12. 襲撃
リベリオン日本支部、日本の某地方に極秘に建てられたリベリオンの前線基地である。
悪の組織の性質上、とある山中に建てられたこの施設の場所は極秘でありリベリオン関係者以外には誰にも知られていなかった。
勿論、日本の警察やガーディアンたちがこの基地を血眼になって探していたが、リベリオンの優秀な情報部の活躍によって秘密は守られ続けていた。
リベリオン日本支部のメンバーは信じていた、決して自分たちの住処はガーディアンの連中如きに見付かることは無いと…。
「何故、ガーディアンの連中がこの支部の場所を!?」
「解らん、しかし奴らが既に施設の中に潜り込んでいるのは確かだ!!」
「報告です、第3格納庫が爆破されました!!」
「くそっ、連中は何時の間にこれだけの爆弾を仕掛けたんだ!!」
しかし彼らの盲目的な信頼は、日本支部へのガーディアンの襲撃という最悪の事態によって裏切られた。
支部周辺に設置された監視カメラの映像から、戦闘準備をしたガーディアンの一団が支部に向かっているとの情報が入ったのだ。
加えてそれと同タイミングで基地内の各所で謎の爆発が起き、基地内に少なからずのダメージを受けた。
明らかにこの爆発は人為的なものであり、この事態が迫り来るガーディアンの手によるものだと判断するのは自然な流れだろう。
基地内に既にガーディアンの浸入を許したと判断したリベリオン日本支部は、混乱の極めに陥っていた。
「とにかく現在の状況を報告してください!」
「地下の脱出口は無事です!」
「よろしい、では支部内の研究者たちから優先して脱出させて下さい」
「ガーディアンたちの対処は…」
「戦闘可能か怪人を集めなさい、脱出が完了するまで奴らの相手をする必要があります」
「し、しかしそれは…」
ガーディアン襲撃と言う緊急事態に対して、支部内の作戦室には主要な怪人たちが集まっていた。、
蟹型怪人によってどうにか統制を取り戻したリベリオン日本支部は、直ちに支部からの撤退の準備を進めている。
既に敵に見付かった秘密基地に価値は無く、彼らは早々に支部を捨てる決断をしたのだ。
しかし逃げるにしても迫り来るガーディアンたちを喰いとめなければならず、一部の怪人たちは殿として残る必要があった。
支部を背後に多勢のガーディアンと立ち向かわなければならないのだ、幾ら怪人とは言っても生存の確立は低いだろう。
怪人とは言え死ぬのは怖いのか普段は人間を見下している傲慢な怪人たちも、この時ばかりは及び腰になっていた。
「…私が残るわ」
「クィンビー!? その戦闘員は…」
誰もが死と隣り合わせとなる殿になることを躊躇う中、怪人たちの集団の中からクィンビーが蟹型怪人の前に出てきた。
彼女は何故か胸に風穴が開いた戦闘員の死体の首を掴んでおり、その死体を蟹型の怪人に見せ付けるように掲げる。
「ガーディアンの鼠よ。 こいつが支部の中に爆弾を仕掛けてたわ」
「…戦闘員に紛れて浸入していたのですか。 よく正体が解りましたね」
「私の可愛い蜂たちを舐めないでよ。
何かの小細工で監視カメラを無効にしていたようだけど、私の蜂からは逃れられなかったわ」
ガーディアンは敵対するリベリオンの情報を絶えず求めていた。
そこで消耗品扱いされている戦闘員は雑に管理されていることに目を付け、それを利用して密かに一人の諜報員をリベリオン内部に潜り込ませていたのだ。
情報通りリベリオンは戦闘員のことをろくに見ておらず、諜報員は戦闘員の振りをするだけで容易に支部内で諜報活動を行えていた。
諜報員はハッキングで支部内のセキュリティを無効にして、可能な限りの情報をガーディアンに送り続けた。
このまま情報収集に徹していたら、この偽戦闘員は生きて支部から脱出することも可能だっただろう。
しかし残念ながらリベリオン日本支部襲撃作戦の援護攻撃として、支部内の破壊工作を命じられたのが運のつきだった。
支部内の武器庫から現地調達した爆薬を使って支部の機能の一部を停止させた所までは良かったのだが、監視カメラの目は誤魔化せてもクィンビーの大蜂は誤魔化せなかった諜報員は、爆弾を設置している現場をあえなくクィンビーに見付かってしまった。
「鼠を捕らえたことは褒めましょう。
しかし殺したのは頂けないですね、この鼠が生きていたら色々と使い道があった」
「…こんな奴、生かしておく必要は無いわよ。
そうよ、ガーディアンの連中は皆始末してやらないと…」
諜報員を生け捕りにできていたら、その口を割ればガーディアンの情報を得られ、諜報員の連絡手段を使ってガーディアンに語情報を送る細工もできる。
浅はかにも諜報員の息の根を止めた部下に対して蟹型怪人は、諜報員を捕らえたことを褒めると同時に苦言を呈した。
何時ものクィンビーだったら、ここで蟹型怪人に反発して怒鳴り声をの一つでもあげただろう。
しかし今日のクィンビーの様子は何処か普段と違い、押し黙ったままである。
クィンビーの表情からは、決壊寸前のダムのような何時破裂してもおかしくない危うさを感じられた。
「そういえばあなたにはセブンの護衛に行かせた筈ですよね。
何故、セブンと共に既に基地を離れている筈のあなたが此処に居るのですか。 まさか任務放棄…」
「…必要無くなったのよ」
そもそもクィンビーがこの場に居ることがおかしい。
蟹型怪人はリベリオン襲撃の報が入った時、クィンビーに対してセブンを連れて脱出するように命じていたのだ。
怪人の製造技術は組織の宝である、その技術を持つ貴重な研究者たちはリベリオンにとって必要不可欠な存在である。
人間を見下す怪人が多い中で蟹型怪人は研究者の重要性を理解しており、今回の事態でも彼は真っ先に研究者と研究データの退避を第一に考えていた。
その中でセブンは怪人開発科の主任である、例え最近スランプ気味であろうともバトルスーツの研究という掟破りをしようとも、その頭脳は組織の財産だ。
そのため蟹型怪人は、最近セブンと交友を深めているらしいクィンビーを向かわせた筈だった。
「必要無くなった…、ま、まさか!?」
「あの子の研究室も爆破されていた…。 部屋の中は木っ端微塵に吹き飛んでて…」
「そんな…」
今より少し前、蟹型怪人の指示でセブンの元に向かったクィンビーは、そこで変わり果てた研究室の姿を目撃することになった。
すぐに支部の各所で起きていた爆発で此処でもあったのだと理解したクィンビーは、慌ててセブンの姿を探し始めた。
しかし爆弾の威力が凄まじかったのか室内には原型を留めている物の方が少ないくらいで、クィンビーはセブンの破片さえ見つけることは叶わなかった
その代わりクィンビーは瓦礫の下から奇跡的に原型を留めている死体、覆面に9711と書かれている彼女の良く知る奇妙な戦闘員を発見することになる。
戦闘員の死体を見つけたクィンビーは怒りの叫びをあげながら、この惨状を引き起こした下手人を見つけるために大蜂を放ったのだった。
「…ガーディアンの連中は皆殺しにしてやるわ」
短い付き合いではあったが、クィンビはーセブンや9711号のことが気に入っていた。
クィンビーの取って置きの笑い話にも表情一つ変えず、幾ら話しかけてもろくに返事を返さないセブン。
しかしセブンはちゃんとクィンビーの話を聞いていたらしく、稀に何処か間の抜けた返事をして彼女を笑わせてくれた。
かつてクィンビーが間違えて戦闘に連れて行った、他の戦闘員たちと違って人間臭い行動をする9711号。
クィンビーが食堂へのお使いを頼んだ時などに、何処か面倒くさそうな様子で渋々と命じられた仕事をする9711号の姿は見ていて愉快だった。
クィンビーはこのセブンと9711号の命を絶ったガーディアンたちに対して、復讐心を滾らせていた。
リベリオン日本支部へ向かうガーディアンの一団、ガーディアンの戦力が一同に介したこの場には様々な形態のバトルスーツが存在している。
バトルスーツの名をそのまま表したように、全身を体にフィットしたスーツで覆ったスーツタイプ。
動きを阻害しないように四肢と体の重要部部のみが装甲で覆われている軽鎧タイプ。
まるで中世の騎士のように全身を厚い装甲で固めた重鎧タイプ。
果てはどう見ても戦う姿には見えないフリフリヒラヒラな衣装の魔法少女タイプなんてものもあった。
その一団の中に二振りの剣を備えた軽鎧タイプのバトルスーツ、かつてクィンビーと激しい戦いを繰り広げた黒羽愛香が使っていたスーツを纏った者が居た。
その人物は本来の所有者である黒羽で無く、彼女のパートナーだった白木浩司であった。
「黒羽、君の分まで頑張るよ。 絶対にリベリオンを倒して見せる」
先の戦闘で行ったリミッター解除のダメージが抜けておらず、黒羽はいまだにガーディアンの医療施設で治療を行っている。
例え治療が終わっても黒羽もう戦うことは出来ない、そう医師に告げられた彼女は白木に己のバトルスーツを託したのだ。
そして白木は雪辱の場としてリベリオン日本支部への襲撃作戦の参加を許され、現在他のガーディンの戦士たちとともにリベリオン日本支部へと向かっている。
白木は戦闘員如きに自身のインストーラを奪われた時の屈辱と、黒羽が命がけで自身を守ってくれた時の無力さを忘れていなかった。
彼は脳裏に刻まれた怨敵、黒羽を追い詰めたクィンビーと自分からインストーラを奪った9711と額に書かれた戦闘員に対して敵愾心を燃やしていた。




