はいっ!?
どうしよう?
真っ先にそんな言葉を頭の中で呟いた。
真冬ちゃんの両親が立っているだけならそんな事を考えたりはしなかった。
だが、少し離れた場所に立つ二人の雰囲気はこの前より一層暗いものに感じられた。さらに言うと、この前みたいに隠そうとする感じもなかった。険悪とは違うがとにかく薄暗い。
真冬ちゃんもそれを察したのか、立ち止まったまま二人をじっと見つめている。
そうしていると少しだけ風が頬を撫でていき、それにつられるように二人の視線がこちらを向いた。
当たり前だが俺達が割と近くにいることに驚いている様子だ。それだけ自分達の話にしゅうちゅうしていたらしい。
だが、そこはさすが大人と言うべきか、二人はすぐに気持ちを切り替えたように作り笑いを向けてきた。
「おかえり、真冬」
「あら、直登くんも一緒だったのね。送ってくれてありがとう」
「ど、どうも……」
「…………」
真冬ちゃんは無言のまま二人に視線を向けていた。長い黒髪に少し隠れながらも無表情なのは確認できた。
「あの、真冬……ちょっと話があるから中へ入ってくれる?」
「嫌です」
食い気味に真冬ちゃんが言い放つと、ご両親は意外だったのか目を細めた。
「ど、どうしたんだい?今はそんなワガママを……」
「それでも嫌なんです。あとしばらく家には帰らないつもりです」
「「「は?」」」
3人の声が重なった。そのうちの一人には俺も含まれている。今さっきまで家を目指していたのにいきなり何を言い出すんだ、この子は。
すると、彼女は俺の腕にしがみついてきた。
「私、お兄さんの家にしばらく泊まろうと思うんです。そう遠くない将来を見据えて」
「「「…………」」」
沈黙。
またもや彼女以外の三人が同じリアクションをしてしまう。ていうかマジで初耳なんですけど!?あと緊張しちゃうから腕にしがみつくのやめて!!
「ま、真冬?何を言ってるの?そんないきなり男の人の家に泊まるなんて感心しないわ」
「大丈夫ですよ。将来を約束した仲なので」
「じゃあ……しょうがないわね」
「ええっ!?」
あっさり認めた母親に対し、父親が驚いて目を見開いている。ちなみに俺は驚きすぎて声が出ない。なんかいつの間にか許婚できてた!
父親の方はもちろん俺に訝しげな目を向けてきた。
「ほ、本当に君は、真冬と将来を誓い合っているのかい?」
「えっ?いや……」
「さ、行きましょう、お兄さん」
「はいっ!?」
真冬ちゃんが俺の手を引いて勢いよく駆け出した。その握る手の力強さに、彼女の今の心境が表れている気がした。
少ししてから振り返ると、二人の親はぽかんとこちらを見ていた。




