真の強さを手に入れたのだ(多分)
「パーシヴァル様も後継者としてご立派に育たたれている上に、妹御のアレクサンドラ様もこのお歳であれほどしっかりされているとは。辺境伯家は安泰ですな!」
初めて会うおじさまに、お披露目の冒頭で述べた挨拶を、お兄様共々褒め上げられてご満悦な御年5歳、アレクサンドラ・アッカーソン(本来はバルディビア)、ただいま王都でのお披露目の最中です。
前世との年齢をあわせれば前世での成人年齢に達する私である。挨拶などお手の物だ。・・・と言いたいところだけど、クラリッサのじご・・・容赦のな・・・厳格な教育のおかげだろう。
今も、お父様とお母さまに挟まれて、次から次から挨拶に来るおじさまおばさま達の挨拶をにこやかに聞いている。私ったらお利口じゃない?この年齢にしては上出来ではないだろうか。内心悦にいっていると、鋭い視線を感じた。今日は侍女として控えているクラリッサの気を抜くなとの思いが熱く込められた視線だ。
・・・何事も慣れた頃が一番危ないというしなとちょっと関係ないかもしれない、前世で聞いた言葉を思い出しつつ、私は気を引き締めなおした。
「お父様譲りの瞳とお母さま譲りの御髪の色。ご両親に良く似られましたな」
次に挨拶に立った人にそう言われた瞬間、お父様とお母さまが密かに動揺したのが伝わってきた。
「おとうさまゆずり・・・?」
私の瞳は、赤い色。実のお父様からもらったもので、お父様と同じではないはず。・・・ああ、でもそうか。
今の私の瞳には魔法がかけられているんだろう。ゲームでもそうだった。赤い瞳は、隣国の王家の証。私を守るためにお父様がかけてくれた魔法のおかげで、私の瞳は、自分では真の色が見えているけど、他の人からはお父様と同じ色に見える。
お父様とお母さまは密やかに心配してるみたいだけど、大丈夫です。私は、読もうと思えば空気を読める子なのです。
「ありがとうございます」
にこやかに答えて、お父様とお母さまにも嬉し気に笑ってみせる。
「我らの良きところをもらってくれたようで」
内心ほっとしたであろうお父様も何事もないように、にこやかに来客に答える。だけど、次のお客様が来る前に、
「後できちんと話す」
お父様はこっそりと私に言ってくれた。
「はい」
大丈夫ですよ、お父様。私受け止められますので。何なら知ってましたので。
そして、私にはこのパーティー会場で他に気になることがあるのだ。
「おとうさま、おかあさま」
挨拶が途切れたところで、私はそっと両親を呼んだ。
「おともだちつくりにいっていい?」
周りに聞こえないように小さな声で聴くと、お母さまは頷いてくれたけど、
「お行儀よくね」
とくぎを刺してきた。・・・私の信頼度の低さたるやいかに。
「はい!」
良い子のお返事をして歩き出した私の後ろには、クラリッサがついてくる。これは別に私のお行儀が心配なわけではなく・・・いやそれもあるかもしれないけど、単なる風習だ。パーティのときに令嬢や令息を1人にしないのだ。
お目付け役のクラリッサを従えて、向かう相手は決まっている!アリシア・ウィルモットだ。この国の公爵家のご令嬢で、将来王太子となる第一王子ザカライア・スタンフィールドの婚約者候補の筆頭だ。
もう、おわかりですね。アリシアは、ザラカイアルートでのプレーヤーのライバルなのだ!ドドン!
ただし、彼女と友情エンドを迎えることもできる。私は誰を攻略するかに関係なく、いつも彼女とは仲良くなってエンディングを迎えていた。というか、前世で攻略対象達を誰も攻略せず、女王として戴冠したときも彼女の友情ルートは攻略してた。そうすると、彼女は隣国にやってきて治世を支えてくれるのだ。
そう、もうおかわりですね(再び)。私は、この世界に生まれかわったからには、絶対にリアルアリシアと友達になると決めていた。幸いこのお披露目に参加してくれているのだ。当分は基本的には辺境で育つ身だ。まずは、ここで知り合っておかねば。意気込んでいると、
「お嬢様、おしとやかに、ですよ」
クラリッサにあくまで静かな、しかし逆らうことを許さない響きをもった声でささやかれた。
「・・・はい」
ターゲットは、公爵家のご令嬢だ。確かに勢い込んでいったらドン引かれるだろう。
私は、心して、アリシア・ウィルモットのもとを目指した。




