表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
3章 逆襲編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/753

第3章ー6

 それから三十分後。

 特に何事も起こらないまま、穏やかな時間が過ぎていた。


 「よし。そろそろ出発するぞー」


 ラエルの合図で、自分とミオは再び魔道馬ソーサ・ホースに跨る。

 他の子供たちも、まだ眠そうな顔のまま荷馬車へ乗り込んでいった。


 「んー……まだ眠いよぉ……」


 「馬車の中でも寝られるだろ。ほら、もう少しだけ頑張れ」


 「んー……」


 ラエルは優しく声をかけながら、子供たちを順に馬車へ誘導していく。

 無理に急かすでもなく、しかし迷わせない手際の良さ。

 最年長として自然に皆をまとめている姿に、思わず感心してしまった。


 ――自分だったら、ここまで上手くできるだろうか。

 多分、無理だな。

 これが“兄貴肌”というやつなのだろう。


 「全員乗ったな? よし、出発するぞー!」


 「「はーい!」」


 ラエルが御者席に座り、馬車を走らせる。

 それに合わせて、自分も魔道馬を進ませた。


     ◆


 そこからさらに三十分ほど走り続けた。


 仮眠は短かったはずなのに、思いのほか頭は冴えている。

 眠気もほとんどない。

 ――やはり、少しでも目を閉じるだけで違うものだ。


 「ねえ、サダメ」


 背後からミオの声がする。


 「ん? どうした?」


 「魔物の人たち、全然追ってこないね?」


 「……ああ、そうだな」


 ミオの言葉に、ふと後方を振り返る。

 闇の森が流れていくだけで、追手の姿は見えない。


 馬と徒歩では速度が違いすぎる。

 よほど特殊な移動魔法でも使わない限り、追いつくのは不可能なはずだ。


 ――魔法、か。


 その単語を思った瞬間、嫌でも脳裏に浮かぶ。

 白い夢。

 父の背中。

 エイシャの影。


 (……あいつは、あの時どこにいた?)


 ドレーカ村が襲われていた最中、

 エイシャは本当に「偶然」あの場に現れなかったのか?


 タイミングが良すぎる。

 まるで、最初から“別の場所で何かをしていた”かのように――。


 「……サダメ?」


 「ッ!?」


 考え込んでいた意識が、現実へ引き戻される。

 ミオが、不安そうにこちらを見上げていた。


 「大丈夫? なんか、怖い顔してたよ?」


 「あ、いや、大丈夫だ。ちょっと考え事してただけ」


 「ひょっとして、まだ眠い? 悪い夢でも見たの?」


 「……悪い夢は見たけど、もう平気だよ」


 そう答えた瞬間、

 夢の最後の光景が再び脳裏をよぎる。


 ――黒い影。

 背後から伸びる殺意。


 そのイメージに引っ張られるように、

 自分の視線が、前方の馬車へ――正確には、その“影”へと向かった。


     ◆


 ――影が、動いていた。


 月明かりに伸びる馬車の影。

 だが、その形が、微かに“波打っている”。


 風もない。

 木々も静かだ。

 なのに、影だけが生き物のように蠢いている。


 「ッ……!?」


 背筋に冷たいものが走る。


 「ラエル!! その馬車から全員――」


 叫ぼうとした、その瞬間。


 影が、跳ね上がった。


 「『【黒影ダーシャ多槍メニスピア】』」


 低く、耳障りな声。


 次の刹那――


 馬車の影から無数の黒い槍が噴き出し、

 荷馬車を、そしてそれを引く魔道馬ごと――


 ――串刺しにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ