目を合わせられない!
朝からとてつもないイベントが発生した数時間後、俺は二人と一緒にショッピングモールに来ていた。
左右からがっちり腕をホールドされて……なんて事はなく、普通に三人並んで歩いているのだが、思った以上に会話が少ない。
いや、何というか……三人揃って今になって意識してしまっている。さっきは場の雰囲気や勢いがあったから、二人も口数が多かったが、改めて考えてみると色々と湧き上がってくるものがあったらしい。俺に関しては言わずもがなだ。二人と目を合わせるのすら恥ずかしい。
ただ明日からまた学校が始まる事を考えると今日のうちに動いておきたいという真冬ちゃんの希望で、とりあえず外に出ることにした。
「あー、来たのはいいけど今から何買うんだ?野宿セットか?」
「それも検討はしたんですが、私くらい可愛いとオオカミさんに食べられちゃうかもしれないので、やめておきます」
「検討したのかよ……」
「さすがにそれは俺達も止めるよ……あっ」
「あっ」
夏希さんと目が合い、お互い瞬時に逸らす。やばい、体が勝手に反応してしまうあたり、かなり意識してしまっている。
「直登、お前しばらくこっち見んな……」
「す、すいません!」
「いや、別に謝らなくていい。ただ、しばらくこっち見んな」
「はい」
確かにその方がお互いあたふたせずにすみそうだ。
すると、真冬ちゃんが「あらあら」と割り込んできた。
「それじゃあ、夏希お姉さんが逃げ腰になっている間にしっかりと距離を縮めちゃいますね……あっ」
「あっ」
さっきのやりとりを繰り返すかのごとく二人して瞬時に顔を背けてしまう。
「や、やっぱり愛の告白をした後というのは目を合わせづらいものですね……お兄さん、しばらくこちらを見るのはお控えください」
「……わかった」
言い方は丁寧だが、要するにこっちを見るなということである。もちろん異論はない。
三人揃って前を向いたまま歩いていると、人混みの中ということもあり色んな音や人の流れが、頭の中を良い感じに塗りつぶしていく。
「ええと、まずは洋服屋さんに行きましょうか。いつまでも千秋ちゃんの服を借りるわけにはいきませんからね」
「じゃあ、俺はその辺で待っとくわ」
「ダメです。ちゃんと下着選び手伝ってください」
「おい、さりげなく直登を誘惑しようとすんな。てか、お前もまだ目合わせられねえだろ」
「それは⋯⋯まあ⋯⋯はい」
真冬ちゃんの声音から表情を想像してみたが、あまりうまくいかなかった。
結局俺もそのまま服屋に足を踏み入れた。




