こっそり
駅から出ると、見慣れた景色に対する安心感からか、急に体の力が抜けたような気分になった。要するに早く家に帰ってもう一度眠りたい。
「じゃ、この辺で解散するか。そろそろ家に帰らないとチビ達が寂しがるからな」
「お姉さん、今日はありがとうございました」
「帰り気をつけてくださいね」
「おう、ありがと。おい、真冬。直登に変な事すんなよ」
「私、お姉さんと違ってがっついてませんので。さ、どうぞお帰りください。ハウス!」
「ぐっ……やっぱ可愛くねえな!コンチキショウ!またな!!」
弟と妹達のために全速力で立ち去るその背中を見送りながら、真冬ちゃんは面白そうにくすくすと笑っていた。
「やっぱりあの人は賑やかですね」
「からかいすぎだよ……」
俺だったら怖くてとてもできない。ほんと度胸あるな、この子。
「お兄さん、『ほんと胸あるな、この子』なんてやめてください。セクハラですよ」
「中途半端に心読むのやめてくんない!?何で『度』だけ取り除かれてるんだよ!」
「あははっ、冗談ですよ、冗談」
「心を読まれたのは冗談でも何でもないんだけどな」
それからは真冬ちゃんを家まで送ることにして、道中は京都で観たあれこれについて語り合った。はっきりと覚えているのに何故か随分前のことのように思えてしまう。
「あっという間の時間でしたね」
偶然同じ事を考えていたのか、真冬ちゃんが同じ感想を口にした。
「どう?いい思い出になった?」
「はい、まあサプライズはありましたけどね」
「うん。それは確かに……」
「うふふ、次は3人で南極なんかもいいですね」
「いや、さすがにそれはぶっとびすぎでしょ。南極で二人の喧嘩を止めるのはしんどいわ」
「あははっ、じゃあ富士山とかどうですか?」
「それはそれで実現しそうで怖い」
「いいじゃないですか〜、お兄さんどうせ暇だし」
「シンプルに失礼だな!友達たくさんいるわ!」
「ええっ!?」
「その驚きようは何!?」
「いや、てっきりギャルゲーの主人公ばりに女の子としか絡みがないのかなって……」
「それは物語の都合上だ!」
そんな他愛もない会話をしながら歩いていると、真冬ちゃんの自宅の近くまで来ている。
「ちょっと上がって泊まっていきます?」
「『ちょっとお茶でも飲んでいきます?』みたいなノリで言うんじゃないよ」
「あっ……」
何かに気づいたような反応を見せた真冬ちゃんの視線を辿ると、少し先にある真冬ちゃんの家の前で、彼女の父親と母親が立ち話をしているのが見えた。




