表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
10章 迷宮~血戦編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

626/630

第10章ー83

 「サダ……メ……?」


 あまりにも一瞬の出来事にて、拙者はその場に立ち尽くすことしか叶わなんだ。


 何が起きたのか、理解が追いつかぬ。目に映ったはずの光景すら、脳が受け入れることを拒んでおるかのようであった。


 ただ一つ、確かなこと。


 ――サダメが、吹き飛ばされた。


 それだけでござる。


 「……っ」


 遅れて、ようやく思考が動き出す。


 あの男――ブラムが赤黒き甲冑を纏いし後、何やら独り言の如く語っておった。そこまでは、拙者も把握しておる。


 問題は、その後でござる。


 奴が、僅かに足に力を込めた――そう見えた、その刹那。


 次の瞬間には、既に間合いを詰めておった。


 いや、“詰めた”などという生易しいものではない。


 消えたと見紛うほどの速度で、距離そのものを消し去ったのでござる。


 そして――


 サダメ殿の懐へと潜り込み、そのまま拳を振り抜いた。


 回避など、間に合うはずもない。


 防御を取る暇すら与えぬ一撃。


 そのままサダメ殿は、壁の彼方まで吹き飛ばされてしもうた。


 思わず、息を呑む。


 拙者の動体視力をもってしても、辛うじて“起きた結果”を認識できたに過ぎぬ。


 過程は、ほとんど見えなんだ。


 それほどまでの速度。


 それに加え、あの一撃が生み出した風圧――周囲の空気すら震わせる膂力。


 どれを取っても、先ほどまでの奴とは別次元の力にてござる。


 あの血で構成された禍々しき鎧。


 あれを纏うことで、自身を極限まで強化しておるというのか。


 もしそうであるならば――


 もはや“厄介”などという言葉で済む話ではない。


 明確に、格が違う。


 「ほお?」


 不意に、声がかかる。


 「一撃で即死させるつもりであったが、瞬時に防御を張ったか。見事だ」


 「ッ!?」


 奴はすぐ傍に立っておった。


 サダメを吹き飛ばしたその足で、何事もなかったかのように。


 その視線は、未だ壁際に倒れるサダメへと向けられている。


 「貴様も、そう思うであろう?」


 横目で、こちらを見やる。


 その瞳には、先ほどまでのような剥き出しの敵意は感じられぬ。


 だが――


 「……っ」


 身体が、動かぬ。


 まるで、見えぬ何かに縫い止められたかのように。


 言葉が出ぬ。


 呼吸すら、浅くなる。


 感じるのは、ただ一つ。


 圧。


 それも、尋常ならざる死の圧。


 まるで、蛇に睨まれた蛙の如く、拙者はただその場に縛り付けられておった。


 「だが――」


 奴は、静かに言葉を続ける。


 「奴は戦闘不能。戦えるのは、貴様のみであろう?」


 「……」


 否定は、できぬ。


 サダメは動かぬ。


 あの衝撃、そして今の状況を鑑みれば、意識を保っておるとは考え難い。


 「折角、興が乗ってきたのだ」


 ブラムは、わずかに口元を歪める。


 「私を退屈させるなよ?」


 その一言で、空気が変わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ