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欠番戦闘員の戦記  作者: yamaki
第1章 リベリオン
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11. 不協和音



 リベリオン日本支部の研究室内で、一人の人間と一体の怪人が向かい合っていた。

 一人は部屋の主であるセブン、一体はクィンビーの上司にあたる例の蟹型の怪人である。

 何処と無く不穏な空気が漂う中、淡々と話をしている彼らの様子は9711号は部屋の隅で縮こまりながら窺っていた。


「…あなたが我々の組織に与えた貢献があるからこそ、こうして穏便に話を進めているのです。

 解ってください、セブン」

「拒否する、この研究はより強力な怪人を生み出すために必要なこと」

「つくづく頑固ですね、あたなも…」


 蟹怪人は幾分か苛立たしげな様子で、現在の心境を表すように鋏となっている腕を上下に揺さぶっていた。

 対するセブンは相変わらずの無表情だが、その瞳からは明らかに蟹怪人に対しての敵意が窺えた。


「いいですか、ガーディアンのバトルスーツを研究することは組織で禁じられているのです。

 奴らの装備を真似たおもちゃを作るだけならまだしも、バトルスーツを直接解析するなど言語道断…」

「そもそも、バトルスーツの研究を禁じているのがおかしい。

 彼らの装備は非常に優秀、この力を怪人に応用すればさらなる発展が…」

「我々に人間如きが使う武器など必要無いのですよ、これは我らの首領が定めた方針です」


 事の始まりは以前の戦闘で得た戦利品、9711号がガーディアンの戦士から奪ったバトルスーツのインストーラにあった。

 前々からバトルスーツの性能を怪人に使いたいと考えていたセブンは、これ幸いとスーツの研究を始めた。

 しかし9711号は今まで知らなかったのだが、実はリベリオンではバトルスーツに対する研究行為が禁じられていたらしい。

 最強の怪人を生み出すと言う信念のために、セブンは密かにバトルスーツの研究という掟破りを起こしたのだ。


「本来ならあなたは問答無用で処刑されてもおかしく無いのですよ、奴らの武器の研究をするなど…」

「…」


 どうやらセブンの秘密の研究が何処からか蟹型怪人の耳に入り、こうして直々に彼女の元へ問い質しに来たらしい。

 蟹型怪人はセブンに対して直ちに研究を止め、バトルスーツのインストーラを提出するように命じる。

 セブンはその命令を拒絶し、蟹型怪人に対してバトルスーツの研究の必要性を説き続けていた。

 しかし蟹怪人はセブンの言葉に耳を貸す様子は無く、やがて言葉が尽きたのかセブンは無言になってしまう。


「…解りました、少し猶予をあげます。

 この組織で今後も研究をしていくためには、どのような選択をするのが利口かよく考えて見てください」


 蟹型怪人はセブンに明らかな脅しの言葉を残し、そのまま研究室を立ち去っていった。

 研究室には視線を下に向けて固まるセブンと、その様子を不安げに見守る9711号だけが残った。












 組織の地下に広がる訓練場で、9711号は日課であるファントムのテスト走行を行っていた。

 蟹型怪人の訪問後、相変わらず表情が外に出ないので解り難いが、節々の態度から不機嫌であることが察しられたセブンと一緒に仕事をしたことでストレスが溜まったのだろう。

 9711号はその鬱憤を晴らすかのように、アクセルを全開にしてファントムを猛スピードで走らせた。


「"全くあの蟹野郎は最悪でねー、お母様にあんた態度を取るなんて許せません!

 マスターもなんでびしっと言ってやらなかったんですか!!"」

「"いや、そもそもあの時は発声器を切っていたから喋れなかったし…」


 相変わらずファントムのお喋りは止まらず、通信機越しに延々と9711号に話しかけてくる。

 今日の話題は先ほどの蟹型怪人とセブンの話らしく、ファントムは生みの親であるセブンに対して辛くあたった蟹型怪人に対しての文句を吐き続けていた。

 

「"…あれ、そういえば何で研究室であった話をお前が知っているんだよ?"」

「"ふっふっふ、ファントムちゃんの優秀な人工知能に掛かれば、組織内の監視カメラの映像を盗み見ることなんて簡単ですよ!!"」


 リベリオン日本支部の各施設にはセキュリティのため、所々に監視カメラが設置されている。

 悪の組織にセキュリティが必要かどうかは意見が分かれるだろうが、とりあえず監視カメラは24時間稼動して絶えず組織内の映像を記録していた。

 普段は格納庫に置かれているファントムは、組織のネットワークを通じて監視カメラの映像を盗み見ているのだろう。


「"いいのかよ、それ…"」

「"大丈夫ですよ、そもそもこの施設のセキュリティを組んだのはお母様ですからね、生みの親が同じ私に取ってはあんなセキュリティは意味なしですよ"」

「"へー、博士ってそういうことも出来るんだー、本当に悪の天才科学者って感じだな…"」


 怪人の設計を本職にしていることから、セブンの本業は恐らく生物学の方面なのだろう。

 しかし彼女の才はそれだけで留まらず様々な分野に渡る、彼女によって生み出されたこのファントムというマシンがその証拠だ。

 9711号はファントムとの何気ない会話から、情報系にまでに手を出しているセブンの多才さを改めて知るのだった。








 本日のノルマを達成して格納庫にファントムを戻した9711号は、何時も通りにファントムの手入れをしていた。

 この作業を終えたら再び重い空気が漂う研究室に戻るのかと思うと、9711号は憂鬱な気持ちで手の動かしていた。


「"あ、マスター、ちょっとお願いがあるんですが…"」

「"ん、何だよ、お願いって言っても俺が出来ることなんて高が知れているぞ"」


 お願いと言っても何時もの馬鹿話の延長で大したこと無いと考えたのだろう、9711号は作業の手を止めないままファントムに適当に相槌をする。

 しかし次の瞬間、ファントムから飛び出したとんでもないお願いの内容に9711号は大層驚かされることになる。


「"そんなに難しいことじゃ有りません、私と一緒に組織から逃げませんか?"」

「"…はっ?"」


 ファントムから余りに意外なお願いをされてしまい、呆気に取られた9711号は思わず手に持っていた手入れ用の機材を落としてしまう。

 機材が床に落ちた音がやけに格納庫の中に響いていた。

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