謁見の間
ーー謁見の間、大扉の前にてーー
「・・・すいません。
陛下にお目通り願いたいのですが・・・」
琉斗を連れた梨華は、
剣を提げて謁見の間の大扉の前に立ち、
守護する近衛兵の一人に声をかける。
「・・・どうかされましたか?
梨華殿、琉斗殿下。」
近衛兵は、訝しむような様子で尋ねる。
「・・・琉斗の事でご報告したい事がありまして。」
「・・・それは、今でなくてはならない事ですか?
本来、謁見の許可を得ていない者は
通せない決まりなのです。」
訝しげな表情のまま、というより
むしろもっと訝しげになった表情で言う近衛兵に、
「ええ、多分。
『こういう事は出来るだけ
早く伝えた方がよい』のだそうですから。」
王妃様に言われた言葉をそのまま伝えてみる。
「・・・しかし・・・・・・」
それでも近衛兵は渋り、
膠着状態になろうとしていたその時!
「・・・外が騒がしいな。
何かあったのか見てまいれ。」
と、指示する王様の声が中から聞こえてきて
「はっ!」
兵士がそう返事をして、大扉を開ける。
謁見の間から出てきたのは、
近衛兵達と似た格好をしているが
大扉の前にいる一般の近衛兵より
服装や態度、雰囲気までもが
上である事が簡単に分かった。
「どうした!何を騒いでいる!
国王陛下の御前だぞ!」
そう言って咎めるその兵士に、
「し、しかし、隊長!
この者達は、謁見の許可を得ていません!
ですから通す訳には・・・!」
近衛兵は、自らの上司と見える
その兵士の事を、近衛兵士隊の隊長と呼び反論する。
「この者達とはなんだ!
ここにおわすお方をどなたと心得る!
第一王子の琉斗殿下と、その後見人であり、
叔母である梨華・カルヴァート公爵にあらせられる!
お前ごときがこの方達を、
そのように呼んで良いとでも思っているのかっ!」
それに隊長は怒りわあらわにして怒鳴りつける。
「・・・しかしっ!この者達はっ!
忌み子である双子と!その子供です!
それに!前カルヴァート公爵は
反逆罪で捕らえられている身です!
その様な者の子と孫を!どうして敬えましょうか!」
「お前っ!」
隊長は叫び、二人共剣の柄に手を起き、
一触即発の事態に陥りそうになったその時!
「止めい!・・・双方とも!剣から手を放せっ!」
王様がそう命令すると、
「はっ!失礼いたしました!」
隊長は、そう言って従うが、警戒を止める事は無く、
「・・・・・・」
近衛兵も、不満そうな顔で剣から手を放すが
手は、剣の近くに置いて
いつでも抜けるようになっている。
「五年前にも言った事だが、
双子など忌み子と呼ばれている者達を差別する事は
法律で禁じられている。
そして、確かに前カルヴァート公爵は
謀反を企て、反逆罪で捕えられた。
しかし、それはあの者自身の罪であり、
子や孫など親族に罪は無い。
それに、そもそも梨華が知らせてくれなければ
今もあの者が謀反を企ているなど分からなかっただろう。」
「・・・・・・しかしっ!」
説明する国王になおも反論しようとする近衛兵に、
「それに、親族であるという理由で
琉斗や梨華に罪があるというのなら、
琉斗の父親であり、梨華のいとこである
私も同罪ということになろう。」
さらに言葉を続け、
声を荒らげる事も無く淡々と理屈を述べる。
「・・・それはっ!」
違う!と、否定しようとした近衛兵に、
「・・・お前は、私を罪人だと言うのか?」
それは、この国の統治者であり、
最高権力者である国王を
罪人・・・犯罪者であると言い、侮辱するのか?
と、言っており、それこそ近衛兵自身が
反逆罪で捕らえられる事もあるぞ。
と、言外に言っているようなものだった。
「・・・そ、そんな事は決してありません!
その様な意味で言った訳ではなく・・・
どうかお許しを・・・」
焦り、慌てて必死に弁解する近衛兵に、
「・・・処分はおって下されよう。
だが、命を奪うことはせぬ。
それに、お前の家族や、親類には罰を与えぬ。
その者達には罪は無い故な。」
冷徹な声でそう告げる。
その沙汰には、この上梨華や琉斗を
反逆者の親族であるという理由から
同罪とし、蔑み、敬わないようであれば、
その者の家族や、親族をも
国王を侮辱した反逆罪として同罪とする。
と、そういう意味が込められていた。
この件は、すぐに王宮中に知れ渡り、
今後、表で梨華や琉斗を罵る者はいなくなるだろう。
国王がそのような発言をするというのは一大事だ。
元々、この国でも、他の国でも、
国王や皇帝など、国を統治する人間や、その血縁者。
つまり、国王や、王室の人間に逆らったり
侮辱したりすれば、一族郎党皆殺し
となってもおかしくないのである。
実際に、歴史上そうなった例もたくさんあるのである。
奇跡的に運がいいと、爵位と領地と財産を奪われ
身ぐるみ剥がれて放り出されるくらいで済むが、
大体は、三代滅族(三代まで滅ぼされる事)
になるのである。
王様はその反逆罪を、反逆を犯した本人以外は罰しない。
と、そう言っているのだからそりゃあ驚きだ。
きっと、三十分もしないうちに
王宮中を駆け巡り、そしてそのうち
王宮の外にまで広がって王都中、
国中にまで知れわたるのだろう。
「・・・っ!王様!どうかお許し下さい!」
顔面蒼白の近衛兵は、床に膝をつき許しを乞う。
「・・・連れてゆけ。」
王様は、他の近衛兵にそう命じ、
その近衛兵を連れて行かせる。
そして、梨華と琉斗の方へと向き直り、
「すまなかったな。不快な思いをさせてしまった。」
呆然と立ち尽くして見ていた梨華にそう声をかける。
「・・・・・・ああ・・・いえ。
大丈夫です。お気づかいありがとうございます。」
梨華は、なんとか気を取り戻すとそう言う。
「うむ。琉斗は大丈夫か?」
王様は、頷くと琉斗に目線を合わせて言う。
「はい!父上!」
琉斗は、久しぶりに父に話しかけられて嬉しそうに答える。
「そうか。それならよい。」
王様は、そう言って琉斗の頭を軽く撫でる。
琉斗は、とても嬉しそうにしていて笑顔だ。
王様は、その様子をしばらく眺めて
「・・・して、どうしたのだ?
何かあったのか?」
それから、梨華に向き直り、そう問いかける。
「・・・ああ、そうでした!
実は琉斗が魔法を使えるようになりまして。
それで、ご報告をと思いまして。」
「ほう!なんと!魔法を・・・!
本当か!琉斗!」
梨華の言葉に驚き目を見開いた王様は、
そう言って琉斗の肩をつかむ。
「はい!」
琉斗はそれに、元気よく頷き返事をして答える。
「おぉ!凄いではないか!
なんと!もう使えるようになったのか!」
「ええ。私もびっくりしちゃいました。」
「ああ。本当に素晴らしい事だ。
やはり、エルフの血を継いでいるだけある、か。
それとも、お前の甥だからか?」
「さあ?やっぱり魔力量から言うと
クォーターエルフだからなんじゃないですかねぇ?
まあ、魔力が多くても魔法が使えない人はいますからね〜」
「うむ。そうじゃな。
琉花・・・お前の姉もそうであった。」
「あれ?そうなんですか?
お母さんがそうだとは知っていましたが、
それは初耳です。」
「そうか、知らなんだか。
そうじゃ、琉花は魔力量は多かったが
魔法は一つも使えんかった。
だから、琉斗も使えんのでは
ないかと思っておったんだが。」
「へ〜!そうだったんですか。」
「ああ。魔法は素質がなければ扱えんからな。
だから凄い事なんじゃぞ、琉斗。」
「・・・っ!はいっ!父上!」
琉斗は、実に嬉しそうに顔をほころばせる。
「よしよし。・・・二人とも、中へ入るがよい。
中でゆっくり話を聞かせてくれ。」
王様は、そう言って琉斗の頭を
ポンポンと軽く撫でると、姿勢を直して言う。
「はい!」
「よかったわね。じゃあ、行こうか!」
「うん!」
琉斗が頷くと、二人は自然と手を繋いで
王様が歩き出すのを待ってから後を追う。
琉斗は、とてもとても嬉しそうにして・・・
今回で五十話ですねぇ。
正直こんなに続くと思いませんでした。
まー、あと十話くらいは続くんじゃないですかねぇ?
なんやかんやでもうちょっと続くかもだけど(笑)
まぁ、とりあえずこれからもよろしくお願いします。
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