表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
3章 逆襲編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/753

第3章ーおまけ

 「『はあ……はあ……はあ……』」


 勇者の魔法の嵐から辛うじて逃れ、気が付けば私は十キロ以上離れた山の麓まで退避していた。全身にまとわりつく焦げ臭さと痛みが、あの一撃の凄まじさを否応なく思い出させる。


 ――十死怪にまで登り詰めたこの私が、人間風情に敗走するとは。


 屈辱。

 それ以外の言葉が見つからない。


 「『……その上、成果はこれだけか』」


 乱れた呼吸を整えながら、影魔法を解く。

 地面の影が蠢き、その中から一つの影が形を成す。


 「『おい。いい加減起きろ、ダークボルト』」


 「っ……はぁ、はあ……」


 影の中から現れたのは、黒い鎧を纏った長身のコボルト。

 私と同じく十死怪に名を連ねる魔将――ダークボルト。


 勇者の一撃を真正面から受けながらも、こいつはまだ生きていた。肩から下腹部まで一直線に裂けた傷は深いが、十死怪級の生命力なら時間をかければ回復できる範囲だ。


 だから拾った。

 ただそれだけの理由だ。


 こいつに恩を売ったところで、私に得はない。

 だが、これ以上魔王軍の戦力を失えば、軍全体の損耗は取り返しがつかなくなる。そして、その責任は確実に私へ降りかかる。


 ――私の地位を守るためだ。


 本当に、不本意極まりない。


 「だぁぁっ……てめぇ、なんで俺を助けやがった……? 助けねぇって言ってたはずだろ……!」


 瀕死の状態でも、真っ先に飛び出すのは感謝ではなく怒声。

 相変わらず、救いようのない戦闘狂だ。


 「『勘違いするな。今回の失態は私の指揮の問題だ。自分の問題は自分で処理する。それだけの話だ』」


 「はっ……! 結局、自分の保身が第一ってわけか。さすが雑魚らしい発想だなぁ……」


 「『……好きに言え』」


 いちいち腹を立てる気にもならない。

 こいつが皮肉しか吐けない生き物であることなど、今に始まった話ではない。


 「『私は一時撤退する。言っておくが、貴様の面倒を見るのはここまでだ。その辺の魔物に喰い殺されようが、偶然人間に見つかって捕まろうが、私の知ったことではない』」


 「へっ……雑魚に介抱されるくらいなら、野垂れ死んだ方がマシだぜ……。帰るなら、とっとと帰りやがれぇ……」


 最後の最後まで減らず口。

 呆れるほど一貫している。


 私は影をまとい、魔王城への帰還準備を整える。


 ――それよりも問題は。


 「『……魔王様に、どう弁明するか、だな』」


 今回の作戦失敗。

 勇者の生存。

 十死怪二名の敗走。


 どれ一つ取っても、魔王軍にとっては致命的な失態だ。


 胃の奥が重くなる。


 さて――

 どんな言葉を選べば、首が繋がるだろうか。


 影が私を包み込み、山の麓に闇だけが残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ