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未来のために

結論から言うと、アリシアとは仲良くなれた。

 アリシアの父、ウィルモット公爵は、アリシアのことを娘として可愛くは思っているけど、貴族の女性のこの国で一番の幸せは、王妃になることだと考えているし、アリシアが王妃になればウィルモット公爵家としても力を持てるとの思惑も当然あって、アリシアを王太子の婚約者へとなるよう導き育てている。

 だから、王太子とも年齢の近い私のいる辺境伯家に対し、ウィルモット公爵は少し警戒したみたいだけど、お父様が王家への態度で私を王太子の婚約者候補とすることは考えていないことを示してくれて、その後は私とアリシアが仲良くなることに前向きになった。

 王妃を目指す上でライバルにならないのであれば、娘にとって辺境伯家の娘との交際は将来のために悪くない。そういうことだろうと、私は、お父様とウィルモット公爵との会話やウィルモット公爵家でのお茶会でのアリシアとの会話で何となく察した。

 ウィルモット公爵はもちろんご存じでないが、私の本来の生まれからしても、辺境伯家は私を未来の王妃候補にしたいとは考えないだろう。色々と差支えがありすぎる。ちなみにゲームの中でも王太子ザラカイアルートでは、お互いの身分が障害になる展開だった、と思う。ちなみに私は自分では王太子ルートの攻略はしていない。なぜかって?ザラカイアを攻略しちゃうと、最終的に私が王位につけないからさっ。

 ・・・ゲームの趣旨とは。

 と我ながら思わなくもないが、それはともかく現世でも私は王妃になることには興味はないから、お父様とお母様の意向に異論などない。ちなみに隣国の王位を目指すかについては、検討中だ。

 というような前世と現世の事情はありつつも、私のお披露目の後、ウィルモット公爵家から私へお茶会の招待があり、お礼に我が家からアリシアをお茶会に招きと何度かやり取りをして、領地に帰るまでに、私はアリシアと文通をするような仲になった。

 なので、

「おへんじ!」

 領地に無事着いたことを伝える手紙を書いたら、早速アリシアから返事が届いた。

 いそいそと私が手を伸ばすと、

「アレクサンドラ様」

クラリッサに止められた。

「本日のお勉強が終わってからですよ」

 あくまで口調は穏やかなクラリッサであるが、いつもながら逆らえない何かがある。

「はい」

私は大人しく頷いて手をひいた。これからマナーの授業なので、手紙を読んで、あわよくばお返事も書いて授業の時間を減らせないかとのもくろみはあえなく潰えた。

 しかし、いつもこの手を使われている気がする。アリシアからのお手紙や、お茶会でふさわしい態度をとれるようにとか、クラリッサは逆らえない迫力だけでなく、私をのせるのが上手い。素晴らしい教育者だと負け惜しみで考えながら、私は大人しく、一番嫌いなマナーの授業に赴いたのだった。

 いやいやな内心を隠しつつの(クラリッサにはお見通しな気もする)マナーの授業の後は、本日のイネス先生の授業は語学だ。お披露目を終えると、貴族の子供達は、本格的に教育を受け始めるらしい。イネス先生の授業も段違いに本格的な内容になった。こんなに早く!?と思ったけど、前世でも熱心なご家庭はこんなものだったかもしれない。

 領地に残るのであればお兄様の補佐となるし、他家と婚姻を結んでその領地に行く場合でも婚姻相手と共に領地を治めることになる可能性が高い地位に生まれたのだから、少しずつがんばってほしい、と両親には説明された。幼子相手とはいえ、きちんと説明をして納得させようとする両親は立派だ。・・・どうも私は納得していないことには、あまり前向きに取り組まないと思われている節もあるが。そして、それはそのとおりかもしれないが。

 両親の説明と言えば、お披露目から帰ってきてから、ゆっくりと時間をかけて私が両親の実の子ではないことは教えてもらった。私が前世の記憶をもって生まれてきたとは知らない両親は不安そうに、慎重に話をしてくれた。しかし、もちろん心配ご無用だ。私は生まれたときから、は言い過ぎか、今世で意識が生まれてから知っていたし、何よりこれほどに家族に愛情をかけてもらいながら育っているのだ。両親の実の子でないと知ったからと言って揺らぐことはない。

 私の反応にほっとした両親だったが、実はまだ私に言っていないことがある。私に流れる隣国の王家の血筋のことだ。隣国は今直系の王族を謀反で失い混乱の中にあるはずだ。まだすべてを教えるのには早いと考えたのだろう。それも一理あると思うから、私は両親が言ってくれたことも言わないでいてくれたこともそのまま受け止めることにした。

 とはいえ、イネス先生の教えてくれることの内容に、両親のひそかな配慮は感じている。イネス先生は元々隣国の出身らしく言語は隣国言語のネイティブだし、隣国の歴史についても詳しい。いずれ私が隣国に帰国することを望んだ時に役に立つように、隣国のことも学べるようにしてくれているようだ。ゲームの中で描かれる隣国の状況を思えば、私はいつか自分の出自と向かい合うべき時を迎えるのだろう。

 だから、今はできるだけ多くを学んで力を蓄えようと思う。・・・でも、マナーの勉強がなければいいのにな、とも思う。

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