表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/14

カフェ店員の紫晶(しあき)、人生を変える大ショック

カフェを愛する人に贈る、恋と夢のハートフルストーリー。

あなたの心を癒しながら、夢を叶える力を引き出す「機能小説」、始まります!

第1話 ある夏の日の衝撃


 品川のビジネス街。駅前にずらりと並ぶビルの一角にあるカフェ・プルミエは、夕方の客でにぎわっていた。

「カフェオレ、ホットで。Mサイズでご用意いたします」

 石田紫晶いしだしあきはきびきびとした動きで、客の注文をさばいていた。


 カフェ・プルミエは創業14年のカフェチェーンで、紫晶は専門学校を卒業してからここで契約社員として4年働いていた。店では店長のすぐ下の主任で、バイト13名をシフトで回していた。


 店長の柳悠樹やなぎゆうきは紫晶よりも2つ上で、父親が創業グループの1人だ。そのため、彼は将来、このカフェ・プルミエの経営陣の一人になることが約束されている。


 悠樹が1年前にこの店舗に来たとき、紫晶は最初、以前の店長よりも若かったので、少し不安を感じた。しかし、悠樹は前の店長よりも細かい点にこだわり、清掃、衛生、経費削減、笑顔、声の出し方など、細かくスタッフを指導した。


(いつか、自分でもカフェを開きたい……)

 それが紫晶の夢だった。

 悠樹の仕事の知識や取り組み方は、紫晶には大いに参考になった。そして、次第に悠樹のもとで働くことが好きになった。


 悠樹はさわやかなアスリート派で、背が高く、甘いイケメンではないが、かっこいいと言える容姿である。紫晶はだんだんと悠樹が気に入っていった。

(こんな人が恋人なら……)

 ひそかにそんな空想を抱くようになった。


 紫晶は狭いキッチンで、手際よくオーダーをこなす。

 今、一緒にキッチンにいるのは、2歳年下の三浦綾乃みうらあやのだ。パートナーとして問題はない。


 紫晶は綾乃が8か月前にここに入ってきたとき、そのかわいらしい見た目に圧倒された。

 大きな目、長いまつげ、丸い額。逆三角形の顎のライン……。

 どれを見ても、女の目からも愛らしく、思わず「なんでカフェで働くの?!」と思ってしまうほど、かわいらしいのだ。


 最初はモタモタしていた綾乃だが、今ではすっかりと慣れて、動きにぶれがない。

 これは、紫晶の教育のたまものだと自分では思っていた。



 紫晶はバックヤードで2か月後のシフトを確認する。

「あれ? 店長と三浦さん……。8月の後半のシフト、入っていませんけど……」

 店長の悠樹に言うと、彼は照れたように微笑んでこう言った。


「ああ、僕、結婚するんです。ちょっとお休みします。石田さん、そのとき頼みますよ」

「えっ…………」


 店長が結婚。

「あの……。もしかして、三浦さんと……」

「あ、そういうことです」


 照れながらもサラッと言った悠樹の言葉が、紫晶の頭を直撃した。

(えっ、どういうこと……?)


 紫晶の心の中に、何かが生じた。

 だが、それは言語化できない、真っ黒な嵐の雲のようだった。



第2話 癒しの石の力



 悠樹に好きだと言ったわけではないし、彼も自分に気があるような態度をしていたわけではない。純粋に仕事場だけの関係だ。


 目黒駅近くに行きつけの大手チェーンのカフェがある。

 紫晶はすぐに家に帰る気になれず、ここでコーヒーを注文したまま、飲みもせず、うつむいていた。カップを持ったまま、じっと動かずに止まっている。


「なんで結婚相手がうちのスタッフなの……?」

 そんな言葉が頭を何度もめぐる。

「なんで三浦さんなの……?」


 自分が何を怒っているのかわからなかった。

 ただただ、悔しい気持ちがあふれて、ポトンと涙が落ちるのだ。

(おかしいな……。どうしちゃったんだろう……)

 ときどきハンカチで涙を拭く。


 こんなに彼を好きだと思っていたわけではなかった。それなのに、悠樹が自分にとってすごく大切な存在なのに、自分の知らないところで奪われたように感じている。

(私、どうかしてる……)


 しばらくそこで時間を過ごした後、紫晶は自宅のある目黒通りを一人で歩く。


 すでに町は暗くなり、人通りもあまりない。

 あとは通りを右にまがって、アパートに帰るだけだ。

 家具店が並ぶインテリアストリートを歩いていると、角を右に少し入ったところに、新しい店があることに気づいた。


 それは、パワーストーンの店だった。

 紫晶はその店の前に立ち、ウィンドーに並ぶ石を見た。



 それはどれも大きめの石で、芸術作品のように流木と水晶を組み合わせたものや、切り出したままのアメシストの大きな原石などだ。それらがライトアップされて展示されている。

 涙を拭いてその石に魅入った。



「いらっしゃいませ。中をご覧になりませんか?」

 60代の女性の店員がガラス戸を開けた。

「え……」

 紫晶は誘われるまま、店内に入る。


「うわ~……」

 あまりの美しさに感嘆の声が上がる。

「どうぞご自由にご覧くださいね」

 そう言って、店員は少し下がった。


 それは、アメシストカペラと呼ばれる形の石で、小さなドームのような形をした岩だ。

 高さは60センチから120センチ。

 幅は30センチから80センチくらいの石がずらりと並んでいる。

 小さいものでも100万円台。大きなものは数百万円だ。


 紫晶の名前は、母の婚約指輪にはまっているアメシスト、紫水晶から付けたのだと、母が言っていた。

「ふうん。もっといい名前を付けてほしかったのに!」と言ったくらいだ。

 子供のころは、石なんか興味もなかった。

 だが、こんなにも大きなアメシストを見ると、その美しさに目が離せない。


 母の指輪は今、紫晶の指にはまっている。父が母にもっと高価なダイヤの指輪を買ったので、古い指輪を紫晶にくれたのだ。それは、紫晶が持っている唯一の宝石だった。


「これだけの大きな結晶が並ぶカペラは、もうあまり出ないんですよ」

 と店員は言った。


「へえ……。そうなんですね」

 その貴重さは、紫晶にはまったくわからなかった。

 だが、これだけ大きなアメシストは見たことがなく、その濃い紫色を眺めているだけで、心が静まり、ムカムカしていた怒りが消えていく。


「アメシスト、お好きなんですね。指輪もアメシストですね」

 店員は目ざとく、紫晶の指に目を止めた。

「ええ……」


 静まった心に、母の昔の言葉が響く。


「お母さんね。アメシストが大好きなの。だから、お父さんが『婚約指輪に』って買ってくれたのよ。あなたが生まれたとき、嬉しくて、名前を紫晶にしたの」

 そう言って、微笑んだ母の顔が浮かぶ。


 いつの間にか、紫晶の頬に暖かい涙が一筋ツ~ッと流れ落ちた。

 なぜ母の顔を思い出して涙が流れたのかわからなかった。

 今は、悠樹のことで頭がいっぱいなのに……。


「あ、私ったら……」

 思いがけず落としてしまった涙をあわてて拭く。


 その様子を見て、店員はレジ付近から取り出した1枚のカードを差し出す。

「これ、差し上げます。きっとお役に立ちますよ」


 紫晶は店の名前が書いているカードだと思った。

 ところが、それにはこの店の名前ではなく、別の言葉が書いてあった。


「カウンセリングラボ」


 (え……?)

 紫晶は頭が空白になった。

 一瞬、なにが書いてあるのか、よくわからなかった。


次回は、紫晶の心の中で起きていた化学反応の仕組みがわかります!

それを知って、紫晶は……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ