表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/116

第五十七話「死活」

 


【ニーナ視点】


「さっさと本当のことを話しなさい!」

「だ、だから何度も言ってるけど暗殺なんか頼まれてないのニャ! 確かに申し訳ないとは思いつつ、ギルドからアルギーレんとこに連絡したニャ。でも未払いの給金をもらいに行くって連絡で、イオンの暗殺だなんて、そんな話しなんかしてないのニャ!」

「じゃあ、なんでイオンに剣を抜いたのよ!」

「あ、あれは抜いてないのニャ! お、おっことしたのニャ!!」


 さっきからずっとこの調子で全く話が進まない。

 まさに堂々巡り。


 私は冒険者時代にジジのパーティに助っ人として加わった事がある。

 そうした過去もあって、私はジジの尋問を志願したのだ。

 この中で一番ジジを知っている人間として。


 私の中でのジジは、開けっ広げの性格で、とてもフレンドリーな印象だった。

 ただ当時、ジジには暗殺の依頼を受けているなどのキナ臭い噂があった。

 しかし、私の知るジジはそんな血生臭い噂からほど遠い印象だったので、当時は単にジジの力を妬んだ者が腹いせに吹聴しているのだと思っていた。

 そんな妬みを抱かせるくらい、剣の聖地で育ったジジの剣技が優れていたからだ。


 それにしてもジジの考えが読めない。

 アルギーレ家については、自分から出発前に連絡したことを認めたり、イオンに斬りかかったかは不明にせよ、剣は抜いたはずなのにそれを認めなかったり、何がなんだかわからない。


 ただ、ジジが何かを隠しているのは明白だ。


 ジジに胡乱うろんな噂があったことは、まだみんなには話していない。

 きっと話していればこんな尋問をすることなく、ジジの牢獄行きは決まりだろう。

 イオンが『運命人さだめびと』なのを考えれば、王都へ到着するや拷問の末に処刑される恐れすらある。


 ジジに借りがある訳ではないけど、やはり信じたい気持ちがある。

 それにもしジジが黒だったとしても、その理由が知りたい。

 いっときでもパーティを組んだ仲間だし、なにより私の知るジジは、そんなことをする人間とは思えない。


 ただ人は様々な顔を持っている。


 …………。


「ーー今日のところはこのくらいにしておくわ……」

「良かったのニャ! ちょうどお腹空いてきたのニャ! 今日のメニューはなんなのニャ?」

「……………」

「ちょ、ニーナ待ってニャ! この縄はこのままなのニャ?! もしかしてここから出られないのニャ?! お腹空き過ぎて死んじゃうのニャ!!」


 正直ジジの闇の顔は見たくない。

 とにかく、アルギーレ家へのコンタクトがあったことだけは報告しないと……。



<<<



「イオン、ジジは自業自得だよ? もうルークたちに任せて、放っておけばいいんだよ…」

「でもねぇ……」


 私はニーナさんにこの部屋へ連れてこられてからと言うもの、ずっともやもやした気持ちでいる。

 ニーナさんもあとで説明すると言っただけで、さっきはなんにも教えてくれなかった。

 とにかくみんなピリピリした感じだったから、ジーニャさん関連で何かがあったんだと思う。


 あの時のルークさんの剣幕も凄かった。

 いつもの優しげで飄々とした目が、さっきは肌が焼けるような鋭さがあった。

 駆けつけてきた時なんか鬼気迫るものを感じたよ。


 一体なにがあったのだろう。


「それよりレムの体って頑丈だよね? もしかして本物のアダマーレムより硬いんじゃない?」

「ん? なに?」

「だからレムの体って頑丈だねって話! もう、ボクの話もちゃんと聞いてよねっ!」

「ごめんなさい…」


 確かに銀一に聞いてもらってばかりいたかも…。

 会話は一方通行じゃダメよね、うん。

 でもジーニャさん問題は何も解決してないんだよ? 切り替え早すぎない?

 まあ、ここであれこれ話しても進展しないっちゃしないんだけどね。


「そもそもレムを作ったのは魔力を消費するためだったから、無駄に魔力使ってすっごく硬くしたのよね」

「魔力を消費するため?」

「うん、なんかスッキリしたくて……」


 改めて考えると、しょうもない理由でレムを作ってしまったよな……。

 なんかレムに悪い気がしてきたよ。


「スッキリって………」


 そんなジト目で見ないでよ銀一……。

 そうよ、なんの考えもなしにレムを作ったわよ。

 今反省してたとこじゃないのよ……。


「でも良かったね、レム? そのおかげでお前は強く作ってもらえたんだからね?」

「レム、ヨカ、ッタ、イオ、イオ、イオ…イオ………」

「レム?」

「イオン、なんかレムが変だよ?」


 銀一が言うのももっともで、レムの様子が明らかにおかしい。

 レムはよく目をピコピコ点滅させるけど、今のピコピコはコミュニケーションのソレではなく、いかにも弱っている感じ。

 なにより動きも緩慢になっている。


「これってもしかして魔力切れじゃない?」

「魔力切れ?」

「うん、さっきのボクみたいに魔力切れ起こしたんじゃないかな?」


 レムも銀一みたいに地上から離れると魔力が低下するってこと?

 まあ、生き物である銀一と違って、そもそもレムは私が魔法で作ったんだし、生命活動の原動力は魔力だけなのかも。

 それを考えたら、レムの魔力切れは生死に関わることなのかしら……。


 魔力切れ起こしたらレムは死んじゃったりするの………?


 大変じゃない!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ