噂2
母とたっぷり話した兄は、その後私が協力すると言うと喜んで王都に帰って行った。
私は母に噂の事を聞いてみたかったけど兄と話したあと無理をし過ぎたのか発熱してしまって、話すのを止めた。
ロイドは「おばぁちゃま、だじょぶだじょぶ?」とベッド脇で心配そうにしていた。
母の「大丈夫よ」という掠れた声を聞いて状況は違うけど、《《その時》》の兄の気持ちが少し解った気がした。
それから暫くして再びカイルがメーチェ領にやって来た。
いつもの様にロイドを預けて仕事へ行き迎えに行った時に共に夕食を取った。
不意にカイルは辺境伯の後継になったのだと思い出して噂の事を聞いてみようと思い立った。
横で食べるロイドの口元を拭いてるカイルを眺めながら私は聞いた。
「あの、社交界とか出席したりしてるわよね?」
突然の質問に吃驚した顔をこちらに向けてカイルは頷いた。
「そう」
私のその言葉に何か変に勘違いしたカイルが慌てて言う。
「で、でもマリナが出たくなければ社交は年一位でいいんだ、王家の主催のだけで出席は構わないし、なんなら後継は「勘違いよ、聞きたい事があるの」引き受、えっ?」
私が言葉で遮ると自分の勘違いを真っ赤な顔で照れながら「聞きたい事って?」と言った。
「モルトワ子爵家の評判とお母様の事なのだけど」
どう切り出していいかわからず言葉を選びながら言うと「あぁ」とカイルは解ったように相槌を打った。
「えっ!何か聞いてたりする?」
「自称親切なご令嬢達から聞いた」
「どんな風に?」
「俺の前妻がマリナだと知った自称親切なご令嬢は別れてよかったあんな噂のある家は俺の家とは釣り合わないって」
「正解では?」
「そんなわけない!俺に釣り合わないんじゃなくて《《俺が》》釣り合うように努力してるんじゃないか!」
カイルは力説するが世間様はそう思う筈がない。
何言ってるの?
そう思って冷ややかな目で見ると、カイルはロイドの頭を撫でて「やめちぇ」と言われていた。
「マリナの母上の噂は侯爵家以上は鼻にもかけていないと聞いてる」
「それは誰から聞いたの?」
「王弟様から」
王弟って⋯⋯噂された本人じゃない!
「知ってて噂を放置してたの?」
「その頃の王弟様の噂はマリナの母上だけじゃないそうだ、ちょっと話すと直ぐ誰かが噂するからいちいち処罰してたらキリがないから放っていたらしいよ」
「でも、お姉様やお義姉様は《《今の》》社交界で聞いてるそうだし、お姉様は学園で聞いたって」
「それは多分嫌がらせじゃないかな、マリナのお姉様達に対して。それにモルトワ子爵家の悪い噂は前子爵と主に叔母のものだ、でもそれも信憑性は無いと思ってたけど、この前のマリナの話しを聞くと、そっちは本当だったのかな?」
「私のお祖父様の悪い噂?」
「あぁ良くも悪くもかな」
「良くも悪くも⋯⋯」
「おじぃちゃま?」
それまで必死に食べていたロイドが聞き慣れない言葉に反応した。
「祖父のことよ」
「しょふ!しょふはしっちぇる」
「そうね祖父の事をお祖父様と言うの」
「おじ《《い》》ちゃま」
そこそこちゃんと言えたロイドに私は嬉しくてニッコリ笑いかけると、上手く喋れた事にロイドも嬉しかったのだろう、カイルの方を向いた。
褒めて欲しいと目で言ってるけれどカイルに解るのだろうか?
「ロイド偉いな!練習できてるのか?凄いぞ!」
褒められたロイドはとても喜んでいる。
破顔が凄い、あの顔は可愛すぎる。
「話しの続きはまた今度でいいか?」
とカイルに聞かれたので頷くとカイルはロイドを抱き上げて「偉いぞぉ」と言いながらポーチに出て行った。
私は残りの食事を食べながら“自称親切なご令嬢”はどんな人なのかと考えていた。




