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転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
12章 魔界大戦編~開戦~

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第12章ー32

 忙しない一日から五日後。


 学園は、通常の休日に入っていた。


 「ふう……」


 軽く息を吐きながら、自分は額に浮かんだ汗を拭った。


 休日とはいえ、自分の過ごし方は普段とほとんど変わらない。朝は日課の朝練をこなし、昼になればコールスタッシュ先生の補習授業を受けに行く。


 以前と比べて変わったことといえば、補習の内容が朝練よりも多少ハードになったくらいだろうか。


 ……いや、冷静に考えれば、これってほとんど運動部みたいな生活じゃないか?


 朝から身体を動かし、昼もひたすら訓練に励む。しかも、コールスタッシュ先生の補習は、普通の部活動より厳しい可能性すらある。


 休日くらい、もう少しゆっくり過ごしてもいい気はする。


 とはいえ、今さら訓練を休むつもりもなかった。


 強くなるためには、地道な努力を積み重ねるしかない。そう考えれば、これも必要な時間なのだろう。


 ……まあ、そんなことを考える余裕があるなら、少しでも休んでおいたほうがいいか。


 昼の補習までは、まだ多少の時間がある。


 風呂に入ることも考えたが、どうせ補習が始まれば、また汗だくになるのは目に見えている。今入ったところで、すぐに入り直す羽目になるだろう。


 それなら、少しでも仮眠を取ったほうが有意義だ。


 ここ最近、どうにも寝つきが悪い。


 身体は疲れているはずなのに、いざ眠ろうとすると、余計なことばかり考えてしまう。おかげで十分に休めた気がせず、日中になってから眠気に襲われることも増えていた。


 ……原因は、分かっている。


 ギリスケのことだ。


 あれから五日が経った。


 それなのに、こちらには何の進展も伝わってきていない。


 現在、ギリスケは家庭の事情による一時休学という扱いになっているらしい。リーフさんの裁量によって、いずれ復学できる見込みもあるとは聞かされていた。


 けれど、それはあくまで見込みの話だ。


 実際にどうなるのかは、まだ分からない。


 そもそも、ギリスケが置かれている状況を知っているのは、自分とリーフさんの二人だけだ。


 事情が事情だけに、他の生徒に知られるわけにはいかない。だからこそ、自分たちは今日まで、何事もなかったかのように振る舞ってきた。


 普段どおりに朝練をこなし、補習を受け、他の生徒たちと会話をする。


 表面上は、何も変わっていない。


 ……けど。


 心の中では、ずっとギリスケのことが引っかかっていた。


 今頃、どうしているのだろう。


 騎士団の人たちから、厳しい尋問を受けているのだろうか。


 それとも、何か別の処分が下されているのだろうか。


 考えたところで、答えが出るはずもない。


 リーフさんは大丈夫だと言っていた。あの人が根拠もなくそんなことを言うとは思えないし、自分だってそう信じたい。


 それでも、心配せずにはいられなかった。


 何せ、ギリスケが問われているのは、国家反逆罪にも等しい重大な罪なのだ。


 本人の意思ではなく、誰かに命令されてやったことだとしても、それだけで罪がなくなるわけではない。


 事情が考慮される可能性はあるだろう。


 だが、事が事だけに、軽い処分で済むとは思えなかった。


 最悪の場合、死刑だってあり得る。


 「……」


 もし、本当にそんなことになったら。


 もう二度と、あいつとくだらないことで言い争うことも、馬鹿みたいにはしゃぐこともできなくなる。


 いつも騒がしくて、遠慮なく人の懐に踏み込んできて、時にはこっちが呆れるようなことまでやらかす奴。


 それでも、一緒に過ごしてきた大切な仲間だ。


 そんなギリスケが、ある日突然いなくなる。


 しかも、二度と会えない形で。


 ……そんなの、考えたくもない。


 「……テン、……ルステン」


 「……」


 何かが聞こえた気がした。


 けれど、頭の中はギリスケのことでいっぱいで、最初はそれが自分に向けられた声だと気づかなかった。


 もしギリスケが死刑になったら、自分はどうすればいいのだろう。


 あいつがいなくなった後も、今までどおりの日常を送れるのだろうか。


 そんなことを考えてしまい、胸の奥が重くなる。


 「レールステン!」


 「ッ!? は、はい!?」


 突然、はっきりと名前を呼ばれた。


 背筋がびくりと跳ね、反射的に声を上げる。


 ……い、いったい何だ!?


 慌てて振り返ると、そこには見覚えのある人物が立っていた。

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