オカルト部の方針
ヤッキーはふと言い放つ。
「オカルト部って何やるの?」
それにジジェイが答えた。
「1年の頃、引退した先輩に聞いたんだけど、意外と色々やってたらしいわ。調理室借りて薬草混ぜて、マットに寝かせて、マントラ聴かせたり」
「そいつはどうなったんだ?」
「リラックスして眠っちゃってたらしいんだけどね。」
「そ、そうなのか?」
「まぁそんな過去のことなんかどうでもいいのよ。足子がいるわけだし。この子の謎を解けさえすれば、オカルト部としてはインターハイ優勝よ!」
「うーむ。それはかなり面白そうだな。足子はどうなんだ?」
「あまり人が関わりすぎると混沌度合いを深める可能性は高いから、やめておきたいけど・・・」
ヤッキーの問いかけに足子はためらいを見せたが、ジジェイはたたみかける。
「そんな事言ってちゃあなただって満足しないし、私たちオカルト部も単なる烏合の衆になるでしょうが!」
彼女の強い言葉に足子も心を動かされたのか一つの提案をする。
「じゃあなんで足子って入部届に書いたか教えてあげる。」
ヤッキーとジジェイはその冷たく、核心を突いたひと言に神妙に耳を傾ける。足子は語る。
「私にも分からない。」
2人はがっくりとして、顔をしかめた。ヤッキーは彼女の言葉に呆れながら言い返した。
「お前も分かってないんじゃないか」
「ただ一つ言えることはある。この世の混沌具合は少しずつ大きくなってきている。それは仕方のないことなのかもしれない。ただそれだけ。」
その一言にジジェイは我慢ならず、足子をせっついた。
「仕方ないんだったら、やっぱりその方向で行くしかないでしょ!部長は私よ、決まりね!」
足子は一瞬躊躇したがコクリと頷いた。ヤッキーも話がまとまったということで、ほっと一息入れた。そして、頭の中でずっと張り付いていた疑問を、ジジェイにぶつけた。
「あのさ、明日から上履きは履くのか?」
「当たり前でしょうが!」
彼女は恥ずかしさかき消すように言い放ったので、彼は安心してもう一つ質問した。
「毎日足子の前で祈るのか?」
「それも当たり前ね」
「そんなことして恥ずかしくないのかよ」
「祈りに恥ずかしいも何もないのよ!私はオロチ様のご加護をいただいたのだから、そのお礼をするのは当たり前なの」
「だったら放課後集まってからでいいんじゃないか?」
「それもそうね」
彼は、自分の中のわだかまりが消えて気分がよくなったが、猫殺しの好奇心が彼を襲い、余計なことだと知りながら、思い切って彼女に言ってみた。
「・・・そのマントの中、どうなってんだ?」
彼女は一瞬顔をしかめた軽蔑の目を彼に向けた。それに苦笑いで答えたが、ふと室内に風が吹いていることに気づいた。カーテンをなびかせ、ゆらゆらと照らす。辺りの置物もカタカタと揺れ始めた。ジジェイとヤッキーは不安げに辺りを見回すと、不意に足子が立ち上がっておもむろに歩き出し、ジジェイのマントを掴んだ。ヤッキーは呆気にとられたが、彼女のことだからまた何か不思議なことをしでかしたに違いないと思い、傍観した。一方、ジジェイは驚いて彼女に顔を向けたが、吸い込まれるような圧倒さを感じて身動きが取れなかった。
「え、な、なに?」
「ルクス・サンクチュアリ」
そう、呪文を放つと、一気にマントを剥がした。ヤッキーは一瞬ばかり興奮し、対照的にジジェイは顔を真っ赤にして反射的にきゃあ!と小さく悲鳴を上げた。その時一緒にターバンのように頭に巻いたタオルもはがれ落ちた。マントはふわっと広がりマットに落ちていくにつれて、ジジェイの姿を露わにしていった。そこには、制服を着た彼女の姿があった。裸足であぐらをかき、片手は両胸を、もう片手はスカートの裾を両足の間にぎゅっと押さえつけていた。それに、全身が乾いていて、朝に見た長髪で目が隠れたいつもの彼女の姿がそこにあった。気づいたら、部屋の風もおさまっていた。ジジェイは顔を赤らめつつも困惑の表情を浮かべた。
「あ、あれ?」
「ヤッキー、気が済んだ?」
「あ、あぁ、まぁな」
ジジェイは取り直したのち、ムッとした表情を浮かべて足子をギロっと見つめた。
「なかなか大胆なことするじゃない。そういえばあなた、その首に巻いてる包帯なんなの?中二病?私の身ぐるみ剥がしたんだから、それ取りなさいよ!」
「いいよ」
ヤッキーは今まで気にも留めなかったが改めてそのことに気づいた。足子は結び目を解きぐるぐると巻き取ると、包帯の内側に血がついて、彼女の一筋の傷が首を一周していた。ジジェイは目を見開いた。ヤッキーはその傷に得体のしれない怖さを覚え、居てもたってもいられず問いかけた。
「そ、それなんなんだ?」
「人は見てはいけないものがある。それを分かってくれるかな?それでも知りたい?」
「あ、ああ、済まなかったな。これ以上は追及しないよ」
足子は再び包帯を巻き直し、場を取り直した。一瞬の沈黙のあと、ジジェイが口火を切った。
「さぁもう今日は部活終わりにしましょう?明日から楽しい活動すればいいんだから。あとさぁ、ジジェイの意味くらいは知りたいでしょ?」
「まぁそうだな。」
三人はいったん部室をあとにし、思い思いに家路についた。




