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異世界転生したらTSして『貝使い』なる能力をもらった。でもこの身体、何か訳ありみたいで……?  作者: 四葦二鳥


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最終話 貝使いの王女と、約束の明日

「させるか」


 ディノフィスは杖を俺に向け、火、水、氷、風など様々な魔法を放った。俺は魔法を避け、避けきれない魔法はコントンクリオネが出す光の壁で防ぎつつ接近した。


「このっ!」


「くっ!」


 至近距離まで詰め寄った俺は、ナタでディノフィスを切りつけた。ディノフィスは俺の攻撃に対応し、杖で攻撃を防ぐ。


「お返しだ!」


「やってみろよ!!」


 そこからは互いに攻撃したり防いだりの繰り返し。ディノフィスは杖を叩き付けたり突いたりしてくるし、俺はナタで切りつつ拳銃による銃撃をお見舞いする。

 何度も武器を交えていく内に、俺はディノフィスの力量を感じ取った。


(意外と才能あるな、コイツ……)


 てっきり魔導具頼みの戦い方しか出来ないと思っていたが、ディノフィスは近接戦闘の才能もあるのだ。なかなかダメージを与えられない。


 おそらく、きちんと訓練を受ければまず負けることは無いほどの腕前にまで登り詰めるのだろう。

 だが、硬直した状態は長く続かなかった。


 ディノフィスは年齢的には中年。さらに飼い殺しにされており身体を鍛える機会に恵まれなかったので、長時間の戦闘は不可能。

 そして俺は貝使いの能力によって、召喚した貝から作られた道具についてベテラン並に使いこなすというバフがかかる。

 つまり、俺が有利な状況になるのは時間の問題だった。


「取った!」


「クッ!」


 俺は一瞬の隙を突いてディノフィスの杖をナタで弾き飛ばした。さらに間髪入れず、ディノフィスの腹部に銃弾を三発お見舞いする。


「ゴホッ……グハ……」


 血を吐いたディノフィスは、背中から倒れ落ちた。


「ここ……までか……」


 すでに生殺与奪権は俺の手の中にある。だが俺は、始末する前にどうしても聞いておきたいことがあった。


「ディノフィス、冥土の土産に教えてくれないか? どうしてクーデターなんかやろうと思ったんだ?」


「そっちにはイカネスがいたんだったね? ……なら、ある程度察しが付いているはずだ……。僕は前国王の身勝手な行動によって生まれた、アンタッチャブルな存在……。生まれつき飼い殺され、死人同然に過ごすことしか許されなかった……。だから、生まれた意味を……求めたんだ……」


 だが、飼い殺しにされている人間が出来る事など限られている。特に権力側から飼い殺しされているのであれば、その権力を破壊するしか無い。

 すなわち、王家へ反旗を翻す――クーデターだ。


「幸い、飼い殺しにされていたことで守りたい物なんて無かったからね……決意はあっさり固まったよ……」


「無敵の人ってやつか……」


「『無敵の人』……フフ、王女様は面白い表現をするね……」


 こうしてディノフィスはクーデターに向け準備に奔走した。元々あらゆる素養があったからか、監視の目は簡単にごまかせたし、クーデターに参加してくれる人も次々に見つかった。


「そうやって準備を進めていく内に、僕は充実感を感じたし、仲間達の思いにも色々触れたよ……。シェルドンみたいに理不尽に軍を解雇された者の怒り、マリーナみたいに自分の仕事が細っていく者の焦燥感、共感できなかったけど、バーナクルみたいな権力欲も目の当たりにした……。そうしていく内に、彼らの思いの重みを感じたんだ……」


「もしかして、『責任感』か?」


「『責任感』……確かに、今思えばそうかもね……」


 そうして準備を進め、ついにクーデターを決行。首都アクアリウムを占拠し、国の大半を支配下に置くことに成功した、と。


「でも……最後の最後で、失敗しちゃったな……。先にあの世へ行った、シェルドンやマリーナに会わせる顔が無いな……」


「そんなの、会ってみなきゃわからないだろう? お前は準備期間に充実感を感じていたんだ、意外と思い出話に花が咲くかもしれないぞ? ――さて、最後に言い残したいことはあるか?」


 ディノフィスは少し考えると、口を開いた。


「これからも、僕のように触れて欲しくない人間が生まれると思う……。でもだからといって、世の中から完全に排除してはいけない……。守る者を無くした者がどんな行動を起こすか、どんな恐ろしい結果になるのかを、この国は身に染みて理解したはずだ……!」


「しっかりと覚えたぞ。必ず後世まで伝えると約束する。では――さらばだ」


 俺はディノフィスの頭部に銃身を接触させ、引き金を引いた。

 

***

 

「――っていう事があったのさ」


 ディノフィスを倒して数ヶ月が経過した。

 当初はクーデターによって荒れた国の再建、特に戦闘によって最も荒れていたアクアリウムの復興工事でてんやわんやで、能力に関係なく動ける者は全て総動員されていた。俺やパールもガレキの撤去作業を自ら行ったくらいだからな。

 

 一ヶ月くらい前には復興作業が一段落し、王宮で様々な業務を遂行する日々が続いている。今はパールと一緒にイカネス、記録を取る役人を相手にアクアリウムに突入した後の戦闘について語っていた。公式な歴史書を作る上で重要な作業らしく、かなり詳細な戦闘の流れを要求されたので大変だった。


「大変興味深いお話でした、姫様。ところで一つ、質問を宜しいですかな?」


「ああ。いいぜ、イカネス」


「以前、私がディノフィスの印象が変わったというお話をした事を覚えていらっしゃいますか?」


「確か、元々ディノフィスはイカネスから見て若い学生と話しているような若さを感じていたが、ここ1年くらいで貫禄を感じるようになった――という話だったか。


「その時姫様は心当たりがあるとおっしゃっていましたが――ディノフィスと直に対峙して、確証は得られましたか?」


「ああ、もちろん」


 続けて、俺はイカネスに自身の考察を述べた。


「リーダーシップだ。あいつは出発点こそ自分のためにクーデターを起こしたが、準備を進める内にリーダーとして自身に賛同する人達を統括する立場になった。そうして責任感が生まれ、人として成長したんだ。イカネスがディノフィスに貫禄を感じたのは、そういう理由だ」


 このことに気づけたのは、俺に前世の経験があったからだ。自分が望まずにフリーター生活を余儀なくされた結果、リーダシップを取れるような責任ある立場に就く機会を永遠に奪われた。だから運良く就職氷河期を避けられた自分より若いヤツが、自分より年上に感じられる事が何度もあった。

 そうした経験が、ディノフィスの変化の正体に気づけたのだ。


「なるほど、合点がいきました。確かに言われてみれば、ディノフィスがクーデターの準備を開始したと思われるタイミングに近いですな」


「ところでイカネス。復興状況はどうなっている?」


「アクアリウムはほぼ復旧しました。姫様のお力添えあってこそですな。ですが、地方はまだ道半ばです」


 実は復旧作業には、俺のスキルを最大限活用していた。まずオオシンガイを何個も使って作業員に『念力』のスキルを一時取得させ、手を触れずにガレキを宙に浮かせて撤去した。


------

オオシンガイ

シンの大型種。城一つ分の範囲で実態ある幻術を生み出す。

------


 あとはケンチクガイにイエガイやトリデガイを使って街を再建した。そのおかげで、アクアリウムは貝の形をした建物が林立し海の中ではないかと錯覚してしまうような風景が広がっている。

 王宮も修復に貝使いのスキルを存分に使用しており、螺鈿細工で囲まれたような空間がいくつも出来上がっているのだ。


「地方に行くとなると管理が難しくなりますからね。オオシンガイのような強力な貝を使った物の移送も難しくなってしまいますわ」


「パール様のおっしゃるとおりです。ですので、国全体の復興は短く見積もっても年単位でかかるかと……」


 まぁそうだろうな、という感想しか出てこなかった。強力な効果を持つ物がなくなったりしたら防衛上大変だからな。


「ところでさ、俺の戴冠式はまだ先なんだろ?」


「はい。国中が大変な状況で戴冠式など行えば、方々から反感を買ってしまいますからな。豪華なパーティーが付き物ですので」


「なら、俺が何度か足を運ぶしか無いな。俺の目の届くところでオオシンガイを使うしかあるまい」


「御心遣い感謝いたします。どの地方から回るかは追って考えましょう」

 

「そうだな。どんなに時間がかかってもいいから必ず国のすべてを復興させる。俺の中にいる本当のコーリーから頼まれたしな」


 ディノフィスを倒したその日の晩、夢の中で本当のコーリーから頼まれたのだ。『必ず国を復興させてください』と。彼女との約束を果たすためなら、俺はどんな苦労や手間だっていとわない覚悟だ。


「そのお覚悟、このイカネス、いたく感激いたしました。ぜひ、この老体を思う存分使ってくだされ」


「わたくしも、微力ながらサポートいたしますわ!」


「みんな……」


 イカネスやコーリーから力強い宣言を受け、俺は胸が熱くなるのを感じた。そして俺の中にいるあいつも――。


「私もお手伝いしますよ」


「ハミット! そういえば最近あんまり姿を見せていないようだけど、どうしたんだ?」


「私はマスターの貝使いスキルのガイド役ですから。貝使いの成長に伴い、私の力添えも不要になるのです。ですが私とマスターは一心同体。マスターが生きている限り私は存在し続けますし、マスターの力になりたいのです」


「そうか……。これからも頼りにしてるぜ」


 クーデター軍を倒すことはできたが、この国でやることはまだまだある。

 大変なことも多いだろうが、きっと乗り越えられるはずだ。今の俺には、頼もしい仲間や愛する者がいるのだから。


~完~

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