかった……」
男の子はもう魔力が切れてしまったようで、木の棒で必死に抵抗しようとしている。
やっぱり魔物に襲われていたんだ。
辺りを見回す。
どうしよう。どうしたら……
「えいっ」
地面に落ちていた手のひらくらいの石を見つけた。持ってきて、魔物に投げつける。
ノーマン館長が言っていた。
『重いものを投げつければ、怯ませるくらいはできるぞ』って。
ガツン。と魔物の背中に当たった。魔物はびっくりして、動けなくなってる。
「こ、こっち!」
「!?」
男の子の手を引き、路地裏に駆け出す。
追いかけてきませんように。
そう願ったけど、魔物はぼくたちを見つけて後ろから追いかけてきていた。
「な、お前、誰、道、わかるのか!?」
「わ、わからないよ!でも逃げないと!……わっ!」
急いで道を曲がると大きなゴミ箱にぶつかりそうになった。蓋を開けてみる。
中身はあんまり入ってないし2人、隠れられそう。
「ここに、隠れよう」
「これゴミ箱だぞ!?嫌だよ!」
「大丈夫。ちょっとしかゴミ入ってないよ」
「い、嫌だ……わあ!」
大きいゴミをポイっとだして、ゴミ箱の中に入る。そのまま男の子の手を無理矢理引っぱり、
2人でぎゅうぎゅうになって入り込んでから、蓋を閉める。
「お前……俺をゴミ箱に入れたって言いつけてやるからな……」
「そしたら、そのおかげで助かった。もだよ?」
ゴミ箱の中は思ったよりも臭くなく、少し湿った紙くずが足にくっつく。
足がガクガクしてきた。両腕は擦りむけてジンジン痛むけど、ぬいぐるみを抱きしめる手は絶対に離さなかった。
じっと息を潜めていると、外から魔物の足音が遠ざかっていくのが聞こえて、ほっと胸をなで下ろした。
「よ、良かったあ」
ぷはっとゴミ箱の蓋を開けて顔を出す。
ぼくが最初に出て、男の子の手を引っ張る。
「うう。臭い。最悪だ」
「臭くないよ?でも、大丈夫?」
「大丈夫なもんか。こんなに汚くなって……」
ゴミはそんなに入ってなかったけどな。
金髪の男の子はぼくの両腕を驚いたように見つめる。
「お前、怪我してるじゃないか」
「転んじゃって……」
まだ少し傷むけど、大丈夫。
足は怪我していない。
まだまだ走れる。
「……ふうん。というかなんで街に魔物が入り込んでるんだよ。おかしいだろ!結界で囲われてるはずだろ」
「ぼくにも分からないよ」
首を振る。
ヴァルドさんも不思議そうにしていたもの。
「君は教会の場所、分かる?
そこなら結界が張られてるから、魔物が来ないんだって」
「分かるわけないだろ。俺ここにあんまり来ないんだ。なのにこんな目に……」
「そっか。じゃああの十字架を目印に一緒に行こう?」
空に見える十字架を指差す。さっき走って逃げたから少し遠くなってしまった。
「……しょうがないな。お前、名前は?」
「アシェ。アシェ・エクリュ」
「ふうん」
「なんてお名前?」
「……シリルだ。シリル・アルベール。
この紋章見ればわかるだろ!」
シリルは腰に手を当てて、上着に刺繍されたかっこいい模様を見せてくれる。
「……?わかんないや」
「な、な……!」
「早く行こ?シリル」
シリルは驚きながらも渋々ついて来てくれる。
良かった。無事で。ほっと息を吐く。
ぼくはしっかりとぬいぐるみを抱きしめて、十字架を目標に教会へと足を進めた。




