朝食前の事件
真冬ちゃんはじーっとこちらを見ている。ああ、これは誤魔化しようがないな。
「⋯⋯ああ、何ていうか侵入してきた。真冬ちゃんが心配だったみたい」
「ふ〜ん、そうですか。お兄さん、何か変な事されませんでしたか?」
「いや、されてないから大丈夫だよ」
「お兄さん、何か変な事してないですか?」
「す、するわけないさー!!」
「するわけないさって、どうして急に変な口調なんですか?」
「ああ、いや、別に?」
いかん。昨日のあの感触を思い出してしまい、心臓がバクバク鳴っている。ヤバい、こればかりは全力で誤魔化さなきゃ!
真冬ちゃんはさらに距離を詰めて、こちらをじっと見つめてくる。そのくりくりした目からは意外なほどの圧力が感じられて、俺はごくりと唾を飲み込んでしまう。
「じゃあ最後の質問です。お兄さん、昨夜は本当に何もなかったですか?」
「⋯⋯な、何もありませんけど?」
「ファイナルアンサー?」
「はい、ごめんなさい。なんか知らないけど胸に手を押しつけさせられました。お礼だそうです」
素直に事細かに白状してしまう俺。だって怖いんだもん。
「あのババア⋯⋯汚い真似をやってくれましたね。許すまじ」
「うん、真冬ちゃんが汚い言葉遣いになってるから気をつけようね」
「お兄さん、ちょっといいですか?」
真冬ちゃんはこちらの返事も聞かずに俺の手を取るとそのまま自然な流れで自分の胸に押しつけた。
「はあっ!?」
「んっ⋯⋯!」
突然の行動に驚く俺とぎゅっと目を瞑る真冬ちゃん。
ぶっちゃけそこまでではないものの、たしかにそれとわかる膨らみに、右手の意識が全部持っていかれた。
すると、ドタバタと足音が聞こえてくる。
「おい、お前ら何ドタバタやってんだ!飯冷めるだろうがぁぁあああああい!!?」
ズカズカと部屋に入ってきた夏希さんは、この異常な状況に風変わりな悲鳴を上げた。
「お、お前ら何やってんだ!直登、浮気か!浮気なのか!」
「とりあえず浮気ではないのは確実です!変な状況ではありますが!」
「お姉さん、ちょっとこっちにきてください」
「言われなくても言ってやらぁ!お前、直登に何させて⋯⋯」
「えいっ」
真冬ちゃんはそれまで自分の胸に当てていた俺の右手を夏希さんの胸に押しつけた。
昨夜とはまた違う感触の豊満さが右手の感覚を突き抜け、脳を刺激してきた。
一方夏希さんは、何が起こったかわからないキョトンとした表情をしていたが、ゆっくり視線を下ろすと、顔が一気に真っ赤になり⋯⋯
「っ〜〜〜ーーーーーーーーーーーーーーー!」
この後、意外なくらい可愛らしい悲鳴が朝の日高家に響いた。




