もう一つの理由
先週は、投稿できなくてすいませんでした!
琉斗には、私が琉斗と一緒に寝るのを避けていた理由を
寝相が悪くて潰しそうになったから。って、説明した。
けれど、それだけだったら、
きっと琉斗が少し大きくなってからは、
一緒に寝ていたことだろう。
それをしなかったのには、もう一つ理由がある。
それは、琉斗を巻き込みたくなかったから。
琉斗を狙う者は、たくさんいる。
それこそ、ごまんと。
けど、それと同時に私を狙う奴も同じくらいいる。
前カルヴァート公爵派は、琉斗を認め、推しているが、
前カルヴァート公爵を陥れた私のことは、
認めていないし、むしろ敵意を抱いている。
王妃・第二王子派は、第二王子である翔斗を
次期国王にしようとしているため、
第一王子である琉斗と、その叔母で、
後見人である私を排除しようとしている。
それに、他の王族や貴族達も、
庶子であり、忌み子である双子であり、
母親は、娼婦、父親は謀反を起こそうとした反逆者。
そんな、私や、その甥の琉斗の事を、
内心よくは思っていない。
この間報告をしたから、私がハーフエルフで
琉斗がクォーターエルフだという事は、
知っている人は知っている。
隠しておいて後から難癖をつけられるのも面倒だし、
エルフの血を継いでいるという事で
何らかの影響があるのであれば、
陛下とも相談しなくてはならないと思ったからで、
それは、今も変わらないのだが、
そのせいで、希少種であるエルフの血を受け継ぐ
それも、クォーターよりも濃い
ハーフエルフで、実際に魔法の腕を認められている
私が狙われる事となった。
それに、ハーフエルフという事がなくても、
元々子供の頃から魔力量が多く、
魔法の才能があるという事で狙われていたのだ。
魔力のおかげで広がった人脈もあるが
その分厄介事も増えた。
私は、あわせると何年も他国にいた。
それこそ、色んな国を周って、色んな恨みをかっている。
もちろん、逆恨みがほとんどだが
そう言った理由で襲ってくる者も多いのだ。
それから、最後は、おじさん絡みだ。
世界で一番の魔術師であり、
異世界からの転生者であり、
この世界を根本的に改革した大賢者。
その、存在を気に食わない者や、
悪行を働いていておじさんに倒された者など、
そう言った者達が、おじさんの養子である
私を誘拐して、脅したり、
殺したり傷つけておじさんを苦しめようとする輩。
救いの象徴である大賢者を独り占めしている事に
嫉妬と、憎悪を抱き、私がいなくなれば、
大賢者の養子になれるかもと思う孤児や、貧民達。
それらに、狙われる事が一番多かったと思う。
要するに何が言いたかったのかというと
琉斗と私が一緒に寝ると、
一番無防備になる夜中に襲ってくる
刺客が二倍になるという事なのだ。
その分、本来味あわなくてもいい恐怖を
琉斗は、味わうことになってしまう。
私は、慣れているから
今さら二倍になっても三倍になってもいいんだけど、
琉斗は、違う。
幼い琉斗にはきっと耐えられないだろう。
こんなにも寂しがりやで、甘えん坊で、
今、自分が置かれている状況をよく分かっていて、
それ故に、恐怖を感じる。
狙われているという事実に、怯える。
今でさえ、こうなんだから、
きっと、刺客が二倍三倍と増えてしまったら
耐えられないだろうと思った。
けど、琉斗には刺客に狙われている状況で
一人で寝ることの方がよっぽど不安で心細かったのだ。
その事に気づいてあげられなかったことに
罪悪感と後悔をする一方で、
それでも、知れて良かったと思う。
・・・そして、もう少しで五歳になる
琉斗の意思をこれからも聞いて尊重していく。
そのためには、いざという時に使える物や人を
最大限味方につけておかなければ・・・
そんな事を考えながら、
梨華が、王宮内の自室で、
大きなテーブルの上から
はみ出す程の大きな羊皮紙に
いざという時に使える者の一つである
これまた、大きな魔法陣を書いていると、
バタバタと、足音が聞こえてきて、
ノックもせずに応接間に繋がる扉を開けて入ってくる。
余談だが、梨華がいるのは寝室で、
そこは、応接間を通らないと来れないので、
すぐには、梨華の元には来ず、
応接間の扉を開けて、一度応接間に入り、
そこから、寝室へと行く形になる。
ノックもなしに梨華の部屋に入れる
唯一の人物である琉斗は、
「お姉ちゃん!ねえねえ!」
寝室に入って来て
そう興奮して叫びながら梨華に抱きつく。
「わっ!」
受け止め損ねて座っていた椅子を倒し、
琉斗ごと、毛足の長いふかふかのカーペットに倒れこむ。
「あちゃちゃ〜!だいじょうぶ〜?」
梨華は、そう言って自身の上半身に乗っかって、
そのあまり無い胸に顔をうずめた形になっている
「う〜ん・・・だ〜いじょうぶ〜!」
琉斗が、そう言って身を起こすと、
胸の部分は軽くなったが今度は琉斗の全体重が
梨華の腹にかかって、ついでに言うと・・・
「そ、そこ、みぞおち!
ちょ!ぐ、ぐぐ・・・いたた」
梨華は、悲鳴を上げる。
「わ、わ!ごめん!お姉ちゃん!」
琉斗が慌てて謝ると、
すぐに梨華の上からどいてお腹をさする。
「もう大丈夫だよ。
ちょっと痛かったけどね。」
梨華は、起き上がって、そう朗らかに笑って言うと、
琉斗の頭を優しくなでる。
「お姉ちゃん、ごめんなさい。」
そう言って、シュンとした琉斗に、
「はい。ちゃんと謝れてえらいね。
そしたら、痛いの痛いのして欲しいな。」
梨華は、そう褒めた後に
琉斗の気が済むようにとお願いする。
「・・・うん!
僕が痛いの痛いのしてあげるね!
痛いの痛いの飛んでけ〜!
痛いの痛いの飛んでけ〜!」
すると、琉斗は大きく頷き、
梨華のお腹を撫でては、
何もないところにその手をやって、
痛みをどこかへ飛ばすようにする。
「・・・どう?もう、痛くなくなった?」
そして、何度か繰り返した後に
伺うように見上げて首を傾げて尋ねる。
「うん!もう全っ然痛くないよ!
琉斗がお空に飛ばしてくれたおかげだね!」
そんな琉斗を微笑ましくみると同時にそう言うと、
笑顔で頭を今度は少ししっかりと撫でる。
「えへへ・・・よかった!」
照れ笑いをして言う琉斗に、
梨華は微笑んでしばらくそのまま頭を撫で続け、
思い出した様に顔を上げる。
「・・・そういえば、さっきはどうしたの?
あんなに興奮して、何かあったの?」
少し心配そうに問いかける梨華に
「あっ!そうだ!
それがね!あのね・・・!」
琉斗は、ガバッと顔を上げて
キラキラと輝くような瞳を向けて言う。
「うん。」
そんな琉斗の様子に、心配そうな表情は消え、
純粋に好奇心が浮かんだ表情で頷く。
「・・・僕、魔法を使えるようになったんだ!」
そして、琉斗は堂々と自慢する様な表情で言う。
そうやって報告した琉斗に、
梨華は、驚いて数秒固まり、
「・・・えっ!本当に!?
やだ!すごいじゃない!
もう使えるようになったの!?」
驚愕と、歓喜の声を上げる。
「うん!先生にもね!褒められたんだよ!
『魔法をこれほど早く使えるようになるとは、
将来有望な魔術師になれるでしょうね。』って!
『これなら、基本魔法を全て使いこなすのも
すぐの事でしょう。』って!」
「そっかぁ〜!もう魔法使えるんだね〜!
まだ五歳にもなってないのにすごいね〜!
その言葉に、梨華は感慨深そうに感動した様につぶやく。
「ねえ、知ってる?
陛下は七歳で初めて魔法が使えるようになって、
八歳で基本魔法を全て使えるようになったんだって!」
「えっ!?そうなんだ!」
「うん!
それで、王族の平均は十歳くらいで
魔法が使える様になるの。
だからすっごいことなのよ!」
驚く琉斗にすごいね!と梨華は、褒めそやす。
「ほんとにっ!?」
「うん。ほんとよ!」
目をまんまるにして驚く琉斗に梨華は頷き、
「・・・ねえ!何の魔法を使える様になったの?
やっばり火魔法かな?
ねえねえ!お願い!見せてくれない?」
今度は梨華の方が目を輝かせて聞く。
「うん!いいよ!
あのね!僕が使える様になったのは
お姉ちゃんの言う通り火魔法だよ!」
「ああ!やっぱり!
大体一番最初に教えるのは火魔法だから
そうだと思ったのよ!
じゃあ、ここだと危ないから庭に出ようか!」
「うん!行こう行こう!」
琉斗は、梨華の手を握って待ちきれないとばかりに
引っ張って早く早くと急かす。
「分かったよ!行こう!」
梨華は、その様子にさらに笑顔を深めながら
その手を握り返し、一緒に庭へと向かう。
二人共笑顔で楽しそうに・・・




