みんながついていてくれる
「まあ、随分と熱心になって」
「ああ、本当に」
アーロンを見送って以来、座学にも熱心に・・・いや「より」熱心に取り組むようになった私にお母様とお父様は満足げだ。
アーロンに言った自分の言葉で自らも省みたのだ。物理的な力とか魔術だけでは世界は変えられないし、変えてはいけない。アーロンみたいに私も学んでいかなければいけない。
将来自らの身分を明かす道を進むのか、このまま辺境伯家の一員として過ごすのか、どちらにしても物理的な力や魔術だけでは圧倒的に足りないだろう。
そう気が付いて座学により熱心に取り組むようになった私だったが、行儀作法のお勉強へのモチベーションはあまり変わらないので、クラリッサからはややご不満のオーラを感じる。だが、残念ながらそれは高望みだ。
お兄様とエステバンにもアーロンの滞在は刺激になったらしく、これまで以上にそれぞれ取り組んでいるらしい。まあ、お兄様とエステバンは元々座学にも熱心でバランスよく頑張ってたけど。・・・おや?私くらいか、偏っていたのは。
・・・それはさておき、そんな風に日々が過ぎていって、数か月が経ったころ、
「ほんとに!?」
「ああ、ラモーナ様とアーロンは無事に目的地に到着したと報告があった」
お父様が、ラモーナ様とアーロンの無事を教えてくれた。
「よかった・・・」
これで、変えられたはずだ、アーロンの運命を。
ほっとして思わず座り込んでしまった私をお母様が抱きしめてくれる。
「良くやったわ」
「ううん。みんなのおかげ」
私は何もしていない。
「いいえ、あなたが言い出したことよ」
お母様は私お励ますように言って、
「これからも情報共有を続けましょうね」
強く続けた。
・・・うむ。まだまだちゃんと伝わっていなかったようだ。
最近は、辺境伯家に伝える魔術師として忙しくなってきたイライアスは参加できないことも多いけど、アルトゥロとは折を見て続けていた情報共有の会にお母様かお父様が参加することが増えた。今日は、お母様とアルトゥロとお話しようとしていたところで、お母様がアーロンの話を教えてくれたのだ。
「つまり、あなたは前世でこの世界の未来を予知するものをみたのね?」
「うん、だいたいそう」
ゲームというものの概念をこの世界で説明するには私の力が及ばなかったので、大体お母様が言っていることで良いのではないだろうか。
「だけど、変えることができたのね?」
「・・・うん」
「だったら、これからも変えていくことができるわ」
「おかあさま」
「それに」
一度言葉を区切ったお母様は、私に向かって優しく微笑んだ。
「変えられないことがあったとしてもあなたのせいじゃない」
「・・・おかあさま」
・・・本当はずっと不安だった。
これまでエステバンやイライアスの家族を守ることができたように、ゲームの中で攻略対象者に与えられた不幸を回避することができたこともある。だけど、回避しようとしてもできない日がいつか来るかもしれない。
それに。
私では変えられない不幸もある。きっと今までもあっただろうし、これからもあるだろう。
「あなたが背負いこむことはないのよ」
お母様が抱きしめた私を優しくあやしてくれる。
「うん」
「できるだけのことを、これからも一緒にやっていきましょう」
「うん!」
お母様の言葉とぬくもりに、心の重りが解けていく気がする。
「ありがとう」
ぎゅっとお母様に抱きつくと、
「お母様たちがついてるわ」
お母様は穏やかに、だけど強く言ってくれた。
幼少期は今回で終了し、次回からグッと年齢が上がります。




