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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第4章 女王蜂の今昔
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14. 霞のお料理教室

 リベリオンの素体捕獲任の務妨害と言うクィンビーの無茶振りに対して、大和はどうにか無事に生還することが出来た。

 リミッター解除の影響で全身が筋肉痛のよう状態になってしまったが、怪人計三体を相手取った経費としては安い物だろう。

 大和に取ってはリミッター解除を行うのは今回で三度目であり、この感覚にも慣れすら感じていた。

 五体満足で苦難を乗り越えた大和は再び、平和な夏休みを満喫している筈だったのだ。

 しかし戦いから数日経ったある日、自宅で療養をしている筈の大和の表情はどういう訳か余り優れない物になっていた。


「ねぇねぇ、これから何が始まるの?」

「あの丹羽さん、この方は…」

「博士、この状況は…?」

「…すまない」


 大和の家のリビングに三種三様の美少女が揃っていた。

 一人は艶やかな黒髪が美しい少女、元ガーディアンの戦士である黒羽 愛香。

 涼しげなワンピースを着る彼女は、避暑中のお嬢様と言った佇まいである。

 一人は飾り気の無い黒縁メガネを掛けたショートカットの少女、元リベリオン開発主任のセブン。

 黒羽と力によって休日の制服着用を卒業した彼女は、花柄のシャツにスカートと言う女の子らしい格好であった。

 一人は髪をポニーテールでまとめた少女、現役リベリオン怪人のクィンビー。

 タンクトップにショートのデニムパンツと言う格好は彼女の見事なスタイルを全然隠す役割を殆どしておらず、大和は目のやり場に困った。

 かつて敵味方に分かれて死闘を繰り広げた面子が揃い、大和の家は酷く混沌した状況になっていた。

 この状態では暢気に家で寛ぐ事など出来る筈も無く、大和はある意味で数日前の戦いの時以上のプレッシャーすら感じていた。

 一体どのような理由があった、彼女たちは大和の家に集まったのだろうか。











 ガーディアンの戦士をリタイアする事になり、今までガーディアンの活動に全てを掛けて来た黒羽は情熱の行き場所を失った。

 そして燻っていた黒羽がガーディアン時代に世話になった三代の血縁である三代 八重と言う名の少女、セブンの生活環境の改善と言う新たな使命を見つける事になる。

 人間に必要な最大要素は衣・食・住であり、まず黒羽はセブンの生活環境がこれを満たしているか考えた。

 住は元々問題無い、セブンは一人暮らしには十分なワンルームの部屋があった。

 衣については先日、黒羽がセブンを連れ回して買い物を行い、少なくとも今年の夏は十分の乗り切れる衣類を揃えた。

 残りは食であり、黒羽はセブンの食生活について情報収集を始め、やがて彼女の悲惨な食生活の実情を知ることになる。

 基本的に食に無頓着であるセブンは、普段の食事は全て出来合い物やインスタントで済ましていた。

 まともな食事を取るのは学校の学食で取る昼食か、たまに大和が差し入れで持ってくる食事がある時くらいである。

 セブンのそんな不健康な食生活を許すことが出来なかった黒羽は、セブンの食事改善の活動に乗り出すことになった。


「誰かに食事を作って貰うだけでは根本の解決にはなりません。 やっぱり八重君にはある程度自炊をして貰わないと…」

「博士が料理ですか…」

「はい、けど上手く八重君に料理の仕方を教えられるか不安で…」

「ああ、それなら適任の人を紹介出来るかもしれません」


 セブンの食生活を改善する方法について、黒羽は最近知り合った友人に電話で相談をした。

 その友人、大和もまた前々からセブンのインスタントオンリーの生活に気になっていたので、黒羽の動きに賛成であった。

 そして彼らはセブンの食生活を変えるには、セブンが自身の手で料理を作っても貰う必要があると言う結論に達する。

 しかしセブンにどのように料理の仕方を教えるかが問題だった。

 そこで大和はセブンに料理を教える人材として、料理の専門家である最適の人材を紹介したのだ。






 大和の自宅のキッチンは、他の一般的な家のそれとは比較して明らかに整っていた。

 料理研究家である大和の母の霞のために、わざわざプロ仕様に作られた調理場なのである。

 そのキッチンでエプロンを付けた霞は、同じようにエプロンを着た二人の少女に料理を教えていた。

 大和はセブンに料理を教える人材として、料理研究家である霞にお願いをしていたのだ。

 霞は息子の頼られた事が嬉しかったのか、大和の頼みを快く承諾し、臨時の霞のお料理教室が開かれることになった。


「そうよ、分量はそれ位。 その調子よ、八重ちゃん。

 ちゃんとレシピ通り作れば、美味しい料理が出来上がるからね」

「…了解した」


 最強の怪人を作り出すという研究が人生の全てであるセブンに取って、料理スキルを学ぶことは無駄な事でしか無かった。

 しかしセブンは黒羽のような純粋な善意で行動する人間に弱いのか、渋々と言った様子で霞から料理を習っているようである。

 恐らく料理などした事が無いのか、セブンの手付きは素人の大和から見てもぎこちない物であった。

 何故か包丁捌きはそれなりの物であったが、それはもしかしたら彼女の研究のために身に着けたメス捌きの応用であったかもしれない。

 霞の視点ではセブンは、生き別れになっていた息子と再会させてくれた恩人である。

 そのため恩返しの意味も込めて、霞は気合を入れてセブンの指導をしていた。


「愛香ちゃんは手馴れているわね。 私が教えることなんて無いかもしれないわ」

「いえ、とんでも有りません。 やはりプロの人の教えは色々と勉強になります」

「うふふ、ありがとう」


 一方、父子家庭で育ち、以前から家の台所を任されている黒羽の料理スキル自体はそれなりの物である。

 手馴れた手付きで料理をする姿は様になっており、プロの霞が感心するほどであった。

 最初は片足の自由が利かない黒羽を危ういんでいた霞であったが、黒羽はハンデを全く感じさせない手捌きを見せた。

 日常生活で困らない程度には、黒羽は今の自分の体と付き合うコツを掴んでいるようである。

 霞の好意でセブンと一緒に料理教室に参加することになった黒羽は、真剣に霞の指導を受けていた。

 地元で活躍する料理研究家である霞の名を知っていた黒羽は、無償で指導をしてくれる霞に感謝し敬意を持って接した。

 そんな黒羽の態度に好感を持ったのか、霞は黒羽に対しても丁寧に料理の指導をするのだった。

 こうして霞のお料理教室の一回目は、和やかな雰囲気で終わりを迎えることになった。









 そして今日は霞のお料理教室の二回目の開催日であった。

 参加者であるセブンと黒羽が大和の家に居るのは当然なので特に問題は無い、問題はセブンが連れて来たたクィンビーである。

 たまたまセブンの部屋を訪れていたセブンは、料理教室に参加するために大和の家に向かうセブンに付いて来てしまったのだ。

 何時もと変わらず無表情であるが、何処か申し訳無さそうな雰囲気をしているセブンの様子を見ると、一応彼女はクィンビーが付いてくるのを止めようとしたのだろう。

 しかし怪人になる以前から傍若無人な性格をしていた蜂型怪人を止める術を、セブンは持ち合わせていなかったようである。


「く、黒羽さん、こいつは妃 春菜。 博士の友達で、今日は博士に付いてきちゃったみたいなんだ。

 妃、この人は黒羽 愛香さん。 博士の学校の先輩なんだよ」

「ふーん」

「八重君の友達ですか…」


 大和の自宅で期せずして対面することになった黒羽とクィンビー、しかし彼女たちの間で一触即発の事態にはならなかった。

 そもそも黒羽は人間の姿をしているクィンビーが、かつて自分がコア100%開放を強いられることになった怪人であることを知らない。

 クィンビーの方は反応を見る限り、黒羽が以前に死闘を繰り広げたガーディアンの戦士であると気付いていないらしい。

 二人の事情を知る大和は一触即発の事態にならなかった事に安堵しつつ、とりあえず二人の顔合わせの仲介をした。


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