表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
4章 入学試験編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/751

第4章ー9

 「なるほど。その歳で、あそこまでの勇敢さを秘めている理由がようやく分かったよ。随分と大変な人生を歩んできたんだね」


 それからしばらくの間、近くの酒場でリーフさんと向かい合い、酒とつまみを囲みながら様々な話をしていた。


 さっきまで村中を巻き込んでいた大騒動も、リーフさんが賊を制圧したことで徐々に沈静化していった。逃げ惑っていた村人たちは落ち着きを取り戻し、営業を止めていた店も次第に再開し始めている。酒場の店主も「恩人へのせめてもの礼だ」と言って、酒とつまみを無料で提供してくれた。ついでに自分の分のジュースまでご馳走してくれたのは、正直ありがたい反面、少しだけ申し訳なさもあった。


 だが、店主は「気にするな」と豪快に笑い、断る隙すら与えてくれなかった。こういう人情の厚さが、この村の良いところだ。


 なお、例の賊たちは騎士団が到着するまで馬小屋に拘束されている。昔、自分に馬を貸してくれたあのおじさんが、今度は馬小屋を提供してくれたらしい。本当に頭が下がるほどの善人である。


 そんなこんなで、酒を交えながら互いの身の上話をする流れになった。


 驚いたことに、リーフさんはソワレル魔法学園の教員を務めているらしい。各地の村を巡り、優秀な人材を見つけては声を掛け、時にはスカウト枠で学園へ迎え入れることもあるという。


 ――つまり、教師でありながら、才能発掘の役割も担っているわけだ。


 (授業はどうしてるんだろう? 担任とか科目担当じゃないのか? ……スカウト専門の教員?)


 疑問は浮かんだが、今は黙っておくことにした。


 「とはいえ、ああいう連中に勇気を出して立ち向かうのは簡単なことじゃない。君は本当に、勇者に憧れているんだね」


 「はい。俺……勇者みたいに、強くて、優しくて、威厳のある人になりたいんです」


 リーフさんとの会話は、不思議と居心地が良かった。

 普段は胸の奥にしまい込んでいる想いまで、自然と口にしてしまう。それほど、この人には安心感があった。


 十年前。

 自分は勇者に憧れ、強くなるために必死で特訓を続けていた。だが、ある日を境に――勇者は忽然と姿を消した。


 理由は分からない。

 一時期、新聞には『勇者死亡説』などという見出しまで踊り、世間を騒がせたこともあった。それほど、勇者の失踪は世界にとって衝撃的な出来事だったのだ。


 最初は信じられなかった。

 どこかで今も魔物と戦っているのだろう――そう信じて疑わなかった。


 しかし、あの日から今日まで、勇者の目撃情報は一切ない。

 やがて村の人々も話題にしなくなり、勇者という存在は「昔話」になりつつあった。


 今となっては、正直なところ――死亡説を完全には否定できない。

 あれほどの人物が、何の痕跡も残さず戦い続けているとは考えにくい。自分も中身はいい歳した大人だ。それくらいの現実的な推測はできる。


 それでも。


 勇者に憧れたあの日の気持ちは、今も消えていない。

 あの人のようになりたいという願いは、ずっと胸の奥に残り続けている。


 たとえ勇者がこの世にいなくなっていたとしても――

 次は自分が、その意思を受け継ぐ。


 (……まあ、本人が聞いたら「勝手に背負うな」って笑いそうだけどな)


 そんなことを考えていると、リーフさんが静かに顎に手を当て、何かを思案するような顔をした。


 「ふむ。それなら……」


 「はい?」


 自分の言葉を茶化すでもなく、真剣に考え込むその姿勢に、思わず背筋が伸びる。


 そして、リーフさんは穏やかに微笑んだ。


 「魔法学園の入学試験――受けてみないかい?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ